反射神経
「コネコネコネコネコネコネコネコネコネコネ」
「皆は食べないの?」
「「「「「「いらない」」」」」」
6人は要らないらしい。
汚いとも言っていたな。こねているからか。
6人はロードさんが用意してくれたご馳走を食べたので、お腹が空いてる筈もない。
僕は中腹で野営するならオーク肉でハンバーグを作ろうと思い、冒険者を除いた6人の為に魔物を倒し場所に行き解体して戻って来た。
オーク肉を引い肉の様にみじん切りにして捏ねた。形を整えて後は焼くだけだ、この形になればステーキと見た目が少し違うだけ、焼こう。両面を焦がさないと美味しくない、不思議だよな。ステーキだと柔らかくて美味しいと感想をよく聞くけど、ハンバーグは焦げてパリパリが無いと美味しくない、捏ねて成形したお肉のハンバーグは噛み応えがないからなのかな。
美味しそうに焼けてきたな、最初はロードさん家族からだ。
「ミアちゃん、もうすぐだよ。美味しいお肉を焼くからね」
「はい」
ミアちゃんは正直者の『はい』が得意だ。聞いた人が素直でいい声を出すと思うだろう。
「アメリアさんのも直ぐに焼けます」
「楽しみです」
試しにアメリアさんと話してみたが、親子揃っていい声だ。ロードさんは試さなくてもいい、よく話すので覚えている。
焼けたハンバーグにソースを掛ければ完成、最初はミアちゃんの前の木箱に置く。
「どうぞ」
アメリアさんが横から食べやすい大きさにハンバーグを切ってあげている。
「ロードさん、これがハンバーグです」
「面白い調理法だったよ、どれ味は・・・・・美味しい、初めての食感だ」
アメリアさんも自分のハンバーグを切ると口に入れた。
「美味しい」
食べ始めたミヤちゃんの感想がこぼれた。
「まあ、とても柔らかくてとても美味しいのね」
アメリアさんの感想を聞きながら、待っている2人と僕の分を焼く。久しぶりのハンバーグだ。
ハンバーグをよく焼いているが、自分で食べる機会が少ないので最後に食べたのかいつか思い出せない。
上手く焦げ目を付ける事が出来たハンバーグを最後の二人に手渡した。
「どうぞ、熱いので気を付けて下さい」
「ありがとう」
ミアちゃんのハンバーグが無くなりそうなのでお代わりを聞いてみよう。
「お代わりをしますか、ミアちゃん」
「はい、食べます」
そんなに大きいハンバーグではないので、皆はお代わりをするだろう。先にどんどん焼こう。
僕の分に焼いていたハンバーグをアメリアさんに渡して切り分けて貰う。
食べ終わった人からお代わりを出して、自分の分も焼いて食べた。
皆の食べた感想は美味しいだった。
後片付けが終わり、僕は馬車から少し離れたところに便利丸をセットした。
この場所は魔物が出るそうなので、馬車の中にハンモックを取り付ける事にした。魔物が現れても馬車の中なら、見張りの誰かが対応している間に起きる事が出来る。少しだけ安全だ。
「ロードさん、用意出来ました」
「ありがとう、ハンモックは気持ちがいいから温かいうちはこれで寝たいね」
「そうですね、おやすみなさい」
「おやすみ」
ひき肉になったオーク肉は日持ちしないので、朝からハンバーグにした。
余ったてもしょうがないので全部焼いて、ハンバーガーにした。食パンのハンバーガーだ、食べやすい大きさに切ってバスケットに入れておけば、お昼か食べたい時に食べれる。
6人の朝はシチューとパンだ。6人は食べたそうにしていないので、こちらからハンバーグを出す事はしない。
食べないと決めている人に聞くのも失礼だ。
朝早くに出発して山頂に着いたのはお昼頃だ。
「このハンバーグを挟んだパンが美味しいです」
「美味しい」
アメリアさんとミアちゃんはハンバーガーを気に入ってくれたようだ。
皆は好きな物を食べている。
僕は朝と同じ干し肉だ、ロードさんにはもっと食べる様に勧められているが、そんなに食べれないし干し肉を食べていれば幸せなのだ。
のんびりと風景を見たいたら、僕の前を横切る様に歩いているアメリアさんが石に足を取られて転んだ。
転んだアメリアさんの手からミアちゃんが飛んでいく・・・・崖の向こうに。
僕は落ちている物を拾う様に体が動いてしまった・・・・崖の向こうに。
「ミア~」
アメリアさんの声が聞こえた。
「ユーリ」
誰かの僕を呼ぶ声が聞こえた。
崖下に落ちた僕はミアちゃんと違って崖の斜面に・・・・急斜面に触れないで落ちている、ミアちゃんは急斜面から離れている。
僕は死ぬかもしれないので最後のダジャレを言う事にした。
「布団が吹っ飛んだ」
取り敢えず元気が出たので、急斜面に蹴りを入れてミアちゃんの方に飛ぶ。
重い僕はどんどんミヤちゃんに近ずく。
「楽しそうだね、ミアちゃん」
そうなのだ、落ちているのに笑っている・・・そうだな、諦めてはいけない、もんじゃを食べていない。
「考えろ、今一番しなければ事を」
ミアちゃんをキャッチする事が出来た。飛んでいる時に手をバタバタ動かしたら方向が変わるのが分かった。次はどうにかして速度を落とせばいいのか・・・・取り敢えず、軽くなる事を考えてリストバンドを全部外さないと。
「さようなら、リストバンド」
飛んでいる体勢でやりずらいがリュックからロープを出してリュックに結ぶ。
「一緒に落ちているから片手でも何とかなった、後はリストバンドを入れれば・・・ああ、大きい木が見えてきたよ、時間がない・・・・・落ちるのが速いよ」
リストバンドを全部リュックに入れた、それを折れそうもない枝の向こう側に投げる。
僕達と反対側を落ちるリュック、枝を挟んで同時に置いて行く。
「後は運任せだ、この木から落ちても大怪我だ」
ロープは長くないのでどうなるのか分からない。
「痛い~」
伸びきったロープを掴んでいた手がとても痛かった、僕達が落ちる方でリュックは登って行く。何でだ僕達の方が軽いのに。
「リュックが落ちて来たら危ないぞ」
とっさに危ない事に気が付いた、落ちても危ないのにその後から100キロ以上のリュックが落ちてくる可能性が高い。
速度がだいぶ落ちたので、覚悟を決めよう。
「うおりゃ~」
引っかかっているロープのお陰で、木に近づいて来た。木を蹴ったてロープを放す。
横に飛べたけど、落下しているので、枝に何回も当たって痛い。
「痛い・・・痛い・・・痛い」
木に蹴りを入れた後は枝にぶつかって頭から落ちていた、地面が見えたので手を出して曲げる様に衝撃を減らす。
「折れた、ポッキと音がしたよ、痛い~」
足からならもっと衝撃が抑えられたのに。
「痛い、とても痛い」
「ドスン」
リュックも落ちてきた、少し離れたところだ。
ミアちゃんを降ろして体の周りを見たけど、何処も怪我をしてないようだ。
「ミアちゃんは小さいから何処にも当たらないですんだなんだな、大丈夫かい」
「はい」
無邪気だ。まあ、心がやすまるからこれでいい。そうだ知らせないと。
「ミアちゃんは無事です~、今から山頂を目指すので待っていて下さい」
聞こえたかな。
右手は骨折してるよな。山頂を目指そう、魔物に遭遇したら大変だ。
「さあ、お母さんの所に帰ろう」
「はい」
左手で抱いて走り出す。リストバンドとリュックは落ちた衝撃で使えそうもない。
ミヤちゃんは軽いな。
リストバンドなしに慣れよう、それと骨折も早く治るといいな。
山の麓まで来れた、全力で走ると右手が痛いが、痛いのが気にならない。
ズキズキしているが今は山頂を目指そう。
「ミアちゃん、怖かったら目を瞑るといいよ」
「はい」
返事がいいけど、分かっているのな。
「リストバンド無しの全力登山だ・・・・そこに山があるからだ」
「そこに山があるからだ」
流石だ、意味も分かっているはずだ。
「ダッシュー」
体が軽いけど枝にぶつけた所が痛いです。
どんどん登って行く。馬車だと大変だったけど走ると意外と近いのかもな。
崖から離れた所に座るアメリアさん、それを囲うように皆がいる。
「ミア、ごめんなさい」
「ユーリがミアちゃんは無事だと言ってました」
「そうです、登って来るまで待ちましょう」
ロードさんは励ますように背中をポンポンと優しく叩く。
「さあ、立ってアメリア、ユーリの言葉を信じよう」
全力で走ると馬車だと大変だったのに早く着く事が出来た。
「いや~全力で走ると近いですね」
僕の声に振り返ったアメリアさんにミアちゃんを受け取って貰った。
「ミア、ごめんなさい。もうはなさいわ、絶対に」
「はい」
ロードさんがミアちゃんの後ろから怪我がないか確認している。
「ありがとう、ユーリ」
「いいんです、落ちて行く物には何でも手を出してしまうんです。それが今回はミアちゃんだったんです」
僕は崖から下を覗いて膝を付いた。
「凄いイベントだった、今までで最大の危機だったのに魔法が使えなかった。どんな時なら使えるんだ」
誰かが抱きついて来たので見るとアメリアさんだった。
「ありがとう、ユーリ」
「アメリアさん、お願いがあります」
「何ですか、何でもします」
「痛いので放して下さい」
「キャ~、ごめんなさい、怪我をしたのね」
僕にも状態が分からないけど、ブラ~とした手をアメリアさんに見せた。
「骨折したと思います。初めてなので感動しています。一度は包帯を巻いてみたかったんです」
「包帯?」
「手を怪我した時にまく布の事です」
落ちている枝を拾い、添えてみる。こんな感じかな。
「固定したいので何か貸して貰えませんか、紐とかだとありがたいです」
「おお、すまん。今用意する」
ロードさんが馬車に取りに行て、落ちていた枝を添え木の様に固定してくれた。
「ユーリ、ありがとう。ミアの命の恩人だ」
「気にしないで下さい。次は怪我をしない様に何か策を練ります」
「ユーリ、気を付けるから次はないよ」
そうだな、今度は1人で飛ぶか、パラシュートを作るかな、下山が早そうだ。いや、僕の足の方が速そうだな。パラシュートは遊ぶに使おう。
そうだよこんな時の為に有るんだよ。僕は急い馬車の荷台に飛び乗り、樽の中にある傷薬を付けてみた。
怪我の功名か、使い方はどうでもいいか、自分の傷薬を試せるぞ。
「傷が治っていく、凄いな」
「ユーリ、凄すぎだよ」
後ろでベルンさんが何か言っている。
「何がですか?」
「よく助けに飛べたな」
「落ちる物が有る、それを拾うは当たり前の事です。ただ僕もよく崖から飛べたと思います」
「そうか、ミアちゃんに怪我がなくて良かったよ」
もう驚くのは終わりか、そんなもんだよね。
「あの子は大物です、奇跡の少女ミアです」
奇跡の少女はのんびりと落ちて来たけど、異世界だと速いのだ。




