帰って来た
「とりゃ~」
「あれ危なくないのか」
「本人は落ちる事を考えてないんだろ、なら大丈夫じゃないのか」
「そうかも知れないが、船から船の移動でロープから飛ぶ奴はいないぞ。見事に飛んでいるが」
牽引している船から副長の食事を持ってロープで飛ぶ。
最初は「ア~ア~」と言っていたが、あの掛け声は森の中の限定だと気づき「とりゃ~」に変えた。
「船長お昼です」
「ユーリ、私は副船長だ、間違えてはいけない」
「何を行っているんですか、この船の持ち主の僕が船長はあなただと言えばその通りなのです」
「ここだけにしてくれよ。船長に怒られるからな」
「了解です、船長」
この船には船長と僕を含めて5人が乗っている。
安全のために商船の船長が人員を貸してくれたのだ。
「ユーリ、もうすぐ着くぞ。半日位だ」
最初に乗った船の船長とは違い、安全のために船の行く先と風の確認を絶えずしている。
そんなに忙しい訳ではないけれど、真面目に働いているので好感がもてる。
「楽しかったな、船の旅」
「ユーリは面白いな、けん引されているのに旅か」
「気持ちの問題ですよ、それに僕には船の事は何も分からないんだから、牽引されていてもされてなくても変わりませんよ」
「しかし1人で船に乗っている、それも中型よりも大きい船に1人で不安にはならなかったのか?」
僕は進行方向に視線を向けて今の気持ちを・・・・・・いつもの気持ちを答える。
「船なんだから何処かに着くでしょう、だから不安よりワクワクですよ」
「そんなもんかな」
小さい点が見えた。
「あの点は陸ですか?」
「見えてきたな、カルテアだ」
「甲板に行きます」
ドアを開けて舳先に向かって走る。
「西の大陸はどんな所だろう、面白い事があると言いな」
初めての西大陸設定・・・期待でワクワク。
「海賊船だ、攻めて来たぞ」
「何、海賊船?」
副船長は船から降りたところで、海賊船と言われて驚いている。
「ちきしょう、この船に積み荷を取られたんだ」
「お前は・・・・・副船長だな、何で海賊船から降りて来たんだ」
流石だ、僕の船の船長は知り合いが多いんだな。
「よく分かりませんが、この子が一人で乗っていたので、カルテアに着くまで船の操縦をしていました」
港にいる人達が集まって来た。
「おい、騎士団に連絡だ」
「取り押さえろ海賊だ」
僕の事だよね、変に抵抗すると怪我人が出るから捕まってあげるか。
「この野郎~」
殴りかかって来たので取り敢えず回避。
「避けるな~」
痛いと嫌なので回避。
「子供のくせに」
回避・・・・出来ない、後ろの人に捕まった。
でも、パンチは回避。
「はぅ~」
後ろの人大丈夫かな。
「ごめん、こいつが避けるから」
殴られた同僚を見てみんなが冷静になってくれた様だ。
「待とう、騎士団を」
「また、1泊出来るかな」
「何泊でもいいぞ海賊」
「海賊ではありません、冒険者の見習いです」
「海賊船に乗っていて冒険者だと言えるか」
「ここは騎士団です、僕は騎士団員ですか?」
「ふざけるな、こいつを牢屋にぶち込んどけ」
牢屋に泊まれる日が来たぞ。
「すいません、ホウキと水に雑巾を貸して下さい」
僕のお願いは聞いて貰えなかった。
「やっぱり、臭い」
牢屋に連れてこられて匂いを嗅いだ。
「どうする、コロシアムの選手として出場するか?」
「はい、勝って無実を証明します」
「無実は証明できないぞ、説明は聞くか?」
「大丈夫です、経験者ですから」
「ガラガラ~」
コロシアムに向かう馬車に僕は乗っている。
ああ、僕は凄いぞ、西の大陸で乗った馬車が2回ともこの馬車だ。縁が良いのか運がいいのかどちらだ。お姉さんに逢えたのは、お姉さんが運がいいからだよな。
「今回はどんな魔物かな」
「余裕だな、俺は初めてだから緊張してきた」
「最後まで棄権はしない方がいいですよ、最後の魔物はオークが15体でした」
「15体、倒せるはずがない」
嘆いたおじさんは、馬車の床に崩れ落ちた。だから、1回の棄権は最後にと言ったのに、最初に戦っているんだな。
「久しぶりだな、スライム君。君には勝てない。棄権します」
終わった1回戦が。
「何故だ、配当が表示されない」
「君か、帰っていいそうだ」
「何で、まだ剣を振ってもいないのにそれはないよ~」
「上からの指示だから、さあ荷物を受け取って帰ってくれ」
まあいいか、久しぶりの我が家に帰ろう。
「ユーリ、何処に言っていたのよ、心配したのよ」
「あれ、言って行ったよね」
「まあいいわ、食料は減ったわよ」
「頑張ったね、僕は寝るよ疲れたから」
「おやすみ」
帰って来た僕は、入口でノーラさんとばったり会った、挨拶を交わしたので自分の部屋に行こう。
「どれどれ、食材の在庫はどうなっているかな」
2階の部屋から確認して行くと確かに食材が沢山減っていた。
3階の部屋も階段に近いところから確認して行ったが。
「無いよ、僕の松茸が一番無くならないと思っていたのに」
仕方ないか、頑張ってるんだなノーラさん達は。
船での冒険から帰って来た僕は1階の内装工事をした。
お金が掛からないし、食料がまだ有るので1階の内装を頑張る事にした。
客席は準個室にした。
各テーブルは6人まで使える大きさに、固定した椅子で背もたれが頭より高くした。
背もたれを高くした事で、各テーブルは個室の様になり落ち着いた雰囲気の綺麗な木目に囲まれている個室風になった。
入口から見ると左に受付カウンターで右が階段、カウンターの先に大きい木箱が何個か置かれている様に見える。
準個室風の大きい木箱は人が1人通れる幅が空いている、中に入ると両脇に分かれて座る様になっている。
準個室は立っている人からは座っている人の頭が見える。
準個室は16部屋できた、奥の厨房も道具は無いけど完成した。
「出来た、和風の隠れ食堂。完璧だが、座布団とかは木材で出来ないので今はここまでだな」
5日も掛かったが、作り始めてからだいぶ経ってしまった、道具を返さないといけないのと冒険ギルドの依頼を受けたいので、細かい作業を続ける事にした。
「やはり、面取りは大事だ。僕の手に気が刺さった、未来のお客さんが怪我しなくて良かった」
明日は正面の壁とドアを作る予定だ。
「そんな冗談だったんですか?」
「ごめんね、食料はこの時期に取れないから元々減るのよ、でも冒険者が西に向かい魔物の討伐に向かったのは本当よ、毎年この時期に多くの地域で魔物の大量発生が起きているのよ。冒険者は自分のお世話になった地域に毎年行くのよ。まだ西に行った馴染みの冒険者は帰って来てないのよ」
「この近くは大丈夫なんですか?」
「この辺は騎士団と冒険者がいたからそんなに増えないのよ」
「そうですか、分かりました」
そうなのか、依頼はどうなっているんだろう、掲示板が気になるな。
募集は薬師さんの素材の荷物持ちだけ。冒険者からの依頼の募集は当分なさそうだ。
薬師さんと言えば、僕のいない間に薬師のマリサさんが松茸を沢山持って行った。
勿論名前は忘れていた。『マリサさんと言う方が松茸を全部持って行ったのよ、薬が出来そうとか言って』とノーラさんが言っていた。
暇なのでマリサさんの所に行ってみるかな。
「グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~」
「コネコネコネコネコネコネコネコネコネコネ」
「グルグル~グルグル~と言って、リズムが狂うのよ」
「グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~、グルグル~グルグル~」
「静かにする様にして」
簡単な調合の手伝いをしている僕は声を出したら怒られた。
リズムよくと言われて、グルグルならいいと思ったけど怒られた。静かにか。
女性専用の秘薬は完成していた。
抱き付かれて『愛してる』と言われたが薬の事だった。
マリサさんは魔法が使えるので色々と見せて貰ったが、参考にならなかった。
「ユーリの名前で登録したから売れたらカードに入金されるわよ」
お金か薬は儲かるのか、アメリカの企業が何倍もの値段を付けたとかニュースで見たな。ぼり過ぎだなアメリカの製薬会社は。
普段使うなら安いかも知れないな、松茸は特に安いし。
「薬に名前とか付けるんですか?」
「付けるけど男性には秘密よ、だからユーリにも秘密よ」
「まあ僕が飲む事は無いのでいいんですけど」
襟を掴まれた、うんうんの時間だ。
「辛いのよ、女性は。分かる~分からないよね」
取り敢えずうんうんしているのでこのままでいいか。
「それは返事をしているのね」
うんうんを止めてくれた。
「分からないですけど、辛いとは聞いた事があります」
「そう辛いとても辛い~」
面倒になってきたので他の話題にふろう。
「マリサさんはドラゴンの血で出来る薬を知っています」
「石化解除の薬ね、徐々に石化する現象に効くのよ。伝説のドラゴンか生きていたら鱗が欲しいわね、牙もあると色々と薬が出来るのよね」
カルテドの僕の部屋には鱗と牙が沢山あるな、あれだけは捨てないでと母さんにお願いしてきたから今も有るんだろうな。
鱗を持って来なくて良かったよ、今頃海の底だよ。
「全部合わせたらどんな薬が出来るのかしら」
「マリサさんは甘い、凄く甘い。薬は出来ません、全部飲むとドラゴンに慣れるんですよ。いつか試してみるか、でも血を飲むのは嫌だな牙も喉に詰まりそうだ」
「ねえ、もしかして生きたドラゴンに会った事があるの?」
「まあ、3体ほどが友達です、僕はドラゴンの友達を探しているんです」
「ええ~、3体も生きてるの。凄い、何処に鱗が住んでるの?」
鱗が欲しいのか、ドラゴンよりも鱗か。僕も鱗を7種類、集めているんだよね。何かが起こるそれは素晴らしい事だ。
「この大陸の何処かにドラゴンの事が分かる所ありませんかね」
「そんなの知らない、う・ろ・こ・の方が大事よ」
頭に両手でかき混ぜてりる、マリサさん。
「手伝いますよ」
僕もマリサさんの頭をかき混ぜる。
「何してるのよ」
「お手伝いすれば早く終わるかと」
「終わったわよ」
話しながらも調合は続いていた。
「ねえマリサさん、僕の横にある材料全部を調合するの?」
「するわよ、薬にしとけば冒険ギルドの職員が取りに来るから全部調合するわよ」
なるほど、ギルドに卸しているのか。その手伝いを僕がしているんだ。松茸は取りに来たのに、それ以外だと出かけないんだな。
「マリサさんはお金持ちなの?」
「薬は儲かるのよ、薬師に貧乏人はいない。お金持ちだけよ、ユーリも調合の勉強をする?」
調合か作るのは好きだけど、僕に向いているのかな。出来れば変身薬が作りたいなドラゴンとか亀亀とかになってみたいな。
変身薬の博士になるのもいいか、冒険者兼博士・・・どの世界にもいなそうだな。
でも博士は冒険で死にました。よくある話だ。
博士は遺跡の罠にやられました。
博士は危険だ、目の前のそれらしい人を見ると。小柄、女性的体形、外に出なそうな白い肌、引き込みリ博士だな。
「では、調合を教えて下さい。出来れば変身薬をすぐにお願いします」
「変身したいんだ、ユーリも男の子ね、女の子に変身したいなんて」
変態にチョップをする。
「痛い~」
「変身とは違う生物になる事です、性別を変えても嬉しくありません。ドラゴンです、ドラゴンなら空も飛べるし変な能力も有るから面白いのです。さあ変身薬を教えて下さい」
「そんな研究をした人がいるわけ無いでしょうが、元に戻れなかったらどうするのよ」
そうか、元に戻る薬もいるのか・・・・残念だが人を実験に使うわけにはいかないな。
「諦めました、変身はドラゴンに教えて貰います」
「え、ドラゴンが変身するの?」
「ええ、1体のドラゴンは変身できると他のドラゴンに聞きました」
「鱗はいつ頃はいるかしら?」
話が変身から鱗に変わったぞ。
「カルテドの僕の部屋には鱗と牙が100個位はありますよ、取りに行ってきますか?」
「欲しいけど行かない、私はここで薬を・・・・・・・・・鱗と牙が100個も有るの?欲しい全部欲しい」
ドラゴンの話で盛り上がった、でも、ドラゴンの牙と鱗、それに新鮮なドラゴンの血液。ドラゴンと付くけど部分的なお話だった。
調合が終わるとマリサさんから調合の分厚い本を渡された。
「これは我が家の秘蔵本よ、これは初心者から上級者までの全ての薬のレシピが載っているの、調合の基本から応用まで全て、薬の全てが載ってい秘蔵本なのよ。大事に扱うように」
凄い本を貸して貰い、色々する事が増えた。しかし、この人は大丈夫なのか、そんな貴重な本は門外不出とか難しい言葉がある筈なのに簡単に僕の前に置いたよ。それも頼んでもいないのに。




