お祭りの最終日
お祭り4日目のお昼にお祭りに使う食材の在庫を確認して僕は1階に下りて来た。
「在庫があんまり減っていないな、売り上げは凄く良いと言っていたけど、このままだと買った材料の半分も減らないぞ。一遍に買っても大丈夫だと思ったのが間違いだったのか、それとも一遍に買いだめしても入れられる部屋が在ったのがいけなかったのかな、まあ、一遍に買える方が嬉しいな」
一遍にするのが好きなのだが、物を買う時はやめとこう、破棄するのはいけない。それに現金にしてあげないと・・・・・・お祭りの後に販売する事になるかも。
何か考えないと駄目だな、お祭りの後半にはお客さんも飽きてきたり、街にいる人も減るかも知れない。
そよ風のメンバーは二日酔いにならないで頑張ってくれている。
カーヤさんにソーインさん、工房の皆さんとパン屋さん、みんな頑張っている。
僕も頑張ろう、先ずは出来た寸胴蒸しを運ぼう、カーヤさんの露店の在庫が無くなると困る、急いで行こう。
お祭りを楽しんでいる人達に見ると、露天で食べ物を買った人達が料理が美味しいとか、もっと量があればいいのにとか話している。お祭りなので料金は少し高めの設定にしているお店が多いだろう、でも、僕達のところは、楽しんだ後に料理が食べれる格安のお店だ。ソーイんさんの面白いお祭りが少しは出来ているといいな。
「ソーイんさんとカーヤさんに頼まれなかったら最初の日の夜には僕のお祭りは終わっていただろうな、その後は暇な6日間になっていただろう、二人に感謝だな」
お祭りの間はギルドの依頼も少なそうだ、露店の手伝いが出来て良かったよな。
「キャー、ごめんなさい」
「寸胴蒸しは無事だった。こちらこそ、すいません」
僕は寸胴鍋をしっかりと持ち直して、歩き出した。ぶつからない様にしよう、こぼすぐらいなら僕が飲みたいぐらいだよ。
「グ~」
グ~・・・・チョキで勝ち。
振り返るとぶつかった相手の女性が屈んでいた。
「大丈夫ですか、何処か怪我をしたんですか?」
横からぶつかって来たので寸胴鍋に当たったのかな、その前に手に当たったけど。
「大丈夫です、少しお腹が減ってるだけだから」
屈んでいる女性はお腹が減っているのか、その女性が顔をあげて僕に視線を向けた。
あれ・・・・・・見た事のある顔をしている。覚えるのが苦手な僕が覚えいるから、最近会った人だよな。
「君、コロシアムの出場者の子?」
「いえ、両親はコロシアムの出場者ではありません」
「ごめん、出場者していた子供?」
「そんな過去もありましたね」
「ほら、私よ君に賭けて大勝ちした。覚えてないの?」
「ちょっと待って下さい・・・・・・誰かが僕に勝てと言っていた。あの時の子供みたいな女性か、グフー・・・なんで殴るんですか」
見事に僕のお腹を殴る、お姉さん?。
「今、失礼な事を言ったわ」
「そうですか、ごめんなさい。何泣いてるんですか、子供みたいと言った事ですか?」
ポロポロと泣き出す・・・・・・お姉さんにしとこう。
「違うの、借金は返す事が出来たけど。契約書に遅れた場合には家を譲渡する事になっていて住む所が無くなってしまったの、両親も一緒に街の空いてる場所に寝てるの。仕事もあまりないし、お祭りで仕事も探せない。お腹も減るしつい悲しくて」
なるほど借金の返済は出来たけど家は取られた、仕事がないのにお祭りが長くて仕事が探せない。
「ちなみに、家族に冒険者はいますか?」
「いないけど」
いないパターンか。
「両親は今どこにいるんですか?」
「近くの宿屋の裏庭の井戸の所で寝てます」
最悪のパターンだ。
「まずは、この荷物を置いて来ます。戻ってきますので、ここで待っていて下さい」
「うん、分かった」
仕方ない、お祭りで危ないけど走ろう、井戸から危ない者が出てきたら困る。
「ここが僕の家です、まだ建ててる途中ですけどね」
「変わった家ですね」
素直な意見を言う、お姉さんのお父さん、とても疲れたおじさんだな。
「中に入りましょう、食べ物があります」
「本当ですね、中がまだ作られていませんね」
お母さんも家の感想を、お腹が減っている方が大事なのに・・・・・・お姉さんと一緒でのんきさんかな。
3人は家に興味があるようなので、、僕はツナサンドとモロコダシをお皿に用意する。
「出来ましたよ、こちらで食べて下さい」
「ありがとう」
3人が食べている間に、2階と3階の空きスペースを見るために部屋に向かう。
近い部屋から食材を運んでいるから、2階に食材があれば、3階の部屋は食材で一杯だ。
僕が下に降りて来ても3人はまだ食べていた、歩くの速いからな僕は。待ちましょう食べ終わるのを。
「皆さんは僕のツナサンドを食べました。その代金は労働で払って下さい。この家の3階の食材を2階に移動してください、部屋を1部屋づつ開ける様にして下さい」
「私達だけでするの?」
「はい、お祭りで忙しいので自分で出来ないんです。急ぎませんので、疲れたら休んで下さい。お腹が空いたら、同じメニューですが好きなだけ食べていいです。ここの家には食材が沢山あります」
「美味しい食事を頂いたんだ、頑張ろう」
「そうね、お腹も一杯になったので働きましょう」
「知らない人の出入りがありますが、気にしないで下さい。お祭りの料理を取りに来る人、パン屋さんがパンを持って来ます」
「それであんなに料理があるのね、お祭りかうちも参加したかったな」
僕のお願いを聞いて3人は階段を上がっていった。
本日のお祭りが終わって家に帰ると、お姉さん達家族とそよ風の皆で夕食を食べた。僕の指示にしたがって3階の部屋を開けてくれたお姉さん達には空いた部屋に泊まって貰った。
5日目の朝にとんでもない事に気が付いた。人が増えている、お祭りを見に来る人が増えている。
到着が遅れたのか、元々最終日に合わせているのか、どちらでもいい・・・どちらも合ってないかもしれないが、増えているので料理の追加と3号機の出番だ。
街の中をのんびりと観察していた僕は、慌てて予備の白い雲の3号機を会場に投入した。
食材の移動が終わった3人には、お祭りの手伝いをして貰う事にした。
3階の奥の2部屋が空いたので、そこがお姉さん達の仮住まいの部屋になった。お姉さんは両親と違う部屋を使うそうだ。
「ノーラさんの足を動かすとこの部分が回ります。後は子供が自分でグルグルするので、安全に気を付けて下さい」
「面白い機械ね・・・・・・・わぁ~面白い食感なのね」
「子供は大喜びですよ」
何故かチョップをくらう、別にノーラさんの事を言ったわけではないのに。
「頑張るわ、幾らもらえばいいの?」
「参加料を貰っているので、ノーラさんは足を動かす事と子供の安全を守る事です」
またもチョップが・・・子供と言うたんびにチョップが来る仕組か。
ノーラさんは、面白美味しいと言っていた・・・・・・何ギャルかな、確か女子は変な言葉を思い付くんだよな。
ノーラさんのお父さんのニコルさんは腕相撲のお手伝い・・・・・対戦相手をお願いした。
「どうです、ルールは分かりましたか?」
「分かりました、簡単で腕自慢が優勝をかけて戦いそうですね」
「大会があると面白いかも知れませんね」
1人で腕相撲の練習しているニコルさんは、楽しそうだな。
「力の凄い人の場合は素直に負けて下さい、危ないので」
「そうなんですか、台も壊れる感じですかね」
僕は台を見て壊れないと思った、僕が試したんだからと。
「台は大丈夫ですが、腕が危ないですよ」
「気を付けます」
「今日からカーヤさんと働くカティさんです」
「よろしくお願いします」
「よろしく~、助かるわ、1人だと色々大変だったから」
2人は女性同士なので説明をカーヤさんに任せた。
「では、僕は行きます。お昼はお持ちしますので頑張って下さい」
「ユーリ、ありがとう。私頑張ります」
「忙しくなりますが、2人で協力して乗り切って下さい」
よく分からないけど、凄い混み様なんだよな。
朝の挨拶と準備を終えて、市場で鶏肉を買う為にお肉屋さんに来ている僕は、買い物の注文をこれからするところだ
「鶏肉を50キロ下さい」
「え、50キロ?」
「はい、お祭りの打ち上げパーティーに使うので」
「50キロとは・・・・・何の事?」
重さの単位がないんだったな、みんなが食べそうなぐらいか。
「今のナシで、この木箱を3個下さい」
「そんなに買ってくれるのか、おまけにこれを付けるよ」
「ありがとうございます」
鶏肉が木箱で3個と鳥の手羽先がおまけだ、おじさんは手早く頼んだ鶏肉を用意してくれた、木箱が4個になった。支払いはカーヤさんのカードド払だ。
お祭りの売り上げの全てがカーヤさんのカードに入っているので、気にしないで使おう。
打ち上げをそよ風のメンバーとすると言ったら、それなら全員が参加しないとダメよとカーヤさんに言われたけど、僕にはあの食材以外に用意出来る食材が無い。
なので、大人のカーヤさんがカードから使っていいとカードを貸してくれた。
僕に渡す時の顔はいつもの桔梗屋さんの顔だ、それは『その方も悪よの』だ。
「今年のお祭りは何か変わった事をしているらしいね」
「ああ、なんか面白いんだよな」
「俺も参加したんだ。負けたけどな」
「俺も負けたよ、強いから冒険者だなあれは」
商品を見ながら話している人達の話題は、腕相撲の事かな。
「カードで支払います、お願いします」
「ありがとう、手続きしてくる」
ビールを飲みたい人達が多いので、先に買って運んだ鶏肉は炭で焼く、焼き鳥の予定だ。
他の食材の支払いが終わったので、それを持って家に向かう。冷えるんです改のお陰で前もって食材が帰るのがとても便利だ。
祭りの最終日は客さんが減ってきたので慌ただしく料理を作ったり、運んでもらう事もなかった。
食材も何とか減ってきたが、2階に置いてある食材が少し使われているぐらいだ。
「こうして街を歩いていると、お祭りの特売とかしてるんだな。ここから見える小物屋さんのお見せ前で店主さんがお祭りの事を話しているな」
沢山売れたのかな、嬉しそうだぞ。
「半額なんか初日に全部売れてしまったのよ」
「うちも、安いのから売れたのよ。お祭りだら来てくれる人も多くて大変だったのよ」
「毎年最終日しかお祭りを楽しめないのよね」
半額かそれでも儲けが出たり、在庫がなくなって嬉しいんだろうな。
お祭り特売・・・・武器屋さんに行かないと。
「何もない、おかしいぞ、お祭りで武器が売れるなんて」
「そうか、毎年全部なくなるぞ」
なんで武器屋がお祭りで全部売るかな、どの位安くなっていたかも確認できないよ。
「ああ、毎年売れ残るのがあったな。見るか?」
「見ます、買えれば絶対買います」
そうだこのチャンスしかない。
「ほら、これだ」
カウンターに置かれた武器?を見る。
「これは、パチンコですよね」
「ああ、伝説のパチンコだな」
伝説・・・・凄いな、どんな伝説だ。
「その伝説を教えて下さい」
「毎年仕入れてお祭りの時に捨てている、伝説のパチンコ。今までに売れた事が無い、伝説だ」
魔物を倒せない伝説の武器パチンコ、伝説だ。
「やるよ、どうせ捨てるから。また今年も仕入れるけど」
「いえ買います、お祭り価格でいくらだったんですか?」
「小銅貨2枚だ」
安いな、買えるけど喜んでいいのか、悲しんでいいのか。
「買います、カードでお願いいします」
「いいのか、名刀が欲しかったんじゃないのか」
「お金もないし、腕も磨かないと名刀が使いこなせない。まずはパチンコで何とかします」
「そうか、ありがとう。今年のお祭りは何か違うな」
おじさんにお礼を言って店を出てパチンコを引いてみる。
「中々本格的パチンコだな、値札がついてる・・・・・大銀貨5枚。売れるはずがないよ」
安く買えたのは嬉しい、カップで試し打ちだ。遊んでやる。
「ユーリ、あの機械が欲しいのよ、お幾らかしら?」
お祭りの後片付けをしていると後ろから声を掛けられた、白い雲の機械を欲しいとシーラさんが言ってきた。
「白い雲の機械ですよね、持っていっていいですよ。3台も有るしどこに持って行こうか迷っていたんです」
「あらそうなの、それなら3台とも貰っていいかしら?」
「皆に聞いたら、いらないと言っていたのでいいですよ」
僕の返答を聞いていたメイドさんが後ろを振り返ると馬車に乗せる皆さんが走って来た。
「ユーリは物に執着が無いのね」
「よくぞ聞いてくれました。我が家は作るのが好きな家族なので、作る方が大事みたいな感じなんです。3人の子供も今はお菓子を作っているはずです」
「ユーリは変な冗談を言うのね」
「冒険者と平民の娯楽は冗談ですから」
「そうね、お祭りも楽しそうだったわね」
「この大陸は凄いですよ、お祭りが7日も有るんだから、それも楽しむだけでイベントが無いなんて驚きです」
「それで、ゲームを取り入れたのね」
「そこは、この街の人がいつもと違うお祭りをしたいと言うので、何か参加出来る物がないかと考えて何とか間に合ったんです。最初の案はドラゴンの衣装を2人に着てもらいうねうね動くだけだったんです。却下されました」
「ドラゴンのお祭りね、子供がうねうねするのは見ていて楽しいかもね」
機械を荷車に乗せ終わっるとシーラさんは帰っていった。
「3台も何に使うんだ。白い雲のお店でも開くのかな」
打ち上げは、露店で頑張ってくれた皆、裏方の皆、パン屋さんに調味料屋さん、ノーラさんの家族だ。
料理はサンドイッチ、唐揚げ、焼き鳥、ポテトフライ、サラダの5種類。
それぞれ味が違う物、具が違う物があるので色々楽しめる。
飲み物は冷えた飲み物を用意した。
お酒はビールとラム酒、子供もいるのでジュースにお水。
サンドイッツに合うと思いモロコダシも用意した。
「皆さんお疲れさまです、7日間のお祭りが終わりました。料理はユーリが担当したので美味しいはずです、飲み物もありますが、子供たちも居ますのでお酒は控えめにして下さい。おつかれ~、乾杯」
かんぱいの音頭を取ったのはソーインさんだ。
「「「「「乾杯」」」」」
僕も乾杯をして焼き鳥を焼く。
「みんな、焼けてます。食べてくれないと次が焼けませんよ」
家の外で焼き鳥を焼いている、危ないから。
「わあ、焼き鳥だ。食べてもいい?」
「どうぞ、サーヤちゃん」
「ありがとう」
いいのだ鷲掴みでも、やけどさえしなければ。
塩焼き、タレ焼き、照り焼き風の3種類。
炭で焼けば更に美味しくなる、中も柔らかい。
お祭りには焼きとうもろこしだ。自分の分を焼いていると「食べたい」
レイさんが現れた。
「どうぞ、まだ焼きますから先に食べていいですよ」
焼きとうもろこしがなくなったので次のトウモロコシを載せる。
「私も食べたい」
「分かりました、焼けたら持っていきます」
面倒になってきたのでドンドン焼くことにした。
お祭りで焼きとうもろこしを出さなかったのはゴミが出るからだ。
ゴミの回収をするのが大変だと思いお祭りの定番を出すのを断念した。
外で焼いていると子供のいる家族は帰り始めた。
「焼きとうもろこしをどうぞ」
「ありがとう」
子供たちは喜んで焼きとうもろこしを受け取り帰って行く。
明日仕事のある人達も「仕事があるからな、おつかれ~」と言って帰って行った。
そよ風の皆と親方連中とソーインさんが残り酔っ払いの宴会が1階で行われた。
「食べ物はここに置いとくから好きなだけ食べてね」
僕も眠いので屋根裏に戻る。3階の二部屋はニコルさん一家が寝ている。
これだけ離れていればうるさい声は聞こえない。




