ミアちゃんの手料理
「ねえ、あそこに居るのはユーリだよね」
ルルさんの声が聞こえる。
「まあ、あんな事をするのはユーリしかいないな」
アルさんの声も聞こえるな。
「片手で登ったのか」
「あそこだと涼しいのかな、落ちたら危ないけど」
「俺も登りたい、それで涼みたい」
「私はあの高さでは眠れません」
木の上にハンモックを付けたので風があって涼しいのだ。落ちない様にダブルハンモックにしている。
網に入って寝ているだけなのだ。しかしよく発見できたな、いない人を探すのに上を見る人はいないのに。
「ユーリ、朝ごはんだぞ。それが終われば出発だ」
「降りるまでもう少しは掛かります、先に食べていて下さい」
片手なので外すのに時間がかかる、面倒なので外さなくていいか。
「ロープはタダなのだ~」
「混んでいるな、どうしたんだ」
南の門は凄い行列だ。堀はないけれど城壁はある、高さは2階建ての家より少し高いぐらい。
ランベルトの街の真南より少し西にあるらし村、プリンラン村。
ロードさんが長い行列が出来ているのを不思議そうにしている。
僕は初めて来たので何も分からない。
行列を見ていたアルさんが何かに気が付いた。
「お祭りなんだ、夏にはどこでも行われる」
僕が経験したお祭りは春のお祭りで、今は夏だよね。夏祭り・・盆踊り・・暇だから祭り・・取り敢えずお祭り。
毎年してるなら夏祭りだな。どこでも、カルテアも夏祭りがあるのか、不思議だ娯楽的要素がないのに祭りが楽しいのかな。
「そうか、夏だったな今は」
そうか今度は食べ歩きが出来るのか、何も買うはずないけど。
武器屋さんを見に行くのもいいな、安売りはあるのか確かめないと凄く安ければ武器が買える。
「まあ、祭りなら忙しくなるのね」
「いい場所が取れるか、それが問題だ」
そうか、この村で色々な商品を売って、王都の・・・・・何とかで商品を仕入れる予定だと言っていたな。
ロードさんがこの頃予定を早く教えてくれる様になってきた。
雑用の仕事はそんなにないので、予定を早く教えて貰えれば色々なタダの材料から何かを作る予定が組める。
今在庫が沢山あるのは便利草だけだ。、ロープは色々と使っているので直ぐに無くなる。
水が無いと作れないロープは材料を集めるのは川が近くにある時しかしない方がいい、荷物になるだけだ。
ミアちゃんが馬車から顔を出してお祭りの言葉に反応した。
「そうよお祭り、楽しい事が沢山あるわよ」
「わ~い、お祭り」
しかし、お昼前に着いた僕達はお祭りの為の準備をするだろうか。お祭りは始まっていないのか?
村の中に入るのに30分以上掛った。お祭りは始まっていた、だいぶ前に。
既に始まっていたお祭りは凄い人出で、馬車が通れない程だった。
「宿の裏庭に馬車を止めよう、宿も取れるか分からないかが仕方ない」
そうか、今夜は村の中で野宿だな。
ロードさん達が毎回泊まる宿に部屋の空きは有るのか確認したけど、お祭りで空いて無いそうだ。何処も空いてなさそうなので、お願いして裏庭に馬車を置く許可が貰えた。
裏庭には、僕の家の裏庭と変わらない。エルザの宿だと女性用の水浴び用の仕切りがあるけどここにはない。
お風呂に入りたいな、温泉は未だに見付からない。
「ロードさん、広場の隅を借りる事が出来ましたが、人通りが少ないです」
ヒューラさんさんが広場の隅を借りる事が出来たと言っているが人通りが少ないらしい。
お祭りでも人は混んでいる所には何かあると集まる。この事を日本人ホイホイと言う、並ぶのが好きな日本人は並んだ後のに前の人に『何の列ですか』と聞く。
日本人ホイホイはブームの度に行列を作る。
僕が見たのは、池袋に家電の店がオープンした時だ、父さんが並んだ後に『何かいい事があるぞ』と言ったが、並んでいる人に配ったチラシには先着3名とかの商品が100種類位書いてあった。
並んでいる人が500人は並んでいた、僕は買えないと思い父さんを置いて帰った。
そして日本人ホイホイの近くはお店が有っても誰も入って来ないのだ。それもホイホイは他のお店の邪魔をしている様に感じた。
どうするのかな、今から準備して販売だと忙しくなるぞ。
「急いで準備しましょう、お祭りだと商品が売れにくいかも知れません」
ベルンさんが僕が心配していた、お祭りの時は普段売れる物が売れない、普段買わない物が売れると言っているんだ。
ロードさんの商品は贅沢品以外は日常で使う物だ。この村で商品を全部売るつもりで訪れている。
「そうだんな、準備を急ごう。冒険者の皆も運ぶのを手伝ってくれ。馬で引く事が出来ない」
まるほど、僕の出番なんだな。全力で引けば引けない物は無い。そこに荷馬車があるから。
「荷馬車だけを僕が引きます、後ろから数人押して下さい。恐らく引く事が出来るでしょう」
皆が黙ってしまったが、『試してみましょう、ロードさん』と言ったのはバジスさんだ。
「何を言っているんだ、荷物の載った荷馬車を人が引けるかよ、俺達が後ろから押しても同じだ」
「ユーリは、今まで出来ない事を言った事がない。試すだけ試そう、動けば広場まで荷物を運ぶのが楽になる」
「お前本気か、荷馬車だぞ」
「あのそんなに重いはずありませんよ、僕の経験からすると」
皆がどいた後に荷馬車を全力で引く、背が低いので引き辛いが動き出した。
「おお~、動いたぞ。皆押せ」
アルさんが大声で指示をだした。冒険者の4人のは男性は馬車の後ろから押してくれた。
「すいません、ヒューラさん先導して下さい。場所が分かりません」
驚いていたヒューラさんは我に返った。はっと気が付いた感じの表情をした。
「ああ、そうか、こっちだ」
「ねえ、ユーリ。両手で大丈夫なの?」
言われて右手を見てみる。おお・・・・・・痛い。
「痛いみたいです、左手だけで大丈夫なので行きますよ」
気を付けよう治りが遅くなる。
「何だ治ったのかと思った」
「そんなに早く治らないぞ、ユーリも人間だからな」
そのへんの話は聞き飽きたのだ。
荷馬車を人が引いてるのが珍しくて、皆が避けてくれる。
「これから、商品を売りますので後で来てくださいね」
僕は歩いている人にお礼と宣伝をして歩く。目立っているのならそれを利用しよう。
僕は行商人のユーリだ、今だけ。
「ユーリは面白いな、この状況を利用しようとは俺なら考えつかない」
「ダメですよ、若いんだから考えて今よりいい状況になる様にしないと。ピンチで一番できる事は考える事です。名言だな」
「ユーリ、楽しそうだけど後2台運ぶのよ」
「大丈夫ですよ、1人でも引ける自身が湧いてきました」
3台目を運び終わると先に運んだ2台から商品を並べて、ロードさん達は販売を始めていた。
商品を出し終わった皆はお昼を食べていない、露店を借りて来てお昼を作ろう。
3人は商品を売る為に説明をしている。
僕達は予定が無いので露店の周りに集まっている。
僕は皆の分をお皿に乗せて鍋に入れる。
「後は待つだけです」
「簡単なのね」
「これも料理と言うの」
「さあ、どうなんだ」
「どうですか、いい物です。お祭りなので特別に安くしときます」
「そうだな、お祭りだ。少しでも安いならそれでいいか」
「ありがとうございます」
購入してくれたお客さんに小肉丸を渡す。
「どうぞ、食べて下さい」
「ユーリ」
「お祭りです、当店のオーナの娘さんの手作りです。あそこで頑張って調理しています、サービスですので小さいですが、オーク肉を使ってます。お祭りですから」
「オーク肉が入っているのか、お祭りはいいな」
「では、ありがとうございます。失礼します」
「すいません、うちの若い者が」
ロードさんはお辞儀して。
「いや、お祭りだから」
「はい、商品です。ありがとうごいました」
「いいものがあるね、寄って良かったよ」
「ありがとうざいます。今準備します」
ベルンさんが準備に向かった、この隙に渡そう、お祭りだから。
「どうぞ、小肉丸です。購入者の皆さんに差し上げています。お祭りのサービス、オーク肉入りです。後でお召し上がり下さい」
小肉丸を購入者にサービスであげている。ミヤちゃんが具を入れているので小さい。
「どうですか、美味しいですか?」
「美味しい、何これ」
「小肉丸」
「何でこんなに美味しいんだ」
「小肉丸」
「こんなに簡単に出来るのに」
「小肉丸」
「ユーリ、面倒でも説明をしてよ」
「説明はなしです、料理は美味しいので説明はありません。美味しく作るコツなら説明がありますが、皆さんは誰も料理をしないので説明はしません」
6人は肉丸を食べている。
小肉丸を頑張って作っているミアちゃんも肉丸を先に食べている。
『美味しい』と感想を言った後は肉丸より小さいサイズの小肉丸をどんどん作っている。
ミアちゃんの手はまだ小さいので小さいサイズの肉丸、小肉丸しか作れない。
本人が頑張っているので応援する意味でどんどん蒸す。
蒸して出来た小肉丸を購入者の皆に配っている。
最初は戸惑っていたロードさん達も購入者の皆さんに渡すようになった。お祭りだからと言えば喜んで貰ってくれる。
ロードさんも自分の娘が頑張っているので自分も頑張ると張り切っている。
小肉丸を食べる余裕がある時にロードさん達も食べた。
「落ちている物は食べてはダメですよ」
「はい」
小さい男の子とお母さんがお祭りの広場から裏路地の方に歩いて行く。
「僕なら落とした食べ物は、10秒ルールで食べれる」
「まだ夕方か、お祭りで買ってくれる人が少ないと思ったが意外と売れたな。もうひと頑張りだな」
そうなのだ、宿がないので夜まで販売をする事にしたのだ、のんびりする所が裏庭、井戸の前なのが辛いのだろうロードさんは、甲斐性なしなのだ。
「ユーリ、聞こえているぞ」
そうなのだ、何か適切な事を考えると言葉になっている事が多い。特に悪口など。
「ミアちゃん、頑張ろう」
「はい、頑張ります」
いい子だ、ロードさんの子供だとは思いえない、アメリアさんには凄く似ている。
「聞こえたぞ」
「考えが読める様になったんですねロードさん」
「読めないと思うよ、ユーリが話しているんだよ」
ルーベルさんに聞こえたのなら独り言を話していたんだな。
「そこの人、どうですか、オーク肉入りの小肉丸。なんとお祭り特価で銅貨1枚で販売したますよ、ミアちゃんの手作りですよ」
道行く人にお祭り特価の呼び込みをしている。小さいけどオーク肉入りなのでよく売れる。
「5個下さい」
「ミアちゃん5個です」
「はい、5個ですね、1個おまけです」
「いいんですか?」
「はい、お祭りです」
「ありがとう」
遂に販売に乗り出したミアちゃん、流石アメリアさんの娘だ。
「ユーリ、そこは私ロードさんの娘だ」
悪口ではないのに独り言になっている。
「そこの君、オーク肉を売っているのはここかな?」
そこの君・・・・僕の周りには君と呼ばれそうなのは僕だけかな。
「僕の事でしょうか?」
「そうだ、オーク肉を売って欲しい有るだけ」
あれ、肉丸を買う話ではなくてオーク肉が欲しいのか。
「オーナーに聞いて来ます」
「ロードさん、あそこのお客がオーク肉を全て売って欲しいと言ってますよ」
「そうか、私が話そう」
ロードさんと話した人は貴族様に見える。
貴族様だと判断したロードさんは悩むことなくオーク肉を販売した。
「ミア、ごめん、オーク肉を食べたいと偉い人に頼まれて売ってしまったんだ」
「はい」
ミアちゃんは既に満足していた。
小肉丸は完売していたのだ。
お腹が空けば小肉丸を食べていたので、とても嬉しそうに販売していた。
「いい子だ。みんなもう夜だ、お腹もすいただろう、何か食べに行こう」
ロードさんの話にベルンさんが代表して話す。
「皆は肉丸を食べていたのでお腹が減っていません、私とヒューラもお客さんに食べるところを見せたりと食べる機会が多くて、夜ご飯は食べれそうにありません」
ロードさんは周りを見回して満足そうな顔をしている皆がお腹を空かしてないのに気が付いた。
「私だけなのかお腹が空いているのは」
そんなに悲しそうにしなくても・・・・・今のところは、僕の十八番の演技に似ている。ロードさんも演技の道に進んでいる。
「ユーリ、楽しそうだな」
「そんな事はありませんよ、同士よ」
「ハァ~?」
「お父さん、どうぞ」
ミアちゃんの両手には小肉丸が1個ずつ乗っていた。
あれでは足りないので僕と冒険者の皆は手を出した。
「「「「「「「どうぞ」」」」」」」
両手を出す、1個ずつ載っているのは肉丸だ。
「ミア、ありがとう。片付けが終わったら食べるよ」
「はい」




