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凄い風

お昼をだいぶ過ぎた、夕食の早い頃に。ハンバーグを作る為に厨房の隅を借りてみじん切りにしていた。


「おりゃ~」


掛け声を掛け、勢いに任せてトントンと音を立てて挽き肉になる様に頑張っている。


トントントントン、トントントン。おお、いいリズムだな、この位しかリズムカルに出来ないんだけど、良い感じだな。


いい音を立てて挽き肉を作っていると、アメリアさんとプロが入って来た。


「捏ねますか?」


「はい」


珍しくアメリアさんも挑戦する様で、ボールを1個お借りした。


「コネコネコネコネコネコネ」


遂に、プロも声を出すようになった。







「ここ数日間、情報収集と西に向かう旅の事を考えていました。畑のある地域を過ぎると草原の後が荒野に、ここまで来るのに数日間掛かると思います、その先は砂漠です。砂漠は長くて20日位の行程があります、砂漠にはワームが生息していて、引き返して来た馬車が何台もいるが被害が出てない。ワーム、数体を目撃したようだ。北の砂漠も危険だと思うので予定通り、西の街道を進む事にした。魔物の対応は全てアルさん達に任せます。バッファのお肉はオーク肉の3倍以上の値段で高級食材です、アルさん達に感謝します。ありがとう、では食べましょう」


ロードさんから、明日からの予定と注意点の説明が終わるとアルさん達の視線を感じた。


「どうしたんですか、温かいうちに食べましょう」


「聞いてないぞ、オーク肉の3倍以上の値段なんて」


「聞いていないが、温かいうちに食べよう」


ウイントンさんの非難をアルさんが止めてくれた。


「美味しい、いつもと違う」


ミアちゃんの感想にアメリアさんも食べ始めた。


ワームか、アルさん達は食べた事があるのか、今は聞かない方がいい。





ライムスーデンから出発して2日経つ。最初の日は畑を過ぎた草原で野営をした。


草原から荒れ地にかわると寂しい感じの風景になった。


ロードさんがカルテアからここまでの間に盗賊や山賊に遭遇していないのは運がいいのか、数が減っているのか、どうなんだろうかと言っていた。


岩がゴロゴロしているけど、砂漠前の野営はここにする事になった。


野営の準備をしていると、バジルさんが焼き肉が食べたいと言い出した。


「それはいいですけど、皆が食べるんですか?」


その皆は、僕以外の皆だった。バッファのお肉で焼き肉を食べてない5人と食べた事のある6人、焼き肉を楽しむために、釜戸を3個作った。


ロードさん一家、ベルンさんとヒューラさんと僕、アルさん達6人。


「何で俺達は6人でなんだ?」


釜戸にそれぞれ座って貰ったら、ウイントンさんが自分達が何で、一つの釜戸を囲んでいるのか聞いてきた。


「皆は慣れているし、他の人達はのんびりと食べるためです」


「そうか、分かった」


「あんたバカね、ユーリは私達が騒がしいと言っているのよ」


「なに、そうなのか?」


「だいたい合っているけど、皆は争奪戦で食べるでしょう、それだと他の人達が大変だからね」


「ウイントン、ユーリはロードさん一家がのんびりと食べれる様に考えているだけだぞ」


リーダーは流石だな、上手くまとめた。


「皆、忘れていますね、バッファは僕を含めて7人で協力して倒しました。アルさん達のグループの肉が多いのは当たり前、そして他のお肉も用意しました」


「本当ですか、他にもお肉が有るのですか?」


何もしてないマリアさんもお肉が沢山食べたいだろう。特別のお肉を用意した。


「はい、マリアさんも喜ぶお肉です」


アルさん達には定量の肉を用意した。切るのが面倒なので、薄切りにはしてあるが長いままだ。30㎝の定規の様な肉をフライパンに載せる。秘密の肉、タンも載せていく。


「違う肉はこのレモンを掛けると更に美味しくなります。2種類の肉に2種類のタレが有ります。間違えない様に食べて下さい」


僕が考えたのは、取り敢えずお肉を切るは焼いた後に切って貰う事だ。


切れてない理由が焼く時に切れてない方が沢山載るので沢山のお肉が焼ける事になる。


焼けた肉を切る事を教えてベルンさん達の所に加わる。


説明を聞いていたロードさん一家は食べ始めている。


皆はタンが何処の部分の肉か知らないので秘密にしといた。知らない方がいい事もある。






凄い風に砂が舞っている。


僕のイメージの砂漠は穏やかな風に降り注ぐ光の中をラクダでのんびり歩いている風景だ。


今の状況は目を開けているのも辛い、風が凄いので馬車の速度はどんどん遅くなり歩いた方が速い。


それでも少しずつ進んでいる。


「ロードさん、風はいつも吹いてるんですか?」


僕の横に座っているロードさんはこちら視線を向けて困った表情をしている。


「吹いているが、こんなに吹いているのを経験した事が無い」


前は見えにくいので横を見る。この速度だと1年掛けても何処にも着かない様な気がする。


前を走る馬車一号が止まったので、僕達の馬車も止まる。


僕のせいで風が吹き荒れている。魔法の練習をしていたのだ、風の魔法を、その時唱えたのが。


『台風』だ、凄い魔法を編み出してしまったのだ。永遠に風は吹くだろう、今までの練習の成果。


取り敢えず魔法が使えた事にしていたら、ベルンさんがこちらに来た。


「ロードさん、南に向かう街道がある、今まで見た事が無い」


「そうか、ユーリ、ここに居てくれ。南の街道を見て来る」


「はい」


ロードさんはベルンさんとヒューラさんを連れて街道を見に行った。


荷台には僕の吊るしている干し肉が沢山なびいている。


風があれば早く干し肉になる。そうなのだ、この突風が吹いていても、浮かれているのは僕だけなのだ。


もうすぐ干し肉が食べれると思うと、どんな難題がこれから起きようと乗り越えられる気がする。もう確定だ。


見づらいので何をしているのか分からないが、南を指さして怒鳴っている様に見える。


ロードさんが一号車の横を通ってこちらに向かって来る。


「ユーリ、南は風が吹いてない。どうしてか分からないが、風が凄すぎるこの街道から一旦外れる。後ろにも伝えて来る」


「はい」


南の街道は風が吹いて無いのか、不思議だ。






南の街道を進んでみたら僕達の前方に遺跡が在った。


「こんな近くに遺跡が在るなんて」


ロードさん達が驚いている、行商人のロードさん達だと知らない所が少ないんだろうな。


アルさん達は遺跡の周りがどうなっているのか見に行ってくれている。


「ユーリは、行かなくて良かったの?」


ベルンさんが笑いながら聞いてきた。


遺跡を見て興奮して僕は全力で走って『遺跡が僕を招いたのか』と言いながらピョンピョンと跳ねていたらしい。1回ジャンプしてだけの様な気がするが、見ていた人が言うのだからそうなのだろう。


「僕は遺跡の中にしか、興味がありません」


遺跡はそんなに大きくない、中に何があるのか分からないが、見て回るだけなら20分も要らないかもしれない。遺跡の横から奥行を見たら50m位、横は30m位だろうか、学校の校庭より狭いようだ。


アルさん達が帰って来た。


「遺跡の周りには他に建築物はありません。魔物はいませんでした、遺跡の中に居る可能性があるので、もう少し待って下さい」


アルさんとルーベルさんが歩いて行くので一緒に行く。


「なんだ、来るのか?」


「はい、そこに遺跡が在るから」


「気を付けろよ、内部の中に魔物がいる可能性がある」


「はい」


遺跡にドアとかは無いので誰でも入れる。魔物でも。


遺跡の中には光が差し込んでいた。


「分からなかったが、光が入る様になっていたんだな」


「そうだな、外からは穴が開いている様には見えなかったな」


中には何もいなかった。建物だけで中には他に行く所がない。


「みんな呼んで来る、秘密はなさそうだ」


アルさんが遺跡から出て行った。


「残念だったな、何もない様だ」


「ドラゴンが描かれています」


見上げた天井にドラゴンさんが描いてあった。


「え、何処に?」


足物は明るいけど天井には光が当たっていないので分かりずらい。


僕の視線の先をルーベルさんも見ている。


「3体のドラゴンか、色付きだな」


会えるか分からないけど、3体のドラゴンさんが描かれている。レッドちゃん、グリーン、イエロー。


何処に居るかのヒントはない。


「遺跡の天井にドラゴンを描く理由は何かな?」


「さあな、伝説のドラゴンだぞ。あの絵もいつか描かれたのかも分からない」


「そうですね」





「伝説のドラゴンさん」


肩車されたミアちゃんが天井を見上げている。


「ミアもいつか会えるかもしれないな」


遺跡の周りに魔物が居た形跡がない事と元の街道の風が凄いので今日は遺跡の中で野営する事になった。


僕は外に出て皆の夕食の用意をする。


まだ1年なのか、もう1年なのかどちらなんだろう。


「まあいいか、伝説なんだから。シュラさんに会えなければここにはいない。伝説のドラゴンさんには、もう会っている。謎は沢山ある、何故ドラゴンさんが引きこもりなのか、どう見ても誰も倒せない。友好的だから飛んでいても皆が手を振るだろう、ブラック君は人に見つからに様に頑張っていた」


ドラドラさんに質問したけど、あれは間違った聞き方だった。


ドラゴンさんが何処に居るのか聞いたが『海の向こうじゃ』と答えてくれた。


僕とドラドラさんの会話にどのドラゴンさんが海の向こうなのか・・・西とは何処が基準何だろう。


貴族の皆なら上手く話せただろうが、僕はどこか抜けている。


ライムスーデンとトムハンではドラゴンの情報集めをしていない。


「人は時には忘れる・・・・・時には」


「ユーリ、独り言はいいから、俺は腹が減った」


後ろにはウイントンさんが、久しぶりに色々とまとめていたのに。


「すぐ出来ますよ、バッファのシチューです。柔らかく美味しいのが出来ますよ」


「そうか、シチューか」


夕食が終わると、見張りの人は外に出て、馬車の近くで見張る。


寝る時に詰まらに事を考えた、天井の手の届きそうにない所はどうやって描いたのかなと。

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