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名刀と少女

最初の依頼から一年が過ぎた。


ドラゴンの鱗が拾えルンルン気分で家に帰るとゲンコツが2発落ちた。


父さんと母さんは僕が依頼でカルテドを出たのは直ぐに分かったが、行先はギルドでは教えてくれなかったらしい。


余りにも帰って来ないので母さんは、心配で心配でしょうがなかったと、父さんがあまり気にしていない様なので、母さんもあの子なら大丈夫だと思うようになったらしい。


僕が依頼を受けて街からいなくなった数日後には、働いてくれる子が来てくれた。


14歳の女の子で名前はシシル、顔は見た人みんなが優しそうな顔と言うと思う。物静かで髪は青色、背は僕よりも高いが、その年の女の子では平均だと思うとシシルは言ってた。


最初に紹介された時、母さんはべた惚れしてて、シシルの良いところを俺に教えまくった。


帰って来た時に宿の受付に居たシシルに気が付いたが、僕の部屋を使ってるとは思わなくて自分の部屋?で寝ているところに、仕事の終わったシシルが悲鳴をあげた後に「なんで私の部屋で寝てるの!?』と言われた。


僕の家には空き部屋がないので、両親は取り敢えず僕の部屋をシシルに使って貰う事にしたが、僕が帰って来ないのでシシルに貸してるのを忘れていた、それで僕がシシルの使っている部屋で寝た。


僕はまた両親に挟まれて寝る日々が続いた。


冒険者を目指す僕は、両親の部屋で寝るのに我慢が出来ないので、もう一つ部屋を作る事にした。監視されている様で嫌だし、部屋を出るのに気を遣う。


シシルが使う部屋は僕が自分の為に作ったので広さが狭い。


最初に作った部屋は、裏庭の壁の1/3位で、ドアの反対側の約2/3は何もない。幅×僕の部屋の横の2倍の大きさが空いている事になる。空いているのではなくて、裏庭と言うのだけれども。


前に建てた時の幅は変えないで扉の開け閉めが出来る最大の大きさを建てる事にした。勿論、周りの建物の人達には了承を得た。


前回の経験を活かし更に強度を高めて建てた。


窓をどうするか考えたが分からないので、シシルに聞いてみたら小窓なら出入り出来ないから安全だと教えて貰い小窓を3個作った。


完成した部屋をシシルに使って貰う事にする。最初からそのつもりで小屋を建てた、出入り口は厨房にした。厨房には強度を強くするために補強をした。素人だけど、安全を考えた。


最初は渋っていたシシルだったけど、俺は最初に建てた部屋に住みたいとお願いしたら分かってくれた。


冒険ギルドの依頼は期限が分かるものだけにした。


最初の依頼みたいに完了までの予定が立たないのは母さんが心配するからだ。


そうそう、自分の事を俺とよく言っていたが、あれは前世の時に俺と言っていて、今更恥ずかしくて僕となかなか言えなかったからだ。最近は僕と気にしないで言える様になった。シュラさんのお陰でもある。


グリュックの皆とは何度か依頼を一緒にした、もちろんポーターとして。


家の酒場にもたまに来てくれるが、それは面白そうな事があって僕にはしてくれる時だ、ほとんどは馴染みの酒場に行っている。


最初の依頼から帰って来てから毎日欠かさずしてるのが筋トレだ。体力作りとも言うが。


剣の素振りも毎日してる。実戦を見た僕はそれが出来る様に、そしてその上の動きが出来る様に一人で黙々と剣を振っている。





少し寒くなってきた、もうすぐ冬が来る。


久しぶりに行こうあそこに。


「おやじ名刀は出来たか?」


「一足違いだな、さっき売れた」


「なに~、誰だ誰が買ったんだおやじ」


「それは言えん」


「そこを何とか、教えてくれ」


「もういいか、久しぶりだな」


「もういいのか暇つぶしは」


おやじさんが先に疲れたようだ。


「それで、何しに来たんだ。まさか、買いに来たのか?」


「名刀は買えないが、なまくらなら買えるからな」


ニヤッと笑う。


「うちのは全部名刀だよ」


「なに、なまくらがないだと」


「それで、どんな剣を探しに来たんだ」


「そうだな、切れ味がよく頑丈で僕が使い易くて軽量かな」


「条件の軽量は材料しだいだから高くなるぞ」


おじさんは、飾ってある剣の中でここからここまでぐらいが条件に合うと教えてくれた。


僕はおじさんが教えてくれた中で一番長いのにした。


「これ下さい」


駄菓子の様な買い方が今の僕のトレンドだ。


「この店の一番にいい剣を選ぶとは流石だな」


「それで値段の方はいか程に?」


おやじさんは考えるふりをしている。


「銀貨10枚でいいぞ」


ほお、銀貨10枚・・・・大銀貨1枚か。


「1枚、2枚・・・・・・・・・・10枚。銀貨10枚、合ってるいかな?」


「ありがとうよ、本当に買ってくれるんだな」


「名刀が欲しいけど、今の自分に合う物もいいからね」


「噂でお前が冒険の依頼をこなしているのを聞いてう嬉しかったなあ。それに、いつか来ると思ってその剣を作り上げた」


「ありがとう、正に今の僕に合う名刀だよ」


「そうか、名刀か」


凄く嬉しそうな顔をするおじさんだ。


「また名刀を探しに来るから、またね」


「今のより、いい名刀を作って待っているよ」


おじさんはおまけに皮製の鞘をくれた。




「寒いよ、誰かいませんか?」


僕は大声で叫んだ。


カルテドの南門から出ると近い森に薪拾いに来ている。背中に大きい背負子を担いで、既に薪で一杯になっている。


足元には足跡があって、誰かがこの辺にいるはずなのに見当たらない。


足跡ぐらいと思うけど小さい足跡なので子供と判断した、こんな場所で迷子?。


「ガサ」


帰ろうかと思いカルテドに向かう街道に行こうとした時、後ろで草を踏み込む音が聞こえた。


女の子が枝を持って、泣いた後なのか目が真っ赤だ。


女の子の前に行き、何でここにいるのか聞かないといけない。


「君はここで何をしてるの?」


「・・・・・・」


「何か困ってる事があれば僕が手伝うよ」


「お母さんが寒いと言うから、薪を拾いに来たの、家には無いから」


僕が手伝いを申し入れたのが良かったのか話してくれた女の子。


「そうなんだ、偉いね。お母さんは家で寝ているのかな?」


「うん、寝てる」


「君は一人で来たの?」


「うん、一人」


お家で寝ているお母さんの代わりに薪を拾いに来たけど迷子になったのか、あまり拾えないので泣いたのかな。


この子を一人にすることは出来ないので、一緒に薪を拾って家まで送ろう。


「それなら、一緒に薪を集めて家に帰ろうよ。送って行くから」


「うん、わかった」


それから急いで薪を集め、持ってきた紐で結わいて僕が持つ事にした。


「僕は力を付けたいので薪を持ちたいんだけど良いかな?」


「うん、いいよ」


紐で結わいた薪を持ち横の女の子の歩く速さに合わせて歩く。


女の子は、お父さんが居なくてお母さんと2人暮らしで、お母さんと薪を拾いに来た事があったので、一人で薪を拾いに来たそうだ。


お母さんは大丈夫なのかな、寝ててくれればいいけど、探しに出かけていると困るな。




「ここだよ」


カルテドに着いて女の子に家まで案内してもらって家に着くと、お母さんはベッドの上に寝ていた。


自分で用意したのか枕元には水の入った桶が置かれていた。


僕は直ぐに火を起こして部屋を温める事にした。


おでこのタオルを新しく濡らして載せて家を出る。


女の子にはまた来るからと言って、急いでお薬を買いに向かった。


食べ物がないと女の子も困るので、料理の材料と出来てる焼肉を買って女の子の家に戻った。


食欲があるか分からないので、野菜スープと肉入りシチューを作る。


女の子には焼肉を食べてもらい、お母さんに野菜スープを持って行く。


「すいません、起きてもらえますか?」


僕の声に目を開けて僕に視線を向ける女性、うん、女の子のお母さんだな、似ている。


「あなたは誰ですか?リカは」


あの子の名前はリカちゃんか。


「僕はユーリです、お嬢さんのリカちゃんは隣の部屋で食事中です。すいません、起きてもらったのは野菜スープが出来たので食べて貰って、お薬を飲んでもらいたいからです」


「でも、お薬を買うお金はありません」


「とりあえず食べて下さい」


不思議がっていたけど、お腹が空いているのか直ぐにお椀を受け取ってくれた。渡された野菜スープを少しづつ口に入れていくリカちゃんのお母さん。


「事情を説明します、食べいて下さい。大森林で薪拾いをしているリカちゃんに会い事情を聞いたらお母さんが家で寝ていて、部屋が寒いので薪を拾いに行ったそうです。僕は力持ちなので薪を持って訪問させてもらったんです。リカちゃんのお母さんが寝ているのでお食事とお薬を買って来ました。薬を飲むために食事をしてもらっています」


お母さんは大体の事情が分かりほっとしている様だ。


「もし食事とお薬のお金を僕に返したいなら、出世払いでお願いします」


「出世払いですから?初めて聞く言葉です」


「出世払いとは、いつか凄くなってお金に余裕が出来た時に、ほら私は偉くなったんだぞ、今はお金があるんだぞと余分に返す事です。もちろん期限もありません」


「いいんですか、その出世払いで?」


「いいですよ、お薬は僕が勝手に買ってきただけなので、お食事代を返して下さい」


「ありがとうございます。ありがとう」


お母さんの目に涙が、ごめんもらい泣きしそうなので隣の部屋に行こう。


「僕リカちゃんに挨拶したら帰ります」


「あのお名前は?」


「冒険者見習いのユーリです」


リカちゃんは焼き肉を食べてお腹が一杯になったのか眠そうにしていた。


「リカちゃん、病気のお薬があるから、食事の後に飲むようにお母さんに言ってね」


「は~い」


明日も薪を拾いに行こう、リカちゃんが取りに行かないで済む様に。



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