90話 偉い人は知ってたヤツ。
ナヴェーさんとミストラルさんの顔合わせは、急に叶った。
どうもたまたま同じタイミングでミストラルさんも学園で手続きをしていたらしく、どうせならって話が進んだのだ。ヴァンさんの用意周到さに目眩がした。
あはは…コレ、さながら時間を掛けたドッキリじゃないですかぁっ!!
あ〜、今になって影の精霊や上司の方々に言われていた事がスッキリ腑に落ちた。確かにコレは、もうなんか…もう笑うしかないよね。状況的に笑えないけど。
「は、初めましてっ!!俺…じゃない、僕はミストラルと言います!!」
「こ、こちらこそ初めまして…私はナヴェーと、言います。」
向かい合って座る二人…全体的に淡い感じながら頼り甲斐のある男前イケメンのミストラルさんに対して、儚い印象のエキゾチック褐色エルフ美少女のナヴェーさん……アンバランスなのにバランスが良いと感じる組み合わせに見えてしまう不思議。…二次元のアレコレに染まりすぎた結果かしら。
こんな時でなければ、下世話な妄想するんだけどなぁ。この状況まるでお見合いみたいだし…いかんいかん、今この場でしちゃいけない類いの妄想が頭を掠めてしまった。
「あらぁ…あらあらぁ。夜風さんったらっ!!」
「お嬢さん…むふふ、やっぱり興味あるんやねっ!!」
「すみません、本当すみません。」
ミストラルさんの付き添いは、電話に出ていたヴァンさんで…思いっきりニヤニヤされてしまった。影の精霊の発言も、今の私には追い打ちにしかならない。
あはは、身内さんが居る前でこの手の妄想するもんじゃないなぁ。……本当に、この度は申し訳ありませんでした。
せめてもの救いは、ミストラルさんもナヴェーさんも私達の会話がチンプンカンプンな所だろうか。…いや本当ごめんなさい。
「ふふ、良いじゃない。私、そう言う下世話な感じ嫌いじゃないわ。そこに隠れているお姉さんも、そう思うわよね?えっと…ラシェールさんだったかしら?」
何気ない感じにヴァンさんがそう言った時…部屋の中に緊張感が満ちた。
「…ヴァンさん、この部屋にその、ラシェールさんが?」
確かに護衛と監視の対象であるナヴェーさんを見る為に、この部屋のどこかに居るとは思っていたけど…正直、今でも私含めた四人の気配しか分からない。
「ええ。とっても上手に気配を溶け込ませているわねぇ。気配だけでなく魔力も馴染ませている。元々素質があった上で、とても努力したのね。素晴らしいわ。」
ヴァンさんがここまで誉めるなんて…でも確かに、私は元より、私より感覚が鋭いであろうミストラルさんや、存在を知っていたナヴェーさんですら驚いてるくらいだからなぁ。
「…貴女は?」
「私の名前はヴァン。それ以上でもなければそれ以下でもない存在よ。まぁ、調べれば直ぐ身元は割れるから。私は逃げも隠れもしないし。」
低めの声に鋭く誰かと聞かれ、ヴァンさんは穏やかにそう答えたのだが…そりゃ風のエレメント・ドラゴンにそれ以上もそれ以下もないわな。逃げも隠れもしないわな。
暫くピリピリした空気になっていると、ミストラルさんが慌てて声をあげた。
「お、伯母様。あまりそう言う事はしないでください。」
「そうねぇ…ふふ、ごめんなさい。そうだ、ナヴェーさん。ウチのミストラルと仲良くしてあげてね。」
急にヴァンさんがふんわり笑いながらパチンとウィンクしたら、場の空気が一気に和らいだ。す、凄い。何をどうしたか分からないけど、何か凄い事をヴァンさんがしたのだけは確かだろう。
「へっ?…あのその、私は今まで、年の近い男性と仲良くした事がないので…もしかしたら、気分を害されてしまう場合があるのですが。」
急に話を振られたナヴェーさんは、慌てて対応した。焦った顔も可愛いなぁ、ナヴェーさん。
「そんなのお互い様ですよ。どうしても難しい時は、夜風さんに相談すると良いです。この方、良い人ですから。」
ヴァンさんが私に意味深に微笑んだので、何となく後々波乱とかありそうだなぁ…と、遠い目をしてしまった。




