食事付きの募集
柵の内側で待つ僕に声を掛けてくる人がいた。
「君、コボルトに勝てる?」
コロシアムの場内に鐘が鳴った。会場のコボルト1体が、キョロキョロしている。
掛けられた声に振り返ると僕よりは年上の女の子・・・女性、まあ女子がいた。
「僕に賭けるの?」
「倍率がいいのよ。5対13で、君が13倍なのよ」
ここから見える看板ボーイの手の看板に13と書いてある。13倍か。
「僕は負けないよ、負けたら・・・どうなるんだ、忘れた」
「奴隷落ちか、牢に戻されるのよ。大丈夫なんでしょうね」
「賭け事は子供がしない方がいいよ」
目が怖い、睨みをきかせている女子の頭に角がある感じだ。
「18歳よ」
この異世界は15歳から大人だ。お酒も15歳からだ。
「最後まで勝つけど、判断は自分でしてね」
お姉さんと呼んでいいのか迷うな、歳が近かすぎる。あれ、どこかに行ったぞ。
場内に2回目の鐘の音が鳴り響いた。
「締切が来ました、コボルトに賭けた人の負けが確定しました」
「うるせいぞ小僧。負けろ」
「応援ありがとう」
手も振っとくか。
「負けないでよ」
お姉さんが戻ってきた。
「負けか・・・・最後に負けたのはスライムだ、これからは勝ち続けるぞ」
あれ、この世界の負けは死んじゃうよ。スライムが最初の負けで、最後の負けにしたいな。
「そんなスライムに負けたの・・・・棄権したのね。まだ実力が分からないわね」
お姉さんは1回戦にはいなかったんだな、僕の戦いぶりを見てほしかったな。
「カ~ン」
鐘が鳴ったぞ、2回戦の始まりだ。そうか、この柵から出ないと。
「コボルトさん、こんにちは」
僕は作戦体力勝ちを選んだ。広場の大外を逃げるだけ。
「やめてくれ、コボルト。追い付いて来るな」
コロシアムはシーンとしているので僕の声は皆によく聞こえているだろうな。
「ダメだもう走れない、逃げ切れないのか」
僕に攻撃しようとしていたコボルトは倒れていた。もう、動けないようだ。
「カ~ン」
「おお、僕の勝ちだ、やった~」
僕の体力の勝ちだ。
「まあいいは、勝ちは勝ちよ」
笑顔の18歳の女性は「次も逃げなさい」と言って、その場で跳ねている。
背が低いなお姉さんは、年齢を水増ししているんだな。
「うわ~、ゴブリンだ。もう走れない、疲れたよ」
音がしたので振り返るとゴブリンが倒れていた。
「カ~ン」
お疲れ様です、ゴブリン。
「次もお願いよ、逃げて」
お願いされたので次も逃げる予定。
コロシアムのお客の声援が減ってきたな。僕に賭けてない人が多いんだろう。
「グール、君は今までの魔物の中で一番頑張ったよ。まだ全力で走っていない僕に追い付ける魔物がいるのかな」
倒れているグールに近づくと人差し指で指して「残念だ、体力を付けろ、走り込みが足りない」と言ってやった。
「いいよ君、次も逃げてよ、最後なんだから頑張るのよ」
お姉さんはまた、跳ねている、もしや、高くジャンプする練習か・・・・・・僕も飛んでみたいな。
「どうですか、いい感じにお金は増えてますか?」
「最後次第ね」
なぜそんなにお金がいるのかな、僕なんか返してもらえても小銅貨4枚だ。
「ふふふ、貧乏では負けないぞ」
最後の魔物が準備中だ、結構な時間が経つている。
「賭けて来たわよ、300対5で配当がいいのよ。嬉しいこれでお金が用意できた」
何で最後なのにそんな配当なんだ。それにお金が用意出来たとお姉さんは言うけど、まだ終わってないのに。
「もしかして最後はあの大きな亀かもしれない、大きいし甲羅がすごく硬いのかもしれない。友達なのに戦わないといけないのか」
「君、ここに主様は入れないよ大きいもの」
主様か、凄い友達が出来たな、あの大きさよりも大きい友達は出来ないだろうな。
「確かに入れない、いや空からなら・・・ハマってしまうかも」
「カ~ン」
魔物が入ってくるぞ、オークだ。最後はオークか・・・・・10体はいるよな。
「私のお金が、見てから賭ければよかった。無理よ15体のオークなんて」
お姉さんがしゃがみ込んで頭に手を載せて嘆いているぞ。
「君は、バカだ。逆に運がいいんだ」
「何でバカで運がいいのよ」
「あのオークの数を見て僕に賭けれたかな、賭けれないのならバカだ。既に賭けているのなら運がいいよ、僕は勝つからね、僕も走り回って勝つのもいいんだけど、コロシアムのお客に恨まれたくないから剣で戦うよ」
「君がバカよ、オークを15体も倒せるはずがないでしょう、まだ逃げ回った方が可能性があるわよ」
「おめでとうございます。君と話すのはこれで最後だ。帰る時は気を付けてね。お金は計画的に」
「カ~ン」
「まだ、締め切りだった。換金出来たら気を付けてね、ここにいる人全員がはずれるんだから、君以外の全員が」
「まだ言ってる、そこまで自信があるんなら勝ってよ」
少しは元気になったかな、立ち上が手を振っている。
「カ~ン」
やけくそか、鐘が鳴る鳴る・・・・・・面白い事が思い付かないぞ。
「誰かが、待てないみたいだ、鐘が早いよ。じゃね~お姉さん」
全力で行く。剣で戦えるのが最後だと思って全てを出し切る。
「行きます、食べれる様に仕留めます」
一番近いのからどんどん行きます。
「ふう、2分位は掛ったかな」
15体のオークを食べれる様に倒した。おそらく、主催者さんも喜ぶだろう、今日の夜はハンバーグだな。
全てを出し切った僕は、両手の剣を地面に突き刺す。
「嘘、あんなに凄いなんて・・・・・やった~。お父さん、お母さん」
あのお姉さんは状況が分かってないな。
「おじさん、急いでよ、僕は忙しいんだから」
おじさんを急かして、ギルドカードとお金を返して貰った。
急いでいる僕は、コロシアムの外から中に入ってあのお姉さんを探した。
換金出来て嬉しいお姉さんは、後ろから来た人にぶつかられた。
ぶつかった人と違う人の手が、お姉さんが持っている鞄を掴む瞬間に「おじさんも死にたいのかな、今なら無料でしてあげますよ」
「ごめん~」
逃げていきましたね、誤ってくれたから、許してあげましょう。
「あれ君、何してるのよ」
「暇なのでお姉さんに付いて行こうと急いで来たんだ」
「あげないわよ、お金は」
「あまりお金には興味がないんだよね」
何回もあげないわよと言うお姉さんの家の前まで一緒に来たけど、お金を狙っている人も怪しそうな人もいなかった。さっきの人以外に狙われてないようだな。あのお姉さんは18歳でも子供です。
そうだ、仕事を休んでしまったんだ、誤りに行こう。
「聞いたよ、間違えで捕まったんだってね。今日も仕事して行くかい」
情報が早いな、既に潔白が証明されているのは何でだろう?。
「今日は、お金はいいから手伝ます。やる事が少なそうだからね」
「そうかい、悪いね」
お店の周りの掃除は、野菜を売ってるから葉っぱのカスや野菜の欠片などが落ちる。市場の露天の皆は、定期的に自分のお店の周りを掃除しているけど、残っていることが多い。
露天台の商品の品出しは多く売れそうなのは山積みの大きさが違って、売れない物は少ない山になっている。露天台の野菜は補充するほど減っていないようだ。今日は掃除だけでいいな。
「おばさん、終わった。明日また来るね」
「ご苦労さん」
「見つけたぞ証拠を、あの子は犯人ではなかった。急いで牢屋から出してくれ」
若い騎士は「あの子ならコロシアムの選手として出ていきましたよ」
「そんな、無実の子供をコロシアムの選手として送り出してしまうなんて」
証拠を掴んできたおじさん嘆く。
「それが、勝って街に戻って行きましたよ」
「え、ええええ~」
ギルドの掲示板前で何かお金になる依頼はないかと1枚1枚よく見ている。横で見ているお姉さんは凄い、軽装で筋肉がムキムキだ。
「何見てるんだい」
見ているのを気づかれてしまった。
「立派な筋肉ですね、何かおやりになっているんですか?」
「ああ、ありがとう。魔物をバキバキに痛めつけてるよ」
「なるほど、僕も頑張ります」
「ああ、程々にな」
ボディビルダーの女性の人みたいだな、この街の冒険者の女性はこの人みたいな体つき人が多いな。
筋肉を褒めると喜んでくれる人達だ。声も低い声を出している。
お姉さんがいなくなってので隣の掲示板を見よう。
討伐以外で僕に出来るのは・・・・・・・荷物持ちのポーターだけだ。
手紙は定期的に商人か寄り合い馬車が運んでいそうで、ギルドの依頼には無いな。
護衛は武器がないから出来ない、ネズミさんはもういいでしょう。
色の違う掲示板が有る、どうやら、募集用で人の募集の専用の掲示板のようだ。これだと、分かりやすいな。通常の掲示板は、魔物とかの討伐に捕獲、薬の材料とか何か物の納品の依頼書が貼られている。
色の違う掲示板には、ポーターとパーティの募集が何枚の貼られている。
荷物が何もない僕はパーティに入るのは迷惑だ。荷物持ちのポーターなら出来るかも。
迷うな、こんなにあるんだ。カルテドだとポーターの依頼は2個位しかなかったな。
西の大陸は冒険者の人口が多そうだから、募集も多くなるのか。
「おおおお、お食事が3食付きだ、これいいかも。お腹が満たされる」
「おいおい、食事付き位で騒ぐなよ」
「おじさんはうるさい。お金がないんだ、1日1食しか食べてないの僕は、3食付きで何が悪いの1000文字以上で答えてよ」
「すいません、1000文字はきついです」
そうだな、僕も1000文字も感想文が書けないよ、遠足の感想文は400文字以内で終わるんだよね。
「あれ、3食付きだと私のパーティーの募集かな」
美人で背が高いけど、やっぱり体は筋肉さんだ。
「どれどれ、どれを見てたのかな君は」
どれかな、これか。
「この3食付くの募集です」
「私の出した募集だ、よろしく。名前は?」
「ユーリです、よろしくお願いします」
「私はレイよ、覚えやすいでしょ」
「そうですね、それでいつ出発するんですか?」
レイさんはキョロキョロと周りを見た後にテーブルにいる人を指した。
「あそこに私のパーティーのメンバーがいるのよ、行くわよ」
あそこの人いい響きだ。
男性2人女性1人の3人がテーブルでビールを飲んでいた。
ここのギルドは酒場も兼ねているのでテーブルで飲んでいる冒険者が結構いる。
男性の1人はカッコいい人で体はマッチョ、もう1人の男性も体はマッチョで髭を生やしているが若そうだ。女性はマッチョで整った顔をしている。
どうしてこんなにマッチョさんが多いんだろう。
「レイ、何してたの、飲もうよ」
「もう、荷物持ってくれる子が見つかったのよ」
既に酔っている見たいだな。
「その子なの、小さいけど大丈夫」
「さあ、でもなかなかいないんだから、この子でいいのよ。彼女はワンダー、この子はユーリ、あの2人は覚えなくていいのよ」
「なんでだよ、イケメンのボードンだよろしく」
「それじゃ、俺はベル、じいと呼んでくれ」
「おじい、その髭は何?」
「違う、じいだ・・おは、いらない」
酔っているんだね、皆さんは。
「僕はユーリです、募集を見て3食付いているので決めました。よろしく」
「そうなのよ、わ・た・し・が・・・提案した、3食付きのお陰でポーターが見つかったのよ、えへん」
「そうだっけ、忘れたわよ、そんな事」
「まあいいじゃないか、リーダーのレイが嬉しそうなんだから」
「そうだな、嬉しそうだ。だからビールを奢れ」
「奢らないわよ、それに準備して出発よ」
この人達の行くのか、こんなに酔っているんだから、すぐに行けないよね。
「明日だ、明日行こう。今はビールが飲みたい」
「僕も明日がいいと思いますよ、この3人はもう旅に出れない程に酔っています」
「そうかな、頑張ればなんとかならないかな」
「レイさんと僕が頑張るだけで他の人は頑張れませんよ」
レイさんはメンバーを見て「明日は絶対に行くわ、準備は午前中にして午後には出発よ。ユーリ、昼までに準備しとくからギルドに来てね」と言いました。大丈夫なのだろうか。
「分かりました、お昼にギルドに来ます」
酔っている皆さんと別れて空き地に戻ろう。
夜どうするかな、明日のお昼ご飯は付くのかな・・・お金が持ったいないから我慢だ。




