91話 心配事だらけだけど。
一旦話を中断させてもらって、私はギルドに確認の連絡を入れると…まるで用意していた様に、トントン拍子に話が進んでいった。…本当、知らなかったの私だけだったんだなぁ。
改めて正式な通達のメールを三回しっかり読んでから、私は深く溜め息を吐いて、ミストラルさんとナヴェーさんをしっかり見据えた。
「改めまして、明日から一週間、お二人の学園生活をサポートする事になりました夜風です。よろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いしますっ。」
「よろしくお願いします。」
明日から一週間…私は影の精霊の力で、学生の中に紛れる手筈になっている。感覚で言うなら魔法少女モドキの時と一緒かな。先生じゃない理由は、そっちの方がサポートしやすいからだそうだ。
…ナヴェーさんやミストラルさんに比べたらまだまだ可愛い方だけど、卒業生が新入生の中に混ざるなんて…変装するにしても、恐ろしすぎて寒気がしてくる。在学中でも、他学年に囲まれたら恐怖しかなかったのに。
「私は…既にナヴェー様からご紹介がありましたが、ラシェールと申します。夜風さんとは、協力できたらと思っております。」
「一週間と言う短い間ですが、よろしくお願いします。」
キッツイ仕事になってきたなぁ…と思っていると、ナヴェーさんの近くの空間が揺らいで…そこには、左目を隠す様に伸ばされた前髪と日焼けした肌が印象的な、少し幼い印象を受ける女性が立っていた。…あんなに近くに居たのに、気付かなかった。戦闘になったら驚異だな。
「サポートの内容はその時にならないと分からないので保留にしておくとして…ラシェールさん、何か質問ありますか。」
ラシェールさんとは仕事仲間になる訳だから、連携を取るためにも疑問点は早めに潰していかなければ。…敵に回さない為にも、出来るだけコミュニケーション取らなきゃ。
「ミストラルさんは…竜人族の中でも、先祖返りの実力者…と言う事なんでしょうか。」
ああ、そっか。私とヴァンさんは事情をしってるけど、ナヴェーさんやミストラルさんと言った当事者組は勿論、ラシェールさんもお互いの事情知らないんだ。
…ミストラルさんは純粋な竜って言ったら…しかも風のエレメント・ドラゴンの直系と言ったら…この人どんな反応するんだろう。言わないけど。
何にせよ、ラシェールさんったら微妙に答えづらい事聞いてくるな…。
「竜の血は濃いわよ〜。だから、メンタルをサポートして貰えたら嬉しいわ。」
「世間知らずなので…よろしくお願いします。」
何て答えるか、一瞬頭で考えていた時…話を聞いていたヴァンさんが、ミストラルさんを巻き込んでシレッと会話に参加した。…正直、凄く有り難かった。なまじ知っているだけに、上手く切り返しが思い浮かばなくて…いや、これは言い訳だな。これからはちゃんと対応出来るように頑張ろう。
こうして、人はどんどん自分を追い込んでいくんだろうなぁ…と、でも止まれないんだよなぁ…と、内心自嘲した。
「それにしてもぉ…生徒視点のトレラント学園なんて、夜風さん久しぶりなんじゃないの?どうどう、楽しみ?」
「楽しみも何も…懐かしくはあるでしょうけど。」
ヴァンさんめ…私が学校怖いとか何とか考えていたの気付いているでしょうに。
「はぁ…改めて馴染めるでしょうか。ただでさえエルフ族の方は少ないと聞きますし。」
「俺も…竜人族の方少ないって聞きました。馴染めるか…不安です。もし夜風さんぐらいしか話し相手が出来なかったら…。」
「そ…それは、とても恐ろしい事になりますね。」
「そうならない為にも…で、でも、俺から他の人に、は、話し掛けるなんて…。」
「反応によっては、暫く立ち直れません……!!」
わぁ、ナヴェーさんとミストラルさんとで、何か分からなくもないネガティブシンキングが繰り広げられている。大丈夫、アナタ達なら話し相手間違えなかったら大丈夫だよきっと。
「もうすっかり打ち解けてますね。」
「お嬢さんが思い描いた展開になりそうやねぇ。知らんけど。」
「…それはもう忘れてください。」
完璧に油断していたタイミングで蒸し返すなバカヤロウ。




