美味しい料理
「ミア~」
「は~い」
アメリアさんが馬車から声を掛けて来て、それに返事をするミアちゃん。
僕の背中のミアちゃん用の背負子からミアちゃんがアメリアさんに手を振っている。
ロードさんの横にアメリアさんは座っている。
僕は馬車より少し前を走っている。ミアちゃんから両親が見える様に。
「楽しそうだな」
「そうですね、移動中は馬車の中なので楽しいのでしょう」
「しかし、ユーリの体力はどうなっているんだ、朝からああしているのに疲れたそぶりもない」
「そうですね、あれが冒険者の体力なのかしら」
後ろで僕の事を話している様だけど、リストバンドが無くなり軽くなった僕は前よりも疲れない。
それにミアちゃんは軽いので、全力で走る事も出来る。
右手の骨折は治るのが遅い、異世界でも治るのにそんなに変わらないかもと思う様になってきた。
「魔物です、街道から近いので倒さないと襲われる危険があります」
馬車1号のアルさんが大声で知らせてきた。
大声に反応するのに大丈夫なのかな。全部の馬車が止まって冒険者が馬車1号の所に集まる。
「ミアちゃん、危険なので馬車に戻ろうね」
「はい」
ミヤちゃんをアメリアさんに任せて馬車1号に向かう。
近くにいる魔物とはなにかと周りを見るとオークだった。
皆が作戦中で輪になっているので、後ろで聞いている事にした。
「マリアは当たりそうならどんどん魔法を撃て、俺達は囲まれなければ大丈夫どろうから、それぞれの判断に任せる」
「作戦を変更して下して下さい、マリアさんは見学で皆は食べれる様に倒す、体の部分には攻撃しないで下さい」
「ユーリ口出しするな、これは僕達の仕事だ」
「食べれる様に倒してくれないという事ですか?」
ルーベルさんが怒っている。
「そんなの関係あるか、魔物は倒せばいいだけだ。食べれる様に倒すなど聞いた事がないぞ」
あれこの大陸では、高価だけど食べれる様に倒さないのか、それともローランドでは食べる事を考えすぎていたのかな。余裕で倒せるのに残念だな、オーク肉は美味しいのに。
「残念です・・・高価な肉が相手にされないなんて、武器があれば自分で倒すのに」
「高価なのか、オーク肉は?」
「さあ、高価だと思いますよ。ローランドでは貴族様が喜んで食べてましたよ、平民の僕達では買えないですけど」
「え、オーク肉は不味いだろ、ローランドの貴族はどうしてオーク肉を喜んで食べるんだ」
「それなら、ロードさんに聞いてみたらどうですか?」
ルルさんがロードさんを呼んで来てくれた。
「どうしたんだ、呼ばれたけど何か大変な事でもあったのかい?」
「ユーリが、オークを食べれる様に倒してくれと言い出したんですが、オーク肉は高価な物なんでか?」
「不思議に思っていたんだ、何で君たちはオーク肉を食べないのかと、私も出来ればオークを食べれる様に倒して欲しい」
そうだよね、そんなに味覚は変わらないよね。どうなのよ、他の冒険者の皆も同じなのかな。
「そうなんですか、仲間と話し合います」
「分かりました、ロードさんの指示に従います」
6人は話し合いは、簡単に結論が出た様だ。一瞬だ、それなら僕の言葉も信じて欲しいよな、嘘のつけない僕なのに、1回ぐらい嘘を言ってみるかな・・・・・・駄目だ、駄目な大人になりそうだ、僕の性格だと取り返しのつかない被害者が出そうだ。
僕では彼らを説得する事が出来なかっただろう。人の意見を聞かない人、聞いていたけど、そこから何かを考えれない人が多い。
僕は考えるのが好きなお陰で、人の話を聞くのが好きだ。他人の経験を聞く事で、自分の助けになる事が多々ある。特にモノ作りは、自分の経験よりも人の経験が大事だ、それは、気になった事を全て自分でやる時間がないからだ。
そうだ、反面教師なんだなこの人達は、そうに違いない。
「痛い」
「聞こえていたぞ」
どの辺が聞こえていたんだ、まあいいか、オーク肉を食べれる様に倒してくれるんだから。
ロードさんは食べれるならと解体に使えそうなナイフを貸してくれた。
リュックも2個貸してくれた。街に着いたら僕のリュックを買ってくれるとも言ってくれた。
個人用の大きいいのを買って貰おう。
僕が解体していると、冒険者の皆が来て見学していたので「解体をしますか?」と聞いてみた。
「解体した事がない」と全員が言った。
6人全員が解体が出来ないらしい、冒険者なら旅の途中で倒した獲物を食べそうなのに変わっている人達だ。
僕もあまり食べてない、干し肉が有るから。
「すいません、解体には時間が掛るので、先に出発して下さい」
「大丈夫か、誰か護衛を残すか?」
「駄目ですよ、僕は護衛対象ではありません、皆は、先に行って下さい。直ぐに合流しますから」
「皆、馬車に戻って出発だ」
僕の言葉で納得した皆は馬車に戻って行った。
「ユーリ、気を付けるんだぞ」
ロードさんの声に手を振って答えた。
左手だけの解体は大変だ、押さえる手がない、やりにくいので、右手も添えた解体している。流石に足は使いたくない、この後食べるんだから。
「これで最後かな、倒した場所を覚えといたけど、忘れてはないよな」
全部で13体のオークを倒したので13体解体したはずだ。
こうやってオークの解体をしているとオーク王国を思い出す。
崖の下で剣の練習をしてのを思い出す。
あんな戦い方をするのは僕だけだな、、面白い事もあるけれど安全の為には相手を知るのが重要だな。
今ならオークに負ける気がしない。
「さて、馬車を追いかけるか、すぐに追いついちゃうけど」
街道に出て馬車の行った方向を見たが、右に緩くカーブしているので馬車は見えなかった。
久しぶりの全力疾走で馬車を追う、軽いな・・・リストバンドが無いとこんなにも違うのか、あれ以上の重さを付けても身体能力をあげるのは無理だったかもしれないな。
ならばこの軽い状態で、更に動きに磨きを掛けないと、今までの努力が無駄になる。
ジェシー、僕は頑張っているよ。君も大草原を走っているんだろうな。僕はまだ魔法が使えないよ。いつか使う、それは約束だ。頑張ろう。
「でも、どうすればいいんだろう、静と動を取り入れてみるかな。今までと逆になるけどやってみよう」
これは大変だ。凄い集中力が身に付くだろう。
今は馬車を追いかけるのが先だ、ほら見えてきた。
「なあ、リュックが凄い速度で飛んで来るぞ」
「ハァ~、何を言っているのですか、リュックは飛びません」
その言葉を聞いたマリアさんは否定している。うん、リュックは飛ばない・・・・・・いや、魔法なら何とかなりそうだ。
「ウイントン、まだ気にしているのか、ユーリがコロシアムの選手だったのを」
「気にはしているが、今はそんな事どうでもいい。リュックに追いつかれるぞ」
何か指さしているのは、定位置に座っているウイントンさんだな。
面白いな、手を振るかな。
「おい、リュックから手が出て来たぞ。あんな魔物初めて見た、戦闘の準備しないと」
「まだ言っているの、リュックの魔物なんていないわよ。それにそんなに速いならリュックに似た魔物でしょ」
「お前ら、リュックの魔物もリュックに似た魔物もいないよ」
「ただいま、オーク肉を詰めて来たよ」
手を振って馬車3号を抜いた、馬車2号の後ろを走る様に街道の真ん中を走って。
「ミアちゃん、リュックが後ろを走っているよ」
「ユーリがミアちゃんにリュックが走っているて言っているわね」
「ああ、リュックが走っているな」
ミアちゃんはビックリしている。
「リュックが付いてくる」
「まあ、本当ね。でもリュックの間にユーリの頭が見えるわね」
「ユーリがいるの」
あまり驚かしても悪いので御者台に乗ろう。
「おお、リュックが・・・・ユーリか」
「オーク肉を詰め終わりました、馬車に置きますね、ミアちゃんの好きなオーク肉を持って来たよ」
「オーク肉好き」
明日には余裕で次の村に着くので、早めの野営をする事になった。
今日の料理当番を自分から申し出た。
オーク肉のシチューを美味しく作るつもりだ。
今まで何回も作って来たシチューを更に美味しくするつもりだ、丁寧にオーク肉を下ごしらいをして、旨味が逃げない様にオーク肉の周りを軽く焼いで弱火で煮る。
今日はミアちゃんに料理を手伝って貰おう。
「さあ、コネコネしようね」
「はい、コネコネします」
小さい手で小麦粉をコネコネするミアちゃん、横でアメリアさんが見ている。
「そうだよ、押す時に力を入れるんだよ」
「はい、コネコネに力を入れる」
素直でいい子だ、天使に見えてきた。空も飛んだし天使だろう。
コネコネはミアちゃんに任せて中にいれる具の用意をする。
久しぶりの肉丸を作っている、オーク肉なのでとても美味しいはずだ。
コネコネが終わってから30分ほど経つと、膨らんできたので具を詰めていく。
「あのユーリ、それはパンの中に具を入れているんですか?」
「見た目は似ていますけど、違う食べ物です。パンと違い具が中に入っているので、もっと食べたくなります」
「変な形ですね」
「だいぶ気に入った様ですね、ミアちゃん」
「はい、コネコネは面白のです」
そうミアちゃんは馬車に有る小麦粉をどんどんコネコネしている。既に食べれないほどの肉丸の生地が出来上がっている。
ロードさんは困っているけど、行商の旅で楽しい事はそんなにさせてあげれないので好きなだけさせると言って、ベルンさんに全ての小麦粉を持って来させた。
天使のミアちゃんは神になろうとしている、小麦粉を一遍に消費して一遍に肉丸の生地を作っている。
僕でも同じ日に一遍を2種類もしたことがないのに。
「私もコネコネをしてみたいです」
優しいミアちゃんは「はい」と言って違うボールを指さした。
一遍のお手伝いにアメリアさんが加わって、夕食までに小麦粉が無くなると思った。
「約束の美味しいシチューです、あの時は許可を出して頂きありがとう」
山の麓で次の日に魔物も戦う予定の時の事だ、実験をする為に魔物がいる街道に行く事を許してもらう為に『いままでに食べた事のない美味しい物を用意します』とお願いした。
美味しい物に反応を示す6人にはこの美味しい物は有効的だ。
食べた事のないオーク肉なので嘘も言っていない。
ロードさん達に先に配った、6人に配りだしたところだ。
「いつものシチューだよなこれ」
「見た目は変わりませんが美味しいですよ、さあ、他の人も取って下さい」
片手なのでお願いするとトレイからお皿がすぐに取られた。
「美味しいです、こんなにも柔らくてお肉の味が濃厚で口の中ではじけます」
この頃思う、アメリアさんはグルメの天才リポーターになれると。
「美味しい」
ミアちゃんの感想は美味しい、これも凄い、それ以上言わなくてもいいと言っているのだ。
6人の感想は「見た目同じなのに美味しい」
6人の冒険者は、何か料理の世界にはいてはいけない様な関わって欲しくない様な感性を持っている。そして、初めての食材は食べない。
「お代わりは自分でして下さい」
「「「「「は~い」」」」」
片手なのでお皿を持ちながら食べるのが大変なのだ。
ミアちゃんが自分の作った料理がないのに気が付いたので「今日はこのシチューがあるから明日のお昼にはミアちゃんの作った料理が食べれるよ」と教えてあげた。
「はい」
いい返事をしたミアちゃんはシチューのお代わりをした。
「美味しい、今まで食べた事がない」
「そうです、食べた事がありません」
「何でこんなに美味しいんだ」
「さあな、俺も分からない」
「いいじゃない。美味しいんだから」
「同じに見えるのに、美味しい」
この6人は余程偏った食材しか食べないんだろう、味覚が発達していない。
野菜と魚介類にお肉はオーク肉を食べない。
水で生きてる6人なのかと思うほど食べる食材が少ない。
食事の片付けが終わるとそれぞれハンモックに向かって行く。
夏の暑さでロードさん家族も外で寝ている。
寝苦しい夜がこれから続くのだ。
早く寝る事が出来ないので、便利草を集めに行く。
「実験でだいぶ使った、眠くなるまで沢山集めるぞ」




