Mythos2
翌日俺達は街のはずれにある古いキャンプ場、秋葉原直通の新路線が敷かれた都市中心の喧騒から離れた静かな雑木林にいた。
その開かれていない奥、鉄の扉で封鎖された洞窟入り口に我々は立っていた。
前日アンネ及びアナトリアから聞いた話によれば、男と女「サングレ」と「セラフ」は必ず俺達の役に立つから今のうちに親睦を深めておくように、とのことだった。
とは言っても彼らとアンネ、そして俺の四人。仲良くキャンプにバーベキューに来た訳ではない。
目の前の錆び付いた鉄の扉には風化しかかった南京錠が掛かっていた。
「あれ?アナトリアのババアは?」
「ババア!?」
俺は驚愕してアンネの方を見た。
「…冗談だよぉ。今日は来れないから四人で行けって。おれたちと違って社会人だからな。」
…今日は平日。中学校の夏休みはまだまだ先だった。
「それでこの暗くて臭そうな穴の中に皆でカミカゼ・トッコウって訳?」
男にしてはキザったらしいハイトーン・ボイスが岩壁に反響して聞かれた。
自称ジャスティス・ヒーロー、サングレは洞窟を塞ぐ扉や辺りをキョロキョロ見回していた。
耳と口には小型のイヤホンとスピーカー、セラフも同様に身に付けていた。
アナトリア女史が手ずから渡したそれは俺達の会話を逐次翻訳し、通常のコミュニケーションに支障はなかった。
全く持っていかがわしいフィクション的色物だった。
「中暗そうだな。入って見るか?」
駅前で落ち合ってから初めてセラフが口を開いた。
「野中藍ボイスじゃん………!!!!!!」
俺は彼女に飛び付いた。
反応した女の鉄拳でみぞおちを深く抉るように突かれ、俺は崩れ落ちた。
「おぇぇぇ…」
「何やってんだよ!?」
さしものアンネも狼狽した様子で手を差しのべた。
俺は構わず振り払い、セラフに再び向き直った。
「まどか☆マギカ見てました!!」
「ハァッッッ!?」
「お願いします! "一人ぼっちは寂しいもんな"って言ってー!」
後ろから首根っこを捕まれ、振り替えるとサングレが俺より10センチ高い位置から俺を見下ろしていた。
外人の顔って怒ると怖…!
と思った瞬間視界が黒になった。