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ヨモツヒラサカ~神無月~  作者: ブロンズ像
2/7

Mythos

お楽しみください。

俺は平底フラスコやアルコールランプが乱雑に並ぶ理科室のテーブルの前にいた。

「尚満君、ちょっと手伝って。」

この中学校の社会科教師(理科ではない…!)ナジム・アナトリア女史が、炊飯器くらいの容器の中で何かを必死こいて練りながら命令した。


「さっきから何やってるんだよ?」

俺はさじを受け取って聞いた。

「世界の変化について。その説明を。」

彼女はこちらをまっすぐに見据えて言った。

深夜11時に明かりのついた中学校の理科室で、妙齢の女性と二人っきり。しかも共に意味不明な実験に手を染め。

危なすぎる絵面だと思った。


「これをかき混ぜればいいのか?」

俺は腰を下ろし、さじを持って容器に向いた。透明な半液体状のものが詰まっている。

「…この物質にはある性質があります。マイナス200℃近くまで一気に冷やし、その後1日以上の長い時間をかけてゆっくり冷ます…そのようにしてようやく結晶化します。」

「それの下準備って訳?」

俺は力を入れて水飴みたいなそれをかき混ぜながら言った。

「そう。完成したものがここにあるわ。」

「あんのかい!?」


アナトリアは冷蔵庫からフタがついた容器を持ってきた。

「中を見て。」

…ぶつぶつ言いながらも俺はフタを開けて中を覗きこんだ。

俺が先程までやっきになってかき混ぜていた液体と、ほぼ変わることのない透明な物質があった。

「何も変わってないじゃん。液体のままだし。」

フーッとため息をついて彼女は言った。

「…そう。何回同様の実験を行ってもダメ。私の手法は完璧。そこに異論ははさませない。学会でも今騒ぎになってて世界的な問題になりつつあるわ。」

「永久不滅だと思われていた物理法則がこわれはじめているのよ…」

…たいそうな話だと思った。


背後で空気が爆発したようなバァンという音が鳴り響いた。

アンネ=ベーゼが男女二人を連れて立っていた。

「いつ入ってきたんだ…?」

俺はアンネの後ろに控えた男と女の姿をあらためた。二人とも西洋人と見えた。

男の方は明らかに場違いな赤黒のチェック柄のフードつきマント。

女の方は法衣のような純白の衣装に派手な長い赤毛だった。(関係ないけどすごい美人だった)

どちらも二十代、女の方は十代にも見えた。


突然の訪問者に驚いていると男の方が、アンネの横をすり抜けてまっすぐ進んできた。

にこやかに笑い、手を差し出してきた。

「Nice to meet you. I'm Sangre. A hero on New arkham city.」

「お、おう…。」

俺はたじろぎながらも手を取った。

何となくだがこの場にいる日本人が俺だけって凄いな…それにしても…

見事なまでにチープな英文だった。

急ごしらえみたいな。


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