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尊き輝き

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/


「お父さんの友達の紹介で、あなたは春から貴族学校に通うことになったのよ」


どこかへ出かけたお母さんが家に帰ってきてそう言った時、

私は何のことかよく分からなかった。

そして、よく分からないまま、時間がどんどん流れて、

よく分からないまま、家に高級な服が届いて、

よく分からないまま、すごく高そうな封筒がたくさん届いた。


時間に、何もかもに置いて行かれるように、

取り残されるように私は貴族学校に入学した。


不安で仕方なかったけれど、ここでたくさん勉強をしたら、

お母さんに楽をさせてあげることが出来る。

だからたくさん頑張ろう、そう思っていた。


けれど、入学式当日、私は心が折れた。


入学式で、校門のところで躓き、助けて貰った方にお礼を言おうとしたら、

助けてもらった方に不機嫌な顔をされた。

まるで邪魔なゴミを見るような目。

私が平民だということが分かったのかもしれないと不安に思い教室に向かうと、

同じクラスのレイド様という方が、気さくに話しかけてくれた。

だから、私は、平民だということがばれたのではなく、

相手の機嫌が悪かっただけ、だからきっと偶然だろうと思った。


入学二日目、その方に改めてお礼を言い謝罪しようとすると、

また不機嫌な顔をされてしまった。

近くにいた黒髪の方……ミスティア・アーレン様は、

俯くばかりでこちらを見ないようにしているみたいだった。

存在を、拒絶されているみたいで悲しい。


平民であることが分かってしまったのかと不安に思い、

入学式助けてくれた方の様子を窺っていると、入学四日目、

私はその方を慕う方々に呼び出されてしまった。

どうやらその方は、女性にかなりの人気を誇るらしい。

その方は「皆のもの」で、新入生の「わたし」が近づくのは目障りらしい。

私が平民だということは、知られていないようだった。


呼び出された時の様子で、身の危険を感じたけれど、

相手は貴族、平民の私が断るわけにはいかない。


制服だけは死守しないと、と考えながらついていった先はお手洗いの前。

数名の貴族の女性たちが私を待ち構えていたのだった。

そのままお手洗いの中に引きずり込まれた。


もう、駄目かもしれない。

どうして私はこんな目に遭うんだろう。

平民なのに貴族の学校に通っているから?

でも、別に通いたいなんて一言も言っていないのに。

何で、どうしてだろう。


沢山の疑問と悲しみばかりが心に浮かび、俯いていると、

扉が勢いよく開かれ、叩く音が響いた。


「皆様、ごきげんよう、何をしていらっしゃるのですか」


鋭く睨むようでありながら、不安に揺れる瞳、

凛としてありながら、どこか優しい佇まい。

はっきりとした、意思のある声。

絵画から飛び出して来た女神が、そこにいた。


まるで、舞台に立っているみたい。


推せる……。


そう思うと同時に、

頭の中に、何かが流れ込むように、私は昔の何かを、思い出していた。

可愛い衣装に身を包み、歌う少女たち。私はそんな彼女達を、光る棒を振って応援する。

薄暗い舞台会場の中、少女たちが立つそこだけが、光り輝く。


「だいがく」に通ってレポートと戦う私。

笑顔を浮かべ、「はんばーガー」を売りながら「レじうチ」をする私。

そうして得たお金で、少女たちの絵を、歌を買う私。

お母さんじゃないお母さんに「かれしをつれてきなさい」と言われ、

荒んだ心を、「ブるーれイ」で癒す、私。

夜、白と黒の横棒が描かれた道で、赤色の丸が青に変わり、

一歩踏み出した瞬間、私の元へ飛び込んで来た、円盤のようなものが四つついた、大きな塊。

あれは、確か、「だンぷかー」だ。


あまりにも写実的に見える、動く絵のようなものが、頭の中に流れ込む。

痛む頭を抑えながら、目を開く。


そして目の前の、女神を見て、思った。

なんて、なんてなんてなんて……尊いのだろうと。


女神が降臨したことで、私を呼び出した方たちは逃げるように去っていく。





「一対一では無い状況で、呼び出された時は、個室の中には絶対入らず、

 人目のつくところに留まった方がいいですよ、あと集団で詰め寄り、

 胸倉をつかむ行為は普通に犯罪なので、訴えることも選択できますよ」

「きょ、今日のことは、私の存在全てについては全部忘れてください」


女神は真摯に、そして淡々と私に対応の仕方の説明と注意をした後、

もう構うなとでも言うように、冷たく去っていく。


私はその姿を、じっと目に焼き付けるように見ていた。


ミスティア様。

ミスティア・アーレン様。

ミスティア様。


「推せる……」


呟いた言葉が、ゆっくりと自分自身の心に染み渡る。



……推せる。むしろ推せる要素しかない!


艶やかな黒髪、透き通り輝くような肌。

燃えるような赤でありながら気だるげな瞳。見た目も最高だけど、

クールで、正義感が強い。

どうしよう全部が最の高。なんなの? 意味分かんないそれしかいえない。

沼が深すぎる。


私はミスティア様を観察し続けた。

毎日観劇しているみたいだった。しかも無料。すごすぎる。

福利厚生が手厚い。校外学習では、

ミスティア様を拝みながら山に登りたくて全力で登ったら、

なんとミスティア様は最後列にいるという致命的すぎる失敗を犯した。

この世の終わりだった。


しかし神様がプレゼントをくれたのだ。

クラスの席替えで、あるクラスメイトに、出来れば席を交換してほしいと言われた。

目が悪くて後ろの席だと黒板が見えないらしい。それはとても大変だろうと思って交換すると、

なんと隣の席はミスティア様。徳を積んでいて良かったと思ったけれど、

今までにない距離の近さ、ミスティア様が隣にいる。

何か透明な壁が欲しい。待ってと思っても誰も待ってくれない。辛い。

推しと同じ空間にいる。こんな幸せがあってたまるか。

じっとしていられない。身体が動き出しそうになるのを抑える日々の始まり。

本当辛い。最高。


そんな私だけど、とある問題が発生した。

私はお母さんが教えてくれたから、読み書きは出来る。

お母さんのお店を手伝っていたから、計算も少しは出来る。

だけど、それだけじゃ貴族学校の勉強にはついていけなかった。

全然駄目だった。

教科書の内容は半分も読めないし、意味が分かるのはその半分。

計算の仕組みや決まりみたいなものがあって、ただ足したり引いたり、

分けたりするだけじゃ駄目。だから少しでも皆に追いつけるように、

私は家で勉強した。


そしてある日、家に教科書を置いてきてしまった。

ただでさえ分からない授業。

でも、教科書を借りる友達なんて、他の教室にいない。

どうしようと思っていると、推し神様。

ミスティア様が『教科書は?』とメモを差し出して来たのだ。

欲しい。その直筆メモ、是非欲しいと凝視しながら頷くと、

ミスティア様はそのメモを裏返し、『机を近づけてもいいですか』と書きこちらに向ける。


メモ欲しい。直筆メモ……いや待って、待って。

机近づけていいって何? 机近づけていいって何?

近付いてくるの? ミスティア様が?

無理無理無理、今でさえ近いのに何で?

そんなことされてガチ恋勢のオタクに刺されたりしない?

でもミスティア様の好意を無下にするくらいなら刺されても本望でーす。

と頷くと、ミスティア様は机をこちらに寄せ、

『よければ』と書いたメモを教科書に挟んだのだ。


ミスティア様の普段使用している教科書。

普通なら展示会とかでしかお目にかかれないだろう一品。

絶対触らないようにして、めちゃくちゃ凝視した。

『よければ』メモ、あわよくば頂けないだろうか……と考え、

お礼がおろそかになっていることに気付いた私は、

すぐにメモに『ありがとうございます』と書いてミスティア様に差し出した。


本当なら、今まで生きててくださってありがとうございますとか、

この世に存在してくださりありがとうございますとか、

誕生してくださりありがとうございますと書きたかったし、

ミスティア様の数多ある最高なところを書いてしまいたかったけど、

最終的に「尊い」としか脳に残らない。己の貧困な語彙力が憎い。


それから私の最高な学校生活が始まった。

授業中、指名されると、

ミスティア様がその都度メモ書きで読む場所や答えを教えてくださるようになった。

いつもなら、「何で私のこと指名するの? 呪う」と先生たちを心の底から呪っていたけど、

今はもう感謝の意しか抱けない。足向けて寝られない。

でも学校の向きとミスティア様の御屋敷の位置が逆方向だったらどうしよう。

ああ、立って寝ればいいか! へへへ!


ミスティア様の視線は、基本的に黒板と机に固定されている。

こちらを見るのは何か教えてくれる時だけ。

だから死ぬほどこの目に焼き付けることが出来る。最高!


しかし問題が起きたのだ。

実は私は、ミスティア様に教わった時、

ミスティア様がお忘れになって回収しなかったメモを回収している。

そのメモを仕舞うものが無いのだ。ミスティア様が触れたものだから、

ハンカチに包んで丁重に扱い、自室の引き出しにしまっているけど心もとない。

国の文化遺産をしまうには心もとなさすぎる。

私はミスティア様の文化遺産を補完するため、大型連休を利用して箱を買いに街へ出た。


出来れば箱は良いものが欲しいけれど、そこまで高いものは買えない。

だから手作りにすることにした。

そうすれば制作費の分、素材にお金を出すことが出来る。

湿気がいい感じに保管出来るようないい感じな紙を探していると、奇跡が起きたのだ。

街でお出かけするミスティア様と出会った。

制服じゃないミスティア様、推しの私服姿。

貴族の方が着られる服の名前については詳しくないけれど、

黒で統一されていて、ミスティア様感が凄かった。最高だった。

心の撮影機で七百枚保存した。

連れていた侍女らしき方は、私をじっと見ていた。

何か、変な感じがして、それが同担拒否の匂いだと理解した。


ミスティア様は高貴な身分だから、街へ出かける時は偽名を名乗るらしく、

街だと「ティアミス・アイリーン様」になるらしい。

察せずにミスティア様とお声かけしてしまった己の短慮を呪いながら買い物を済ませ、

箱を作った。これでこれからは文化遺産を丁重に保管できる。


そして、反省しながらミスティア様とまた会える嬉しさ、

今もまだ目に焼き付いている私服姿に興奮半ばで学校に登校すると、

最悪な出来事が起きた。間違いなく、人生で最悪な日。


どこでばれたのか全く分からないけれど、私の家のことが黒板に書かれていたのだ。


ミスティア様に、平民だということがばれてしまう。

今までは皆にばれることが怖かったけれど、

今はただただミスティア様にばれることが怖い。

ミスティア様に、「何で平民が?」みたいな目で見られたら泣いてしまう。

推しの新たな姿だけれど、流石に興奮できない。

普通に死にたい。っていうか死ぬ。すぐ死ぬ。心折れる。

穴を掘るから、埋葬されたかった。埋めるのだけお願いしたい。

よろしくお願いシャス!


はやく黒板を消さなきゃいけないのに、

足が震えて動けない。

混乱しながらただ立ち尽くしている私を救ってくれたのは、

他でも無いミスティア様だった。


ミスティア様は、ただただ私をクラスメイト達から庇ってくださったのだ。

私の立場に寄り添い、クラスメイトに意見を述べ、黒板を消し、

私の手を取り教室から出してくださった。


推しが肯定してくれた。

推しが私の存在を肯定してくれた。

推しが、私の生きていることを肯定してくれた!

無料で! 夢じゃなく! 推しが!


感動で前が見えず、ミスティア様に手を取られそのままついて行くと、

何故かレイド様によろしくと託された。

「え、何で? 学級長だから?」と考えつつも、

ミスティア様はそのまま立ち去られた。

もしかして忙しい? と考えながら、またお礼を言えていないことに気付く。

まずい。このままだとお礼も言えない無礼者だと思われてしまう!

必死にミスティア様を追いかけると、

同じクラスの真面目そうな眼鏡の人がミスティア様に無礼を働いていた。


許せない、推しに向かって何たる所業。

神が許してもこの私が許さない。校舎内引きずりまわしてやる!

同担拒否勢は理解できるけど、私は貶し愛絶対殺すマン。

息巻いて恐れ多いながらもミスティア様の前に立ち、

眼鏡の人を威嚇すると、眼鏡の人は、訳の分からないことを話した。

とりあえずミスティア様に何たる狼藉と怒りを露わにすれば、

眼鏡の人は私がミスティア様に、入学して間もない頃、詰め寄られていたと話す。

何この人、妄想癖でもあるの? 病気の人……?

こわぁ……と若干引きながら当時を思い返すと、

推し神様の出会いの日、何かこの眼鏡の人と会ったような気もする。


でも、推し神様との出会いは女子トイレ。眼鏡の人は男子。

多分私が感動して女子トイレから出て来たところしか見てないはずだ。

憶えていないけど、ミスティア様と他言無用の約束はした。

会ったか会ってないか記憶が無いけど、会っていて訳を聞かれたら、

私は絶対答えないだろうし、しつこく聞いて来たら武力行使も辞していない。

それくらい黙っていると思う。


何この人、とんだ勘違いをしてる。

勘違いしたままミスティア様を侮辱するとか、何この人。


眼鏡の人への憤りを抑え、状況の説明をして誤解を解き、

ミスティア様に謝罪をしていると、推しが目の前で動いていることに興奮して、

そのままミスティア様への日頃の感謝をお伝えしてしまった。

ミスティア様は私に引くことなく、気にするな、とでも言う様に首を横に振っていた。


しかし、私はそこで調子に乗ったのだ。

思い余って手を握ってしまった。

握手会でもないのに推しに触れてしまうなんて。

出禁にされてしまう。


出禁は嫌だ……と悲嘆に暮れていると、ミスティア様からお手紙が届いたのだ。

直筆! しかも内容証明つきだ! 推しからの直筆レター!

あまりにもミスティア様への気持ちが強すぎて、

ミスティア様から手紙が来たと言う妄想をして自作した手紙じゃない……?

と思う度に、内容証明の印で「これは現実だ」と思える。

最高。これは現実だよってミスティア様の配慮かな?

でも配慮してくださるってことは、

ミスティア様が私が推してることを認識してるってことだ。

うわ、無理。死のう。推しに認識されるの無理なタイプのオタクだから辛い。

無理生きるー! ミスティア様に手紙貰ったから生きるー! フゥ!

手紙は飾った。見るたびに最高な気持ちになる。

ミスティア様の直筆だ。「ミスティア・アーレン」という記名もされている。

これ、複製して部屋に貼りまくりたいけれど、

複製にはこの手紙を使わなければいけないわけで、

もし失敗して駄目になったら死ぬしかないから我慢します!


無礼にならないようすぐに手紙の返信をしたけれど、

本当に当たり障りの無いことしか書けなかった。

己の語彙力が憎い。辛い。辞書とか食べるしかない。

それかもう、国語のジェシー先生の腕の肉とか食べる。






それから、しばらくして。

ミスティア様は体育祭委員になっていた。

ミスティア様は体育祭委員で、クラス旗の制作など、沢山の仕事をしていた。

途中クラスの絵の具が無くなる事件があったけど、

流石ミスティア様。溢れる人望で解決していた。

正直、その頃の記憶は曖昧だ。だって、体育祭当日に最高なことが起こったから。


でも体育祭の当日の朝は、そんな最高なことが起こるとは思わなかった。

私はとんでもない、もう打ち首確定の大罪を犯していたからだ。


私の大罪、それは体育祭の朝、ミスティア様の着替えの邪魔及び遭遇してしまったことだ。

推しの着替えを他者に晒しかねない。とんでもない罰当たりの行い。

まるで教会の石像を倒すような、そんな許されざる愚行。それをした。


悔い改め続け、心の中で懺悔を繰り返し、体育祭の開始の挨拶を聞き流し、

ただただミスティア様に顔向けできない、死にたいとしゃがんでいると、

ふとティアミス様の存在を思い出した。


色々あって何も話さず終わったけれど、

ミスティア様がティアミス様について触れる気配が無い。

もしかしたら、私が本当にミスティア様に、「ティアミス様という親戚がいる」

と思っていると誤解されていないか不安になった。

だってそうなら、私がミスティア様を正しく認識出来ていないと思われているということだ。

ミスティア様を正しく見ていないということになってしまう。


着替えを邪魔し、ミスティア様を認識できていないやつ。


これじゃあミスティア様に認識されているミスティア様推しとして、

なんて情けないのだろうか。


早速ミスティア様に誤解を解こうとすると、

レイド様が不思議そうな顔をした。

ミスティア様のお出かけは多分お忍び。

ティアミス様がミスティア様だということを分かってます!

と宣言するのは良くないと誤魔化した。

思えば、ミスティア様の近くにはいつもレイド様がいる気がする。

レイド様も同担拒否の匂いがするんだよな……と思いつつ、

禊をせねばと水場で顔を洗っていると、

勢い余ってバケツに足を引っかけ突っ込んでしまった。


でも、この水量なら禊には十分だろう。

むしろこれくらいの水量じゃないと禊にならないとずぶ濡れのまま応援席に戻ると、

ミスティア様が私に上着を貸してくださった。

ミスティア様の上着を濡らす訳にはいかないという気持ちと、

こんな好機二度と訪れないという気持ちがせめぎ合い。

結果的にミスティア様の上着をお借りした。

推しであるミスティア様がすぐ傍にいるみたいで興奮し、

その興奮燃料で徒競走は一位を取った。


しかし、まだ足りない。

ミスティア様は体育祭委員。だから体育祭の成功を祈っているはずだと、

クラスの子たちから走競技の出番を貰って、死ぬほど走った。

禊。禊をして、徳を積む。禊じゃ。禊をするのじゃ。

そう思って死ぬほど走った。

禊をして、徳を積む。次回の席替えもミスティア様の近くが良い。

ミスティア様との接点は、今は席が近くというところしかない。こんな推しが過剰供給されている中で、

突然席が離れたら飢饉で死ぬ。


ミスティア様のお役にも立てて、禊も出来る。いわば一石二鳥。

推しの為なら何でもできる。他の子の活躍の機会だって奪って見せると頑張った。

けれど他の子は走りたくないらしく、皆嬉しそうに譲ってくれた。

ありがてえ! ふう!

そして借り物競走。あれは最高の時間だった。

合法で推しの手を取りて駆けた。最高。最高としかいえない。握手会だった。

最早体育祭はファンミーティング! ありがてえ! 供給の雨!

受けまーす!


前の人もミスティア様をお借りしていたし、お題もミスティア様にぴったり。

調子に乗った。最高だった。


ミスティア様が走る競技も、もちろん応援した。

流石に光る棒は入手できなかったから、

手頃な棒を推しの色、ミスティア様レッドにして、応援した。

あんまり乱雑に振らない。関係者ぶって控えめに振った。ひへへへ。
















「……はーあ」


誰も居ない美術室で一人、溜息を吐く。

今日はミスティア様に捧げようと一生懸命クッキーを作って持ってきた。

ミスティア様は美味しいと食べてくれて、褒めてくれたけれど、

ミスティア様に捧げたクッキーを同担拒否のレイド様に食べられてしまった。

何かあの人、一歩間違えれば厄介オタクっぽいんだよな。

過激派みたいな。平然と立ち入り禁止のとこ入っていきそうな感じある。


……せっかくミスティア様に作ったクッキーなのに。


悲しい。悲し過ぎる。

全部ミスティア様に捧げるはずだったのに。

同担拒否厄介オタクのレイド様に妨害された。


けど、これで徳を積んで、次の席替えはミスティア様の後ろの席になれないかな。

隣の席は顔を横に向けなきゃいけないから、怪しまれたり不快感を与えてしまうけど、

後ろの席は眺め放題だ。いいなあシーク先生は。ミスティア様見放題で。


……今度はミスティア様用として、

ミスティア様の御尊顔を模したクッキーを作ろう!


「へへへ、ミスティア様待っていてくださいね!」


私は目の前のミスティア様に向かって話しかける。

目の前のミスティア様と言っても、ミスティア様の肖像画だ。


塗料缶が無くなった時、美術室に塗料が無いか探した時にこの肖像画を見つけてから、

肖像画に礼拝することが、私の日課になっている。

流石に隣のミスティア様を面と向かって拝むわけにはいかないし、

生きててくれてありがとうございます! なんて言えないから、

代わりに絵の中のミスティア様に伝えているのだ。


見つけた時は描きかけで、半分くらいしか出来上がっていなかったけれど、

一目見てミスティア様を描いているのだと分かった。きっと放課後、

ミスティア様は美術室に訪れてモデルになっているのだろうと思う。

誰が描いたか分からないけれど、

絵を描いている間合法でミスティア様を眺められるのは羨ましい。


でも駄目だな、ミスティア様を見ていると、

尊い! という感情で上から叩きつけられている気持ちになって、

幸せな気持ちになりすぎて辛くなるから、多分絵とか描いている間に破いちゃうし。


それくらい、ミスティア様は尊い。存在が尊い。全部尊い。

だから私は毎日世界へ感謝の祈りを捧げる。これからも捧げ続ける。


ミスティア様がいる限り、私の人生は輝いてるし、

私の推し、世界のアイドル、ミスティア様は世界で一番輝いているのだ!



●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

◇予約ページ◇https://tobooks.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=3106846

◆攻略対象異常公式アカウント◆https://twitter.com/ijou_sugiru?s=20/

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― 新着の感想 ―
えっヒロインも…?
それかもう、国語のジェシー先生の肉とか食べる。 ←食べるな!ワタシノナカノヒロインチャンゾウガコワレチャウ! ってなりながら読んでましたwww ヒロインちゃん転生者だったとは、、、確かにふふふとか変な…
2026/03/29 13:28 たまʕ•ᴥ•ʔ
アリスたん(//∀/)b 転生してもブレナイ《推し活》が、 イキイキ書かれてて(*`艸´)♪ めっちゃ楽しい回でした♡♡♡ (なにやら深い沼を抱える登場人物達の中でも(*^ー゜)アル意味《とびきりの…
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