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88話 これはこれで、良き趣。


私、各施設やご家庭の応接室ばっかりに居るなぁ…いや、応接室がある家の方が珍しいからアレだけど…とか思いながら、私は応接室の前に立った。…何だろう、少し違和感を感じるな。


いつもならスルーしていたであろうが、仕事中だからか精神が過敏になっているのかもしれない。例えるなら…普段なら気にも留めない音でも、寝る前とか集中してる時には(やかま)しく感じてしまう…みたいな。と言うかまんまその現象か、コレは。


「影の精霊、応接室に何か魔法的なモノでも掛かってますか?」


「エルフ族が保有する独特の式が施された魔術具で発生された結界やね。ごっつい魔力が込められとるで〜。カッチカチやで〜。」


何ともまぁ…エルフ族が扱う魔術具って、下手すると古代遺物(レリック)扱いされそうなモノを扱ってそうなイメージがあるのだけど…まさにそんな感じか。


「まぁ、良いや…理由も分かったし、さっさと部屋の中に入ろう。」


少しだけ窮屈さを感じながら、私は結界の中――応接室に入る。


そこに待っていたのは、つい数ヶ月前まで袖を通していた学生服に身を包んだ、褐色の肌と真珠色の髪の毛が印象的な、一人の少女だった。


「ご、ご無沙汰してます、夜風さん。」


「はい。お久しぶりです、ナヴェーさん。」




「夜風さんが学園を卒業してるなんて…すみません、調べが足りませんでした。」


そういってナヴェーさんは、顔を赤く染めながら俯いた。…以前会った時より、少し体つきが女性らしくなった気がする。前は人形みたいな雰囲気で、それはそれでキレイだったけど…今は少し妖しさすら感じさせると言うか、艶がある感じがする。


後さぁ…ナヴェーさんに白ニーソを履かせた人、誰?…グッジョブ。ナイスセレクト。座ったことでスカートから露出した褐色肌の絶対領域と白ニーソのコントラストが素晴らしいです。本当にありがとうございます。


「在学していても卒業していても、ギルドに依頼された時点で対応しますよ。」


「そ、そうなのですか?…はぁ、ラシェールに任せっきりだった私がいけないのですよね。」


変態的思考を静かな溜め息で落ち着かせて、私はナヴェーさんに笑顔を向ける。寧ろ、学生のままだったら学業に気をとられて仕事に集中できなくてしんどかったかもしれない。逆になるかもしれないけど…まぁ、その辺はどうでも良いや。


それにしても、ちょっと聞き馴染みのない言葉が出てきたな。ラシェールって誰だろう。あのゴツい褐色エルフのオジ様達に、そんな名前は居なかった気がしたけど…。


「ナヴェーさん…差し支えなければで良いのですが、ラシェールさんと言うのは?」


「ああ、私の身の回りのお世話をしてくださっている女性の人です。何でも出来る凄い方なんですよ。」


私がラシェールさんの事を聞いた時、ナヴェーさんから少し動揺が浮かんだ様に見えた。


…ナヴェーさんはエルフ族が住まう(グランツ)では、かなり特殊な立ち位置に居るから、そのラシェールさん、ナヴェーさんは親しくしてるし、信じているけど…立場的には完璧に味方とは言い切れないのかな。…なんてな。深読みが過ぎるな、流石に。


「それにしても、ナヴェーさんがトレラント学園に入るなんて…。」


「本当なら、今年度から高等部に入学する予定だったのですが…お恥ずかしながら、身内で揉め事がありまして。…こちらには世界的実力者の方や、知り合いの方がいらっしゃるから大丈夫だと、あれほど言ったのですけど…。」


そう言いながら溜め息を吐くナヴェーさんに、少し同情的な声が出た。


仕方ないとは言え、あのオジ様達はナヴェーさんに対してかなり過保護だし…学園に入るとなると、そのラシェールさんだって常時隣に居れるか分からないし…いや、頑張ればイケるか。


いやいや、そもそも完全な味方と言い切れないラシェールさんが近くに居すぎるのがアウトって可能性も…あ〜、もうっ!!面倒くせなぁっ!!




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