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強制的スポットライト

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/


「じゃあ次は、

 文化祭についての出し物の話だな。

 学級長、前出ろ」


昼食を終えたホームルーム。

前に立つジェシー先生がそう言うと、レイド・ノクターが立ち上がり、黒板へと向かっていく。


文化祭。


学校行事の中で、体育祭と双璧を成す学校行事だ。


体育祭で……あの失敗はあまり思い出したくないが、体育祭では恋愛イベントは無かった。


が、文化祭では恋愛イベントというものがしっかり存在する。


文化祭、アリスのいるクラスは劇を選択し、演目は、かの有名な物語、灰かぶりを行い、

アリスは大道具係、レイド・ノクターは監督、

ミスティアは監督補佐という係と言う名のレイド・ノクター張りつき係として働く。


そこで、レイド・ノクター監督と大道具係のアリスが、少しずつ交流を深め……というシナリオ、というわけではない。きちんと大きな山場というか、最早事故がある。


文化祭当日の午前の部公演中、ヒロイン役の灰かぶりと、ヒーロー役の王子様のシーンで、

頭上に設置されていたシャンデリアが落下し、

軽い怪我をしてしまう。軽い怪我といえど、怪我は怪我。紛れも無い大事故だ。


普通なら、劇は中止になり、下手したら文化祭自体中止になるだろう。


しかし、舞台はどうかしているきゅんらぶ世界。劇は決行され、代役を立てることになる。


 そこで、衣装係をし当日無職と化していたアリスがヒロインに抜擢され、王子は当然と言う流れでレイド・ノクターが選ばれる。


つまり事故はアリスとレイド・ノクターが、急遽選ばれる為の布石だ。そういう事故起こす前に、アリスとレイド・ノクターを、初めから灰かぶりと王子様にしてくれ、と思わなくも無いが、ミスティアが存在する限り、学級会でアリスが灰かぶりになれることは一生無い。事故でも起きてパニックになるか、ミスティアが消失しない限り、アリスは灰かぶりにはなれない。

 

 確か代役が立てられたとき、ミスティアは不在だったし。


 監督補佐は……論外として、私には絶対にやりたくない役がある。それは、灰かぶりの継母と姉だ。


 演技は大根だが、奇跡が起き、平均的にできたとして、

「灰かぶりを疎む演技、実は本当にアリスを疎んでいるから上手くできたんじゃ?」

なんて思われたら一巻の終わり。下手でも駄目。人並みに出来ても駄目。最悪の四面楚歌。まさに詰んでいる。


「出し物は灰かぶりに決定として、

 配役を決めなくてはいけないね」


 文化祭の出し物の取り決めの行く末を見守っていると、やはりと言うべきか、劇、そして灰かぶりに決定した。


レイド・ノクターは、灰かぶり、王子、魔法使いなど、主要と思われる配役を黒板に記していく。


「肝心の主役、

 灰かぶりから決めようか。誰か、

 是非とも灰かぶりをやりたい人はいる?」


 しん、と静まり返る教室。


 灰かぶりを演じる志願者は一人もいない。ゲームでは、自薦他薦でも決まらず、くじ引きになっていた。


 いいぞ、このまま、このままで……。


「立候補はでないみたいだね、

 なら他薦でもいいよ」


 よし、来た! 他薦タイム!


 ここで手を上げて、私はアリスを推薦すればいい。この時期にアリスと関わりを持つのは危険だが、初めからアリスを灰かぶり、レイド・ノクターを王子にしてしまえば、その分二人の仲は接近するし、照明やその他もろもろが落下して生徒は怪我をしないし、灰かぶり、王子として出るはずだった予定の生徒たちの苦労が無駄にならなくて済む。


「僕はミスティアがいいと思うんだけどどう?

 やってくれないかな」


 嬉々として手を上げようとすると同時に、レイド・ノクターが笑みを浮かべ言い放ち、クラスメイトの視線がこちらに集中する。


 まさかの指名。いつまで経っても候補者が出ないことからの苦肉の策だろうが、普通に無理だ。何故一つ隣のアリスを指名してくれなかった。


「あれ、やるつもりだった?」


 他薦の為に中途半端に上げていた手を指摘され、慌てて引っ込める。


「いえ、私は……」

「僕はミスティアが適役だと思うんだけどな」


 いやなんなの? 何で灰かぶりを推す? 

 何で表舞台に引きずり出そうとしてくる?

 何を考えている?


 意味が分からない。


 確かに私は五年前にノクター家で暴れ出したことがあった。突如網によって引き上げられ、

陸に舞い降りた魚介類のごとくのたうち回った。それによって羞恥心が無い、あるいは人前に出ても平気で、度胸に溢れた人間だと思われているのだろうか?


 でも、それと同時に、私は学校に入学し、隙あらば教室にいない生活を送って来た。人前に出たがったりすることとは、真逆の生活だ。同じ教室にいるレイド・ノクターは知っているはず。むしろ知らなければおかしい。


「いえ、私はそういうことはちょっと……。

 それに、私は大道具希望なんです」


 お断りの雰囲気を全面に出す。

というか、私にはやらなければいけないことがあるのだ。大道具の係になり、当日シャンデリア落下を阻止する重大な責務がある。クラスメイトの視線が集中したついでに、ここで決めよう。私は出来る。アーレン家は大きい。その権力を今ここで使おう。


「私は、

 アリスさんが主役に適任だと思います」


 そう言うと、クラスメイトたちがざわめく。

いわば、灰かぶりのたらい回しが起きようとしているのだ。けれど回させない。私がここで決める。


「アリスさんは純朴で、

 物事に対してひた向きに取り組みます。

 授業中、分からないことがあれば、

 素直に尋ねる姿勢。

 出来るようになっても、

 己の力を過信せず、努力を重ねていく。

 そんな人柄は、

 明るさと希望を失わない灰かぶりと、

 まさに、まさに共通しています。

 私は、アリスさんならば、

 人々に明るさと夢を与える灰かぶりを演じ、

 文化祭を成功させることが、必ず、

 必ず出来ると思います」


 要約すれば、

「主役はアリス以外考えられないよ」だ。

基本的にクラスメイトはミスティアの、

アーレン家の意向に逆らえなかった。

ここでアーレン家の令嬢である私が、

「アリス以外考えられないわー」

みたいなことを言えば、アリスに確定する。


 隣のアリスの様子を見ると、アリスは瞳に涙を浮かべ始め、大きな音を立てて椅子から立ち上がった。


「私やります! 灰かぶり!

 演じて、人々に明るさと夢を与えます!

 頑張ります!」


 アリスはやる気に満ち溢れている。


 もっとこう、「わ、私で良ければ……!」と恐る恐るな勇気を出す姿を想像していた。


 でも、やる気なのはいいことだ。レイド・ノクターの方を見ると、何故か冷ややかな目でこちらを見ている。


 理由も分からず恐ろしいが、今こそはその瞳に屈してはいけない。私はここで完全なる勝利を収めなければならないのだ。


「そして、王子様は、

 レイド様が最も相応しいと思います」


 私がそう言うと、クラスメイトの皆は一斉にレイド・ノクターへ視線を集中させる。さっきとは、真逆の図式。推薦を断っておいて人を推薦するなんて、最早因果な復讐のようである。

 

 が、レイド・ノクターを王子様にするしか、私に道は残されていない。


 私は、ここで決める!


「王子様は、

 人々の憧れの存在であるべきです。

 全てにおいて秀でて先頭に立つレイド様が、 王子様として舞台に上がることで、

 空想の物語を、現実で表現することに、

 説得力を持たせることが出来ます」


 後半、自分でも何を言っているかよく分からなかったけど、いいこと言ってる雰囲気は出せたはず。皆の反応を窺うと、納得、感心をしているようで、反応は上々だ。


 後は、レイド・ノクターの反応次第だ。ここでレイド・ノクターがさっきの私のように、

「え、僕監督やりたいんだけど」

と断ってきたら終わる。


「そこまで婚約者に言われたら、

 やりたいと思うよ。

 他に王子様を演じたい人がいないならね?」


 これは間違いない完全勝利だ。


 レイド・ノクターがクラスの皆に呼びかけると、挙手をする者は一人もいない。後は、私は大道具をするだけ。きっとダンスシーンとか、最後の結婚式のシーンを練習している間に良い感じになって、レイド・ノクターの弟狂いも治ってくれるはず。


「王子様は、僕に決定か。

 じゃあ、皆には申し訳ないけど、

 僕の我儘を聞いてもらってもいいかな」


 唐突に申し訳なさそうにするレイドノクター。我儘ってなんだろう。練習にはあんまり出れない、とか、話をアレンジしたい、とか、そういうことだろうか?


「何かを演技する、って経験が無いから、

 監督はミスティアにしてもらいたいんだ。

 灰かぶりに並々ならぬ情熱があるようだし、

 そうしたら僕もアリス嬢も、

 頑張れると思うんだ」

「え……」

「このクラスでいられるのは、あと半年。

 皆で力を合せて舞台を成功させたいし。

 ねえ、ミスティア。

 大道具がやりたい気持ちは分かるけれど、

 文化祭の成功に協力してくれないかな?」


 言い方が、断り辛すぎる。何だよ文化祭の成功に協力って。きつすぎる。完全に逃げ場がない。横を見ると、アリスがずっと首を縦に振り続けている。


 監督、監督って、責任者のことだ。監督の立場なら、照明のあれこれも指図出来なくはない。


 レイド・ノクターが私を監督にしたい理由が思い浮かばないのが恐怖だが、レイド・ノクターとアリスが頑張れるなら、受け入れるしかない、か。


「分かりました。引き受けます」


 肉を切らせて、骨を断つ。勝利に犠牲はつきものだ。ここは監督として、レイド・ノクターとアリスを、現実でも、舞台の上でも進展させる。劇を成功に導き、二人をハッピーエンドに導き、私は投獄死罪の舞台、そして悪役から退場する。


 私は黒板の前でこちらに笑いかけるレイド・ノクターを見据え、しっかりと頷いた。




●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

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ちょっ...監督はシャンデリアが落ちて代役に ん?誰か来たみたい
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