73話 弄りやすくて弄り難い。
インドールさんが何を言ったのか少し気になったが、やっぱり好意的な言葉は力になるモノで、元々事務部志望でそう言うスキルを身に付けていたのもあって、切れていた集中力が復活した。具体的には、お昼ご飯食べるのを忘れて仕事してた。…私のやる気はいつも極端だなぁ。
私の極端さなんて、極端な人の中ではまだ可愛い方なんだろうが…いや、言わんとしてる事は分からなくもないが、我ながら何だよ極端さって。
「昼休憩ギリギリにスーパーに駆け込んで買ったクッキータイプの栄養補助食品をかじりながら一人ボケツッコミなやんて…あ、お嬢さん。何か飲み物要るか?」
「水ください。」
飲み物タイプとゼリータイプもあったんだけど…この二つを口にするのを、いまだに少し躊躇ってしまう。咀嚼する事なく流し込めるって、凄い利点なのに…。
「単純にお嬢さんがそれのチョコ味が食べたかっただけアフンッ!?」
影の精霊から水を受け取りながら、影の精霊に軽くチョップを決める。相変わらず、影の精霊の体を維持するには柔らかすぎて、それなのに弾力がある。…うん、今更ながらどうなってるんだ。
「ふう…さて、仕事しましょうか。」
この栄養補助食品のクッキー、二個を一パックにしてそれが二パック入っているのだが…時間の関係で流石に四本全部食べれなかったから、取り敢えず一パック食べて、帰る時に残りの一パック食べよう。
…やっぱり飲み物タイプやゼリータイプで流し込んでいたら、もう少し時間を有効に使えたでしょうか。今度挑戦しましょう。
「いざって時、お粥…と言うか病人食代わりにもなるしな。」
あ〜…それ良いな。食欲がない、それどころか食品の匂いで気持ちが悪くなる事があるから…後、夏バテの時とかも良いかも。
まぁこれの大前提は、体調が悪い以外の日はちゃんと食事を摂っているって事なんだけど。……うん、今は時間がなかったから仕方ないって事で。ノーカン、ノーカン。
「そやそや、お嬢さん。依頼書を見るんやなかったんか?どちらにしろ仕事の書類やから、見ても大丈夫やないかな。」
「お、おう。」
肩や背中、手首や指を解して準備をしたら、影の精霊からまさかの提案を言われて少しビックリした。影の精霊の事だから、てっきり何か言ってくるかと思ったけど…意外と何も言われないんだな。…自意識過剰だったな。気を引き閉めないと、またこの自意識過剰をやらかしかねない。
まぁ、何かこう色々言われるとその都度反応を返さなきゃいけないから、大人しいのは有り難いけどね。
「あんっ!!流れる様に反応潰しやなんて…流石やでお嬢さん。」
「…私がそう疑問を抱く前提で、何か考えていたんですか。」
コイツ…やはり侮れない。ちゃらんぽらんに見えて、意外とその辺計算してるんだよなぁ。…まぁ、良いや。影の精霊のアレコレを考えても仕方がない事だ。
影の精霊が何かハァハァしてプルプル震えているのが視界に入ってきたが、それを静かな気持ちでスルーして、依頼書を確認した。
「あ、そうだ。シェルシェール・フォルネウス・カルマートさんだ。」
思い出した!!カルマートさんだ。何かお店みたいな名前だなって、少し思った様な思わなかった様な…。
「何とかマートって名前のお店、結構あるからな。まぁ完璧にイジリになるから、言わん方が懸命やな。」
「影の精霊…そんなキラキラした顔で言われても、全然安心できないんですけど。安心できないんですけど。」
これアレだろ?結構良い感じの雰囲気になったタイミングで、影の精霊から落とされる爆弾ネタになるんだろ?
「え、何やお嬢さん。フリか?フリなんか?お嬢さんはそんなつもりなかったとしても、フリなんやろ?」
「私の言葉を挟む余裕がない件について。」
「まぁ散々言われたネタらしくて、最早自分からネタにする域らしいけどなぁ。」と言う影の精霊の言葉に、背筋が伸びる気持ちになった。…絶対カルマートさんの前でこのネタ振らない様にしよう。
…後さ、フォルネウスって確か…何かの悪魔の名前じゃなかったっけ?いや、別に今関係ないんだけどさ。




