便利丸
1時間も掛からずに完成した。
「1回作ったのが良かったな、何が必要か分かるからな」
木箱を横にして大きいボールを入れる、木箱に棒が通る丸い穴と小さい木箱を取り付けて同じな所に穴を開ける棒はこれでぶれない、後はボールに砂糖を入れるカップより少し小さいカップに炭入れる。上のカップを棒と繋ぐ様にして、棒が回る様にハンドルにしてみた。
足漕ぎから手で回す様になった。
後はお客さんのミアちゃんとマリアさんを待つだけだ。
マリアさんは火を起こすためだ。
すぐに帰って来たのは冒険者を除いた皆だ。
マリアさんがいないので、ロードさんに頼んで宿に行って火を貰って来てもらう。
「ミアちゃん準備はいいかな」
「はい、楽しみです」
準備が出来たのですぐに始める。
「ロードさん、もう少しのんびりと回して下さい、はい、その位です。ミアちゃんがそこで手をクルクルと回すと棒に絡みつきます、やってみて下さい」
「はい」
楽しそうだな、見ているアメリアさんも楽しそうだ、回しているロードさんは大変そうだ。
「わ~あ、どんどん大きくなる」
手をクルクルさせてどんどん大きくなる白い雲。
「はい、そこでクルクルをやめて食べてみようか」
「はい」
食べ始めるミアちゃん、クルクルしだすアメリアさん、妻の為に更に回すロードさん。
「わ~あ、甘いくて美味しい」
「中のカップは熱いので気を付けて下さい」
「はい」
後はロードさんに任せて、夜ご飯を食べに行く。
皆は酔っていたが、僕の料理は残されていた。
「あれユーリ、何処に行っていたですか?」
「秘密です」
マリアさんは顔を赤くして酔っている。
頼まなくて良かった、カップが溶かされていたかもしれない。
「ユーリ、ありがとう。美味しかった」
お礼を言われた僕は、頭を撫でて「食べ過ぎはダメだよ」と注意をした。
「はい」
「ミアが探していた白い雲を食べる事が出来ました、ありがとう。ユーリがいなくて大変だったのよ、主人が頑張って回したのよ」
「一杯食べたんですね」
「ユーリ行くぞ」
一杯食べて嬉しかっただろう二人と話しているのと、ロードさんに呼ばれた。
「は~い」
お祭りの最終日だ、商品の売れ行きで、今日出発するかもしれない。
今日は僕も行商人をするのだ、便利丸を販売するつもりだ。
飽きてきた、お祭りなので人は多いけど、立ち止まったり説明を聞いたくれ人がいない。
「いい品でしょ、山を越えてゴールドルルからお持ちしました」
「普段お使いの物より使いやすいですよ」
「お祭りなので値引きしているんです」
隣のロードさん達は接客で忙しい。僕は暇だ。
見るからに怪しい商品の便利丸、お祭りで売られている商品の中で一番怪しい。
僕から見てもこの緑の丸い球を怪しいと思う。
緑の便利丸に視線を向ける人はいるけど、興味がわかないんだろう。
「今日は沢山売れたな、店じまいだ」
僕の独り言が聞こえたヒューラさんに「1個も売れてないね」と言われてしまう。
ヒューラさん、そこは間違いです。1セット4個で販売予定なので、1個だけでは売れない。
「これから場所を変えて販売してきます」
「頑張ってね」
いい人なのだが、笑っている。
木箱の上から木箱の中に入れる。でも木箱の上に戻す。
場所よりも売り方を変えよう。
荷馬車の中から紙を出し『魔物が嫌いなお香、たけば安全度が上がります。セットで銅貨2枚』と書いて木箱に貼る。
使い方を書く。便利丸を四角なる様に置いた図と真ん中に人らしき絵、絵の才能はなし。
「人に見えるかな」
書いた後で、分かりやすい人の絵があるのを思い出して書き直す。
「人に見えるな、頭の丸以外は線にすればいいのだ。どこかで見たな、これ骨を表しているのかな、最初に思いついた人に聞いてみたいな」
まあ聞けないけど、後から知りたくなっても別の世界だ。
木箱を45度回転させて使用方法も貼る。木箱を大きい物に変えれば2枚横に貼れるけど、まあこれでいいのだ。
木箱の後ろで使い方と同じ様にしてその中に立つ。
「ここで修業をしていよう」
静と動の修行だ。
静から動の動くをよく考える。静は動かない事でいいんだよな、その動かない体勢から動く。
考えれば考える程に難しくて大変なのが分かる。
「これ何ですか?」
「今修行中です」
「え、」
目を瞑つていたので邪魔者が来たのかと勘違いした。
「すいません、瞑想中でした。これは魔物が嫌いな匂いで近づいて来ない様にする為のお香です。足物の便利丸をもっと広げて使います。」
僕は周りを見て広場より遠くに置いても大丈夫だ。
「この広場の広さの四隅に置いてお香をたくとその中に入って来ないんです。勿論中で魔物に気づかれれば襲われる可能性はあります。ただお香の置いた場所から外側にもお香は効いているので広場よりも広い範囲に魔物の嫌いな匂いが漂っている事になるので、お香まで魔物が近ずく事はないはずです」
「へえ~、そんな便利なお香があるのか、1セットとは何個なのかな?」
「1セット4個です、野営1泊分ですね」
「4個で銅貨2枚か、ありがとう。へ~、便利な物が有るんだな」
説明を聞いて人混みの中に消えて行った。
「さあ、瞑想だ」
売れないのは仕方ない。説明はちゃんとしないといけない、この場所はロードさん達の場所だ、お借りしているので迷惑は掛けてはいけない。
修行しながら説明をしたけど1セットも売れない。
行商は難しい、売れそうな物だけど街から出ない、安全性の高い街の近くに住んでいる人には要らない物だからな。
ロードさん達の商品はほぼ完売だったのでお昼を食べたら出発する事になった。
「ユーリ、残念だったな。頑張っていたのに」
「販売が難しいのはよく分かりました。次も頑張ります」
後片づけはすぐに終わったので、知り合いの宿屋で定番のシチューとパンを皆と食べている。
「楽しかったな、お祭りはいいよな」
武器を買ったルーベルさんはウキウキだ。
「色々美味しい物が食べれたのよね、マリア」
「はい、ロールケーキが美味しかったです」
皆は3日間、楽しんだようだ。
「ミアも楽しかったでしょう」
「はい、白い雲が食べれました」
「食べたら、出発だ、次は王都ガーベラだ」
ロードさん達の馬車は先に街道を進んで行った。
「おお、いい感じにだな。目立つのがいいな」
「君、何しているんだねそこで」
門番さんに質問されたのでお答えする。
「見て分かる様に販売です、許可は頂きました」
『そんなところでいいのか、門番の邪魔はするなよ』と言われた。
「許可が出ているのか?」
「そうなんです、いい人ですね隊長さんは、言付けを預かってきました。頑張れだそうです」
「頑張れ?」
「商品の説明は中に入っています、この立札が販売してる事を表しています。簡単な説明も立て札に書いてあります。お金はそこのカップに入れて貰って下さい」
「え、入れて貰って下さい?俺が入れて貰うのか?」
「はい、無人販売なので見張りのおじさんが料金を入れてくれる様にお願いして下さい。売り上げはこの街の施設に寄付されるので、おじさん達の頑張りに掛かっています。よろしくお願いしいます」
最後に勝手に握手して「施設の子供達の為に頑張ってね」とお願いした。
返事を聞かないで、急いで馬車を追いかける。
落とした食べ物を食べるのはいいけど、落ちている食べ物を食べるのは良くない。
街道を走る馬車、その横でチョロチョロと草を摘んでは馬車の後ろに結いてあるリュックに入れていく。
背中には背負子を担ぎ、また街道横の草原に入って便利草を取る。
「便利草AとBは似ていたのか、リーレンさんに言われるまで気が付かなかった」
プリンランでリーレンさんが、区別がつかない人が多いと言っていたが、リーレンさんに教えて貰ったので僕が間違える事はない。ミアちゃんにも教えたので間違えないで取ることが出来る。
葉っぱの形は同じだけど、名前は分からないが手の血管みたいのが葉っぱにも有る。それがAとBでは違う。
「ユーリ、王都では何するの?」
1号車のルルさんが王都での予定を聞いてきた。
王都では7~10日間の休みが貰える予定だ。順調なのと王都は広いので時間を掛けて商品を探すらしい。プリンランで頑張ったのは王都で商品を仕入れるためだった。
販売しないので雑用がない僕と警護の仕事の皆は長い休みが貰えた。
「長い休みなので、秘密です」
「ええ~、皆はユーリに付いて行くって言っているわよ」
何故だ、何を企んでいるのだ。ただ暇なだけか・・・・暇なんだろう。
「僕は1人で行動したいです、皆は邪魔」
「それはないだろう、長ければ10日だぞ何をしてればいいんだよ」
バジルさんが本音で訪ねてきたが、僕は火山とレットちゃんを探しに行くんだ。
「王都観光でもしてればいいじゃないですか」
「俺もユーリに付いて行くぞ」
遠くの方からウイントンさんの声が聞こえる。
走りながら話しているので皆の声は大声だ。
斜め後ろのマリアさんは何も話してない。アルさんはリーダーなので会話に加わる事は無い。
「のんびり」
背中のミアちゃんは王都でのんびり過ごすそうだ。
「たまにはのんびりするのもいいです、皆もミアちゃんを見習ってのんびりして下さい」
会話しながら便利草をどんどん取っていく。皆は馬車に乗っているだけ。
王都に近いので魔物と盗賊は出ない、騎士団の一行と何度もすれ違った。
安全の為に日夜頑張っている。そのお陰で皆がだらけられている。
「僕は忙しいので皆さんの相手は出来ません、これにてご免」
時代劇のこれにてご免を気に入っている。使い方は合っているのだろうか。
ミアちゃんを乗せて街道を走る、リストバンドが無くなって慣れる為に走る事にしている。
少しの負荷をミアちゃんにお願いしている。
「ふう~、軽いのにも慣れてきた。よし戻ろう」
「これが便利丸か」
皆が便利丸を手に取ってみている。
「火を付ければ匂いが漂うのね」
「カルテアからいつも仕掛けていたのは魔物除けだったのか」
「なんで最初に教えてくれなかったんだ?」
アルさんの質問に答えてあげよう。
「皆が怠け者にならない様にです」
久しぶりに頭を叩かれた。
「実は検証するまで教えてはいけないと思ったんです。気が緩んでもしもの事があると言い出した僕の責任になります。これから危険が少し減る位に考えて使って下さい」
「ああ~、それであの街道で実験していたのか」
「そうです、海岸沿いには魔物が少なくて試せませんでした、あの夜は魔物が沢山いるとアルさんの報告を聞いてこの機会に検証したいと思ったのです」
「少しは考えているのね」
ルルさんが失礼な事を言ったがまあいい。皆の方が何も考えてない筈だ。
「旅が少し楽になるな、ありがとう。ユーリ」
大人だなロードさんは。
王都に着く前の最後の野営は安全度があがり安心して眠る事が出来たとウイントンさんは言った。
ウイントンさんに僕は見張りを頑張りなさいと言っておいた。




