70話 ヤケクソも少し入ってる。
インドールさんを結果的に見送った後、支度やらをしながら、まぁ、インドールさんの反応は分からなくもないなぁと、小春今日も可愛いなぁと、もう今月が四分の三終わったのかよ嘘だろ…もう直ぐ配属決めじゃないか嘘だろ…を考えていた。
「お嬢さん、お嬢さん。お嬢さんがどこに配属されるか知りたいか?なぁなぁ、知りたいか?」
「影の精霊、トドメを刺すのはもう少し待ってください…。」
影の精霊がウッキウキしてる所を見ると、どうやら私はかなり愉快な所に配属されるみたいだ。……よし、今からゆっくり覚悟を決めていこう。
「あ、コトハおは…どうしたの!?どーゆう気持ちの顔なの!?」
「眉間にシワを寄せながら穏やかさと諦めが混ざった眼差しで遠くを見つつ微笑むって…何、悟りでも開こうとしてるの?」
「腹括ってる顔なんですが…そんなにヤバイ顔なんですか。」
バスを待っている時に会ったルナさんと由榎さんに色々言われた。…家の近くで気を抜いていたのもあるけど、今度からあんまり覚悟決めてる時の顔は見られない様にしておこう。…悟り開こうとしてる顔ってどんな顔なんだろう。
ギルドに出勤してから会ったインドールさんは、流石に今までより態度は気持ち丸くなった感じはしましたが、凄くいつものインドールさんだった。何か安心している自分が居るな…あのインドールさんに慣れてないからかな。
「夜風〜、ちょっと来てくれ〜。」
「はい?」
さて、今日も今日とて仕事だ仕事と軽く気合いを入れた時、部長に呼び出された。……アレ、何でだろう凄くデジャブ感。
そう言えばデジャブって、正しくはデジャビュって書くんだっけ?『ビュ』が『ブ』に訛ったのかな…まぁ、『ビュ』って何となく言いにくいもんなぁ…違うそうじゃない。
「ほれ、お前宛の依頼書だ…って、何て顔してんだ。」
「あ、すみません。腹括った顔です。」
ぐっ、不意打ちだったから口元しか引き締められなかった…早急にポーカーフェイスを身に付けなければ。
い、いや、でも今回は今朝のアレとは違って、デジャブで駆け抜けた色々な『面倒な依頼』の思い出が走馬灯よろしく駆け抜けてスンッとしてしまったから、悟り開こうとしてる顔ではなくて……何だろう、純粋な諦めの眼差しだったと思う。いや、鏡見てないから知らんけど。
「…え、これって…。」
頭の中で何か一人漫才みたいな事が繰り広げられているが、それを必死に角に追いやって依頼書に目を通すと、理解すると一人漫才が吹っ飛ぶ内容で、思わず目を見開いた。
その内容は…端的に言えば以前私が襲われ、警察署で交戦した犯罪組織の幹部の一人との面会の付き添いだった。…いや、付き添いって何だ。
「…言わんとしてる事は、良く分かる。が、もう決定した事なんだ。」
「その辺は、日時が記載されてる時点で察していますが…良いんですか?私が付き添う人、明らかに一般の方ですよね?いくらギルド職員が付き添うって言っても、あんまりよろしくないんじゃ?」
こう言う方面はかなり明るくない私でも、どこか偉い人に怒られるんじゃないかと不安になってくる。と言うか、もう不安しか感じない。
「それがなぁ…その民間人がかなり特殊な人で、この件にも間接的に絡んでて…関係者と言えば関係者なんだよ。」
うわぁ、煮え切らない反応。…部長でもおいそれと踏み込めない相手って事か?
「……あの、部長。この際聞くのですが、どうして私にこんな面倒な案件を振るんですか?」
「頑張れ、夜風なら出来るって俺信じてる。」
「白々しいですよ?」
意を決して…って程ではないが、それでも結構真面目に聞いたのに、白々しくはぐらかせてしまった。ああ、こう言う時人はお酒を飲んで口を言いたいと思うのだろうか。飲まんけど。
「夜風、何か言いたげだな?」
「いいえ、何も。…依頼、承りました。」
ちょっと部長コノヤロウとか思っただけですよ、うふふ。あくまで口には出しませんよ、うふふ。




