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84話 モフモフ追加は嬉しいのだが。


何だかウキウキした様子の柚季さんに案内されながら、ダイニングに移動する。…やっぱり知らない人のお宅の中を歩くって、凄く緊張するけどワクワクもするな。幼少期なら、確実に走り回ったり探索したりしていただろう。…そして、何かしら取り返しのつかないポカをするんだよね…。


『私』の時にやらかした記憶を思い出して、周囲に気付かれない様に自嘲気味に笑みを浮かべていると…ダイニングの方から、何か白い毛玉みたいなのがこちらに跳ねてきた。……この毛玉、モフモフだ。しかもかなり上質なモフモフだ。


「あ、夜風さん。この子は俺の契約精霊である方で…白ウサギの白雪さんと言います。」


「へぇっ、柚季さん契約精霊持ちだったんですか。」


「良く意外と言われます。」


私も文系な見た目で力ごり押し脳筋体育会系だから、柚季さんみたいな爽やかさんが実はかなりの実力者だった…と言われても意外ではないんだけど…何と言うか、執事の仕事で精霊の力を借りる場面が想像出来ない的な意味で、凄く意外に感じた。


自分の契約精霊に『さん』付けしてるのかとかは、日辻さんの例があるので気にしないです。


「キレイな方ですね。毛が真っ白だから、白雪ってお名前に?」


「安易でお恥ずかしいですが…あ、良ければ撫でてあげてください。」


私の足元に寄ってきた白雪さんは、撫でられたいのかこちらを見上げている。…くっ、近くで見れば見る程素敵なモフモフだなっ!!


「では、失礼して。」


あんまり頭の上から撫でない方が良いと聞いた事があったので、しゃがんでからゆっくり撫でる。


指先からふんわりとした、柔らかく細い毛の感触が伝わってきて、小春とは少し違う毛の感触に、思わず口角が上がった。


『ふんっ、お前が“夜風さん”か。これからご主人達をよろしくな。』


「!?」


ふわぁ、モフモフだぁ…と完全に気を緩めていたら突然脳内に柔らかい可憐な声が頭に響いて、反射的に白雪さんから手を離して周囲を警戒した。


影の精霊なら、アイツもモノローグを少し改変したりするけど、アイツは頭の中に声を響かすなんてまどろっこしい事はしないし…どこかに能力者でも…。


「あっ、驚かしてすみませんっ!!白雪さんは接触型の精神感応能力(テレパシー)が使えるんで…先に言っておけば良かったですね。」


「そ、そんな特殊能力が!?」


そう言った時、そう言えば小春も火を出したり、日辻さんも何か色々出来てたなと思って、直ぐ落ち着いた。


でも、精神系の能力がある精霊と契約してるなんて…柚季さんって凄い人なのかな。それとも、何か事情があるとか?ギルドは白雪さんの存在を認知してるのかな。いやでも、柚季さんマメそうだしその辺は大丈夫か。


それにしても…そんな白雪さんと契約してるって、柚季さん凄いな。


『ウサギだから耳が良いってヤツだな。あ、分かってると思うがメスだからな。…にしても、ゴチャゴチャ喧しいヤツだなぁ、お前。』


「す、すみません。」


私は手を離していたけど白雪さんが私に引っ付いたらしく、また脳内に白雪さんの声が響いた。


た、確かに…言葉にした思考以外にも、アレコレとイメージを思い浮かべたからなぁ。結構思考とっ散らかりやすいし。


「コラコラ、白雪さん。…そうだ、夜風さん。何か食べたいご飯とかありますか?」


白雪さんを抱き抱えながら、柚季さんはにこやかに聞いてきた。…白雪さん、柚季さんの腕の中で地味に暴れてるけど…スルーした方が良いんだろう。うん。


「始ぇ〜。僕、ビーフシチューが良いなぁ?」


「俺は夜風さんに聞いてるんですよ?」


今まで私達の様子を見守っていたカルマートさんが、猫なで声で柚季さんにリクエストした。い、今からビーフシチューか…圧力鍋があっても、もう少し時間が欲しいかも……いや、いやいや。何で私が反応してるんだ。


「え、えっと…オムライス、ですかね。後はお任せします。」


「オムライスですか。はい、分かりました。」


取り敢えず思い浮かんだ料理を言ったら、思いの外可愛い選択をしてしまった…いや、別にオムライスには何の罪はないけど…何か、恥ずかしい…。




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