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最高のシチューと侯爵様のお礼

「初めて来た時の苦労が報われているのか、調子がいいな」


やけに効率がいいお陰で、ヴエルナさんがホクホク顔だ。


「それは、ユーリの足の速さのお陰だな」


カカルさんが僕の足の速さが効率をよくしてると言ってくれる。


「そうね、荷物を3個も持って入口まで走れるあの足が・・・」


皆が僕の足の速さに感心している。皆も僕の様に頑張れば早く走れるのに。


「野営は外にするのか、それとも中か?」


マシュさんが前回と同じ洞窟の外で野営するのか、洞窟の中でするのか、ヴエルナさんに聞いている。


外だと川が近い水浴びも出来るんだよな、薪が沢山拾えるのもいいよな。


「安全を考えて外にするかな」


「そうよね、外の方が美味しい物が食べれそう」


「決まりだな。外だ、外」


美味しい物が絡んでくれば、マシュさんが外に決定するのは当たり前だ。


皆に異存が無い様なので、荷車に大樽を乗せて前に拠点にした場所に向かう。


拠点に着くと僕が考えたロープの仕掛けの設置をマシュさんとカカルさんがしてくれた。


ヴエルナさんが薪き用の枝を拾いに行って、釜戸をメグさんが作ってくれる。


水を汲みに行った帰りに、一緒に川に行ったレベッカさんに魔法の威力の事を聞いてみよう。


「レベッカさんの使う魔法の威力、上がっていませんか?」


「あら分かる?最近そう、イメージが強くなってきたというかイメージがし易くなって、そんな感じで強くなったのよ」


レベッカさんが言った事を僕は要約して聞いてみる。


「イメージが精細に出来る様になり簡単にイメージが出来るから攻撃が上がったんですか?」


「そうそう、そんな感じになってるのよ」


説明が面倒そうにレベッカさんは締めて、歩くのが速くなった。


「さあ行くわよ、速く行かないとマシュがうるさい」


そうなのだ夕飯を僕に作らせる為に皆が僕の仕事を手伝ってくれている。


今回は、以前より美味しくする為に調味料を持参してきた。


マシュさんは、僕が調味料を持って来たのを知っている?


それに前回、僕がもっと美味しくなると言っていたのも覚えていて、今回はもっと美味しくしてくれると期待している。


今までで、最高のシチューが出来るはずだ。父さんの腕と僕の昔の味の記憶が最高のレシピを完成させた。


僕は、父さんに負けない位料理が出来る。それは新しい物を作る腕ではないが、僕お得意の真似による腕前だ。


ただ残念に思う、運動みたいな才能が料理にはない事だ、もっと美味しくするには、その道のプロでないと駄目だ、父さんのような。


考え事をしながら歩いているとレベッカさんが「着いたよ」と言った。


「急いで作りますが、時間が掛かるので寛いでいて下さい」


「ありがとう、横になってるわね」


「出来たら起こします」


「ありがとう」


僕とレベッカさんの会話が聞こえた皆は、敷物の上に横になった。


僕は手早く下味を付けたオーク肉を弱火で煮る。


煮汁のアクを取り肉が柔らかくなってきたところで、食べやすい大きさに切っておいた野菜を鍋に入れる。調味料を小量入れて更に下味が付く様にとろ火にする。野菜が良い感じに煮えたので、調味料を入れて味を調える。


シチューが完成した、後は食べる前にもう一度温めなおせばいい。


シチューに付けて食べると美味しいパンを切ってお皿に載せる。


美味しくするために時間が掛かったので、急いで食べる温度までシチューを温める、一度冷ましたのは更に美味しくする為だ。


温まったシチューを皆のお皿に添えれば出来上がりだ。


「皆、夕食だよ」


夕食の言葉に一番に反応したのがマシュさん、横になっていた姿勢から勢いよく起きた。


「おお、出来たのか」


「どうぞ、お待たせしました」


期待していたマシュさんに一番にシチューの皿を渡す。


後は、起きた人順に渡していく。


「美味しい~、本当に前のよりも、比べられないほど違うぞ」


ごめんなさい。僕にはわかりません、なぜそこまで興奮するか。


「本当だ、美味しい。もうお嫁に行けるよ」


「いや、国王様に献上レベルだな」


国王様に出来た料理を献上する人がいるのかな?


「俺は幸せだ~」


残念な事にパンを付けて食べると更に美味しいのだ。


ここは反応が薄いが、マシュさんの次に美味しい物が好きなメグさんにパンを付けて食べて貰おう。


僕は小声で「パンを付けると更に美味しくなるよ」と教える。


メグさんが置いてあるパンを手に取りシチューに付けて食べる。


僕の小声が聞こえていたレベッカさんも同じ様にパンを取って付けて食べた。


マシュさん以外の皆が同じ食べ方をしている。


「美味しいな、これ最高だな」


「ユーリを誘って良かったな」


ヴエルナさんとカカルさんがパンを付けて食べるて美味しいと言っているが、マシュさんはシチューを食べるのに夢中でその会話が聞こえていないようだ、皆が違う食べ方をしてるのを気付いていない。


マシュさんにもそろそろ教えないと後が怖いかも。


「あの~、マシュさん」


邪魔しちゃ悪いけど言わないとね。


「ん、なんだ?」


「そのパンをシチューに付けて食べるのも美味しいですよ」


なんだそんな事かみたいな顔で「まあ、そうだろうな」とマシュさんは言った。


僕の言葉に「まあやってみるか」とパンを付けて口に運んだ。


「なんだよ、この食べ方の方が美味しいぞ、もうシチューがない」


「お代わりもありますので、どうぞ」


僕の言葉に突き出したお皿、お皿を受け取るとシチューを入れて渡した。


僕も食べよう、マシュさんの勢いは全てを食べ尽くす。


お腹が一杯になって、眠くなってきた。


僕が欠伸をしていると、皆は余裕があるのか、片付けと見張りをしてくれる事になった。


「皆、お先です。おやすみ」


「ああ、ごちそうさま」





「オークに遭遇しないな」


カカルさんがボヤいている。


「ここで待ってて」


僕は荷物を置いて、全力で走り出した。


「何処に行くんだよ」


「偵察です~」


分岐で右、分岐で右、分岐で左、いたオーク多数、オークを発見出来たので皆の所に戻る。


「ただいま、この先の分岐で右、分岐で右、分岐で左、オークまでにゴブリン4体、ゴブリン3体、コボルト4体、ゴブリン5体、その後にオークが多数8体以上いたみたいだよ」


「ほら、魔物より速く走れるみたいだよ」


レベッカさんは呆れ顔で話した。


「呆れた、どうしたらそんなに速く走れるのよ」


メグさんには、逃げる時は私を置いて行かないでねと言われた。


「あまり危険な事はしないでくれよ」


リーダーらしくヴエルナさんは危ない真似はするなと心配してくれる。


「ええ~、僕、いつかシュラさんの所まで魔物と戦わないで走って行けたらいいなと思ってるんだけど」


「ユーリなら本当に走っていける様になりそう」


「行くぞ」


「了解、ユーリは最後尾をよろしく」


カカルさんが後ろをよろしくと、僕も少しはあてにされてるのかな。さあ、出発だ、急いで、荷物を担ぐいで皆の後に続こう。


僕の見つけた所まで4回の戦闘をしてたどり着いた。


オークが多いので回り込まないで戦う作戦だ。


こうして見てると分かる、剣士の皆も強くなっている。


それに同じメンバーだから連携がとても上手くいっている。


あの時のピンチは陣形を決めた後に更にオークが来た事で起きた。


今ならあのピンチの状態でもそのまま押し切れそうだな。


戦闘が終った、解体も手早い。


皆は解体出来るので、手を貸してほしい工程の人の所に移動する。ひっくり返すとか持ち上げるとかのお手伝いだ。


「オーク肉を詰め込みました」


「分かった先に進むぞ」


その後の戦闘で荷物が一杯になり、僕は走って入口の大樽に入れて皆の所に戻る。


戻った時には先に進んで解体も終わっていて、僕を待ってくれていた。


僕がリュックに詰め終わると先に進む。


効率がいいので、二日で依頼されたオーク肉が集まった。


入口に戻り野営をして明日戻る事になった。




荷車に10個の大樽を乗せて僕が引き、男性陣が後ろから押している。


「これだけの量だと流石に重いね」


「ユーリが重たいってよ」


面白そうに言うのはマシュさんだ。


「あたり前だろ、この重さをもし一人で引けたら人間じゃない」


「ヴエルナはユーリなら一人でも引けるかもとか言ってなかったか」


カカルさんはから、ヴエルナさんが僕なら引けると、振り返って大樽に視線を向ける。いや、無理でしょう、何キロ有るんだ。


それに、この大草原を1人で引いていたら危ないよ。


「そんな事、言ったかな」


「言ってたよ、私は何言ってんだこの人はと思ったもん」


「僕も限界を知れて良かったけど、流石に一人で引けるようになりたいとは思わないな~」


そうだよな、一人で引けたら凄いけど、引ける様になったら外見がどうなるんだ、筋肉ムキムキなのかな。


「まあそうだな、引けても嬉しくないし、人間扱いもされない」


「私、ユーリが体力作りに丁度いいとか言い出すかと思ってた」


あんまりですよ、レベッカさん。いつも荷物を持ってあげてるのに。


「ねえ、オーク肉をこんなに大量に集める依頼?は今までなかったと思うんだけど」


「どこぞの人がパーティでもするんじゃないのか」


「そうだよな、パーティなら人数が多ければこれでも足りないかもな」


「この依頼の良いのは、わかるか、ユーリ」


「オーク肉が貰える」


ズバリ的中。


「違うぞ、依頼をオーク肉で受けて、討伐も受ければ2個同時に完了する」


「ああ、そうか、2個一緒にね」


外れてた。でも、オーク肉が貰えるのは本当だ。


「何処に届けるの?」


「中央にある役所だ」


「僕、そこで別れてもいいかな」


「いいぞ、そこまでは引いてくれ」


「了解」




「土産のオーク肉だよ」


小さいリュックからオーク肉を取り出して渡す。


「わぁ~、ありがとう」


「お母さんに悪くなる前に食べてと伝えてね」


「はい~、わかった」


「じゃあね、また来るよ」


「ありがとう、バイバイ」


リカちゃんにお土産のオーク肉を渡したので、家に帰ろう。


リカちゃんのお父さんは冒険者で何年か前に亡くなっている。冒険者と聞いて少しでも手助け出来ないかと思いたまにお土産を持って遊びに行く。


おばさんはこの頃、僕の気持ちがわかったのか出世払いを快く受け取ってくれる。少し体が弱いのか、仕事に行けない日もあるようだ。


リカちゃんが家の手伝いを出来る様になってきたとおばさんは喜んでいた。


薪拾いは危ないので、暇な時に僕が代わりにしている。そろそろ拾いに行くかな、我が家の薪も無くなるはずだ。


買えばいいのだが、貧乏性の僕は拾いに行っている。


裏の入口から厨房に入ると邪魔にならな様に調理台の隅にオーク肉を置く。


「父さん、ただいま、オーク肉のお土産、ここに置くね」


「おう、おかえり」


「シチューとパン貰うよ」


「ああ」


父さんとの会話は、短い。仕事をしている時は特に短い。


いつも食事をしている厨房近くのカウンターに座って食事を食べ始める。


母さんが料理を持って、何回も僕の横を通ってテーブルに運んでる、帰りには空いた食器をだ下て来る。


シシルは冒険宿の受付をしていてくれる時間帯だ。


ビールの注文が重なると僕も手伝うが、今は料理の注文の方が多い様だ。


まだ忙しい時間は続くが、夕飯が食べ終わったので、自分の部屋に行こう。


「酒場が終わったら話があるからね」


母さんに告げられた話がある、僕は部屋に戻ってどんな話があるのか考える。


う~ん、確かこんな時はそうだ。あなたに弟か妹が出来るのよと告げられて大喜びするイベントだ。それしかないよな。


そうか、兄弟が出来るのか。


妹がいいな、弟はダメだ、今更兄ちゃん一緒に遊ぼうて言われても困る。


妹なら「兄に抱っこ」ぐらいだろう。


年の離れた兄弟は面倒なのだ。面倒を見るのはいいが、一緒に遊ぶにしても振り回されるだけで、一緒に遊んでる事にならなくなるからだ。


10歳離れた兄弟だと、あ、俺が面倒を見る事が多いのか?なんか眠くなってきたな。


母さんに起こされ酒場のテーブルに行くと、父さんも待っていた。


ここは、こちらからサプライズのお祝いの言葉を。


「父さん、母さん、おめでとう。僕に妹が出来るんですね」


どうだ、なんて親思いのいい子だろう。


「えっと、ユーリが勘違いをしてるのはわかるけど話は違う事よ」


なに、あんなに考えたのに間違いなのか。


「それだと、僕に話とは?」


悪い事はしていない、お土産はなるべく持って来る、思い付く事が何にもないな。


「役所の女の人、え~と、ヤーシャさんが、ユーリのいない間に来たのよ、それでこれを預かったのよ」


あの人はヤーシャさんて名前か、手紙を開けてみると読めない。新手の嫌がらせか、読める単語もあるが分からない単語がありすぎて文章として読めるのは、冒険者は素材?それだけかそれだけなのか・・・・。


単語が続いていて読めるのが、冒険者は素材。


「えっと、ユーリが読めなかったら話してと言われたのよ、そこには冒険者を目指すなら学園に通いなさい、準備は出来てるので心配するな、後何かしら」


「『紹介者の面子をつぶさないで』とキリッとした女性は言ってたぞ」


難し言葉を使うんだな顔を潰さないでか。


「そうそう、三ヶ月後だから、忘れないでと言っていたわよ」


なるほど、妹の話ではなく。学園に入れるので必ず行かないと侯爵様の面子をつぶす事になるから絶対に行けと。そうだよな、侯爵様だよな。


手紙を読めない僕でもいいのか?それとも僕ぐらいのレベルの人も沢山いる?断れないなら行くしかないけど。


「父さん、母さん、僕、学園に行くよ。楽しい事も少しはあるはずだから」


「そうね、少しはあるといいわね」


「そうだな、俺なら行かないぞ」


父さん、それはないでしょう。自分が行かなくてもいいからと、しかし、両親の反応はどういう事なんだ、あまり良い事ではない様に感じてしまう雰囲気を出しているけど・・・・・・どうして?。


冒険者で文字が読めない人もいるかもしれないが、それは少なそうだ。契約とか依頼書の説明とか読めないとダメだし、それに読めないのも恥ずかしいかも。


「他に話がないなら寝るね。おやすみ」


「ああ、おやすみ」

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