97話 使命感って訳ではないけど。
午後の授業も何とか乗り切って、放課後…ナヴェーさんとミストラルさんが図書館に行ってみたいと言ったので、ギリギリまで図書館に居た。ナヴェーさんは童話集とか見ていたのだけど…ミストラルさんは、初心者でも出来る手芸の本や刺繍の本を読んでいて…。あ、あの時ヴァンさんが教えていた趣味が、ミストラルさんの中で根付いてる!!と、一人でうわぁぁっとした。
ラシェールさんが純情恋愛小説を読んでる隣で、私は料理本を読むフリして手芸が得意なイケメンかぁ…と、ゴゴゴッと考えてしまうと言う……ドラゴンで、イケメンで、手芸を嗜む…ネタ盛ってくるスタイルってヤツか。そのイケメンと、ナヴェーさん…いや、いやいやいや、この妄想は良くない。ヴァンさんに思考を覗かれて、この妄想は止めるって誓ったじゃないか私…っ。
「お嬢さん…女の子なんやから、そう言う妄想をしてしまうんは仕方ない事や。」
「ニヤニヤ顔で言われても、辱しめられてる様にしか…。」
そんな事がありながら、ナヴェーさんやミストラルさんの気が済んだので、この日は私は別れた。
「ふぅ…この姿でこの部屋に来るのも、結構大変ですね。」
ナヴェーさん、ラシェールさん、ミストラルさんと別れた後、私は一人、一応周囲の目を気にしながらアルベロ先生の部屋を訪れていた。
いやぁ…昔から何回も来ていたからかな。学園に居るなら、一回はアルベロ先生の部屋を訪れないとって気持ちになってきたと言うか…ね。
「お〜…コスプレか?」
「分かってて言ってますよね、アルベロ先生。」
アルベロ先生クラスになると、この程度の認識阻害と言うか認識操作はあってない様なモノだから、『誰だ?』とか言われないとは思っていたけど…だからこそ、普通に普段の私がトレラント学園の制服を着ている様に見えているのだろう。…うん、確かにギリギリセーフとは言え、コスプレっぽいかもな。喧しいわ。
「ま〜…学園の生徒になったんなら、俺も働かなくちゃなぁ。」
舌打ちしそうな気持ちを抑えて、ニッコリアルベロ先生を見たら、本当面倒そうにそう言った。
アルベロ先生の事情を知らないと限りなく不安だけど、アルベロ先生が助けてくれるなら心強い!!何せ、私は学生時代に何回もアルベロ先生の強さは目の当たりにしてるからね。
「面倒くさそうに言わないでくださいよ、アルベロ先生…。」
「仕事はするんだから、面倒くさがるぐらい許せよ。」
このやり取り懐かしいなぁ…と思っていたら、何だかムカムカしていた気持ちが落ち着いて、私は思わず薄く笑ってしまった。何だかホッとする。
「お茶淹れますか…何か飲みたいモノありますか?」
「昆布茶。」
「まさかの。」
アルベロ先生の貰い物お茶とコーヒーの中に、昆布茶なんてあったかなぁ…私個人としては昆布茶は好きなんだけど、私が見た限りあのキッチンの棚の中に昆布茶の文字は見た事ない気が…。
「お嬢さん…ウチの存在、忘れとらんか?」
「影の中からゆっくり出現する存在感を、どう忘れれば良いんですか。」
CG映画のホラーシーンよろしく現れる影の精霊を見てると、何か頭の中に影の精霊が起こしたホラーな場面が…影の精霊のホラー対応、多い様な、少ない様な。いやまぁ、人生に何回も遭遇しない事をやらされているから…多いのか。
「ちょっと気合い入れて登場してみたんやで!!あ、昆布茶の粉あるで。要るか?」
「お前の気合いの入れ所、可笑しいだろ…要るよ…。」
影の精霊から市販の昆布茶の素を受け取って、はぁ…と溜め息を吐いた。
いつもの様に魔法でお湯を沸かして、私用とアルベロ先生用の昆布茶を淹れた。…いやさ、昆布茶飲むって言ったら昆布茶飲みたくなるじゃないですか。
「ん〜…お、流石に早いな。」
「お湯入れて溶かすだけですから…蒸らし時間とかないですからねぇ。」
アルベロ先生にスイッと湯飲みを渡してから、私は近くの椅子に腰掛けて、昆布茶を飲んだ。うん、安定した美味しさだ。




