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77話 まだまだ、私は弱いなぁ。


部屋に入って、私は彼女の向かいに座った。…あの女の子の話を聞いて、どんな顔をすれば良いか分からなかったが、反射で愛想笑いが出て内心呆れた。


そんな私の心境なんてしらない女の子は、小さな声でたどたどしく「あなたのおかげで、たすかりました。ありがとうございました。」と言った。


先程の『タラレバ』の考えが上手く自分の中で落ち着いていない私は、愛想笑いがゆっくり崩れていく錯覚を感じた。


幸いとして、私が席を外している間に大方の話を終えていたらしく、私が愛想笑いが完全に崩れきる前に、カルマートさんが「さぁ、今日の所は帰ろうか。」と言ってくれ、現地解散となった。


私は…今日得た情報を処理しながらしながら、報告書を作成する為にギルドに戻った。どうやってギルドに戻ったか、正直記憶があやふやだ。


「はぁぁっ…。」


「だ、大丈夫ですか?」


「大丈夫です…少し、少し私の精神力を消費しただけなんで。」


とは言え、こんなに重々しい溜め息を吐いていたら気になるモノで、インドールさんが気になって声を掛けたくなる気持ちも分かる。…もう少し静かに溜め息吐こう。出来るかは別として、意識するだけでも違ってくるだろう。多分。


「…それほど過酷だったんですか?」


「過酷と言うか…こう言うのは失礼と分かっていますが、とてもしんどいお仕事でした。」


「そう…ですか。」


インドールさんには申し訳ないが、今はあまり喋りたい気分になれないし、喋って良いのかも分からないから…これ以上は話しようがない。


それにしても…仕事上のこう言う事って、どう納得すれば良いんだろう。納得するモノではなく、一生引きずっていくモノなんだろうか。


「夜風〜、重たい溜め息を吐きながら仕事をするなよ。職場の空気最悪なんだけど。」


「あ、すみません。」


自分からしてみたら、口を動かしながらも真面目に報告書を書いていたつもりだったんだが……それに、別に溜め息を吐いてる自覚もなかったんだけど、どうやらバンバン溜め息を吐いていたみたいだ。


「溜め息吐きながらキーボードを打つ手は止まらないから、何か怖いんだけど。」


「地味に酷くないですか、部長…。」


仕事する手は止めてないのに、怖いとか何とか言われるなんて…別に溜め息を吐きながらタイピングをしても良いじゃないか。溜め息多くして、場の空気を悪くしたのは申し訳ないと思うけど…。


とか何とか考えたら報告書が書き終わって、誤字脱字がないか二回ぐらい確認してから、部長に報告書を提出した。


「……夜風。まぁ、アレだ。お前一人が抱え込む話じゃないよ。言ってしまえば、俺らだって同じくらい非があるさ。」


私の報告書を読みながら、部長は静かにそう言った。…その言葉に、やっと落ちていていた私の気持ちが揺れてしまった。や、ヤバイ。これ以上何か言われてしまったら、ちょっと泣いてしまうかもしれない。


ああもう、精神を強く持ちたい。アルベロ先生を見習いたい。あんな風になれたら、こんなに気持ちが揺れてしまう事なんてないだろうに…。


「……あ〜、夜風?もう報告書は見たし、ちゃんと受理したからさ。もう席に戻っても良いぞ。」


「…はい。」


部長にそう言われて、私は席に戻った。…が、直ぐに席を立ってトイレに向かった。


だって、もう何か泣きそうでしんどくて…私が泣いても仕方ないと分かっていても、そう考えれば考える程涙が滲んできて、悔しいやら苦しいやら、申し訳ないやらで居ても立ってもいられなくなって…せめての意地で、トイレに移動した。


「は、はぁ…はぁ…。」


個室に滑り込むように入ってから、私は沸き上がる気持ちに従って涙を溢した。泣いても良い状況になった事で精神的な抑えが利かなくなって、辛うじて喉の奥を閉めて、唇を噛んで、声を出来るだけ上げないようにした。


ボロボロと涙が出てくる事や、いやに涙が熱く感じる事をどこか他人事の様に感じて、その事に落ち込んだ。違うそうじゃないだろ私。




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