表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/364

おもしれー女

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/


「イフの死に関係しているのは、貴女のほうだったのね、アンジー」


 構えていた痛みはいつまでも襲ってくることがなく、代わりに聞こえてきたメイリーさんの声に、耳を疑った。


 メイリーさんはアンジー嬢へ斧を向けていて、彼女を睨んでいる。


「ずっと疑問だった。ミスティア・アーレンに、どうやってあんなにも心の優しいイフが狂ったのか。家族まで焼き殺してしまえたのか。ミスティア・アーレンと話すたびに、その疑問は濃くなっていった。その代わりに、どんどん思うようになったことがあるのよ」


「ふうん、どんな?」


「アンジー、貴女がイフを追い詰めて、焼き殺したのでしょう」


「私? 私のせいだっていうの?」


「ええ。貴女はいつだって聡明だった。公爵家から、三人を連れ出るくらい簡単にしてみせた。こうして、爆薬を教室に持ち込むことだってできた。ミスティア・アーレンが彼を誘惑したことよりずっと、貴女が彼を精神的に追い詰め殺させようとして、失敗したから私にさせようとしている、そう考えたほうが、ずっとしっくりくるのよ! アンジー!」


「ふ、ずいぶんヒロインらしい目つきになってきたじゃない。最初からそういう顔をしていれば、イフも貴女を好きになったんじゃない?」


 メイリーさんの苦し気な問いかけに対して、アンジー嬢は鼻で笑い、口角を上げる。


「悪いけれど、私は彼にミスティア・アーレンを殺してなんて、一度も頼んでいないわ。貴女が好きな彼は、そこにいるバグまみれのアーレンの娘を好きで、ただ行動しただけでしょう? 私は、アーレンの娘を殺してこの世界をリセットすれば、シナリオは正されると嘘をついただけよ?」


 そのとき、クレセンド嬢がひどく追い詰められていたことを思い出した。


「もしかして、クレセンド嬢を追い詰めたのは──」


「追い詰めた? 人聞きが悪いわ。このままだと死ぬしかないと、ゲームのシナリオを教えてあげただけ。半信半疑だったけど、崖から人が落ちるのを見たら、私のことを神様みたいに扱ったわ。でも、神様が前世を思い出したのは赤子の頃──十五年も前だから、ちょっとシナリオが変わっていても、仕方ないわよね? 殺人鬼を脱獄させるとか、別のゲームと混ざっていても」


 アンジー嬢はクレセンド嬢に、自分を悪役令嬢であると誤解させ、レイド・ノクターを破滅させないと自分が破滅すると誤解させるように、イフという生徒にも同じことをしたのだ。


 普通だったら、絵空事だと思って信じないかもしれない。でも、アンジー嬢も私も、ゲームの知識がある。そのゲームに出ている人物なら、この一年の未来を部分的になら言い当てられる。不安を煽り、言いなりにしていたということだ。


「まぁ、本来攻略されると設定されていたのは、イフ自身ってわけだったけど」


 私の隣に立っていたメイリーさんが、息を呑んだ。手に持っていた斧を握りしめ、先ほどよりもずっと速くアンジー嬢へ駆けていく。


 しかし、すぐに何者かに腕を捕まれ、そのまま地面に伏した。


「おっと、まだお楽しみはこれからだ。飛び入りで邪魔するのはやめてくれよ」


 メイリーさんを取り押さえたのは、クラウスだった。目を見開く私に、彼はいつも通りの道化じみた笑みを浮かべる。


「ようミスティア、相変わらず間抜けな顔してんなぁ」


「なぜあなたが、ここに……?」


「なぜって、お友達が……友達は友達にゲロマズミートパイなんて食わせねえか。あれだ、共犯者が夢を叶える瞬間だから、はるばる見に来たに決まってんだろ? 野次馬だよ、野次馬」


「どうせ今年の夏には好きになるんだから、今から試作品を食べてくれたって変わらないじゃない」


「それは絶対お前の妄想だろ」


「ふふ、夏が来たらわかるわよ」


 アンジー嬢は、クラウスを見て笑っている。クラウスは、彼女に協力していた。たしかにクラウスの協力があったのならば、人の流れや思考を把握できる。


 ゲームでのクラウスは、情報屋の役割を担っている。情報を仕入れるのは、当然影を潜めることも必要になってくる。


 だから彼の協力があれば、衛兵やノクター家が探しても犯人を突き止められないほど巧妙に、隠されたルートや情報網を使って、事件を起こすことができるということだ。


「いつから」


「この平民女の素性が暴露されたことあったろ? そんときにこいつから接触してきたんだよ。おもしれー女だなと思って話聞いてたら、お前からノクター奪い返すのが目的って聞いて、なおのことおもしれーと思って」


「つまり……アリスの素性を黒板に書いたのは、クラウスへの、アピールのために……?」


「そうよ、普通に接触をとっても、きっと話すら聞いてもらえないと思っていたから」


「だいせーかい!」


 アンジー嬢に向かってクラウスは拍手をしている。


 周囲は、未だ武装している男たちに囲まれ、アリスもイヴァライト公爵も眠りについたままだ。私が囮になって逃がす作戦は、全く通用しない。

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
正直に言うね、クラウス君。 君ってば全然面白くないぜよ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ