69話 いつも通り、だったんだけど。
暫く聞き手に徹していたら、インドールさんからグルゥゥゥッて感じの音が出た。…うん、そうだね。お腹空きますよね。
居酒屋でお摘み食べていたけど、酒のアテって基本量が少ないからなぁ。まぁ、ご飯のオカズもご飯に対して量が少ないよね。当たり前だけど。
赤面するインドールさんに、出来るだけいつもの顔のままで、事前に用意していたお茶漬けセットをスッと出した。ついでに私もお茶漬け食べた。ちりめんじゃこと、刻み海苔と、刻みネギ乗せて、残してたほうじ茶掛けるだけだし。…塩昆布もあれば良かったかもしれない。出汁と塩っ気が、ちりめんじゃこだけではイマイチ…まぁ、食べるんだけど。
揃ってお代わりした私達は、二杯目には私がキッチンから塩昆布を取り出して足した。
「ふぅ…美味しかったです。」
「簡単なモノですみません…あ、インドールさん、今日どうします?」
市街地に向かうバスはまだ余裕があるし、いざとなれば私が転移魔法で送るけど…どうするんだろう。帰るのかな?
「あ〜……そ、その、夜風さんが良ければ、今日はここに…泊まらせて頂けませんか?」
「え?それは…まぁ、構いませんけど。」
インドールさんの発言を少し疑問に感じたが、その時ふと、何となくオリエンテーションの時に体力作りの事を話したのを思い出した。いや、多分理由はそれではないだろうけど、それもなくはないだろう。
「ドヤ、ウチのファインプレーやで!!」
…ちょっと耳元で影の精霊の声が聞こえたけど、私はソッと聞かなかったフリをした。
「コホン…えっと、何か理由があるんですか?」
「その…今少し家に帰りづらくて。」
これは少し踏み込んだ方が良いかな?と思って、インドールさんに聞いてみると、凄く気が重そうな顔をしてそんな事を言った。…何だろう、何か夜に徘徊してる女学生と保護した民間の人ってイメージが…インドールさんに対して失礼すぎるそ、私。
「そうですか…下着とかどうします?」
「えっ!?ああその、私はこのままで良いですよ。……明日には帰ってるでしょうし。」
ポソッと最後何か言ったみたいだが、事情を知らない私からしたら良く分からなかったので、これも聞かなかったフリをした。
その後、押し問答の末にインドールさんがお風呂に入り、私のジャージを身に纏ってリビングで寝たのは割愛する。…インドールさんのブラが、お早うからお休みまで着ていられるタイプで良かったと思ったのは、私だけの秘密である。
「……夜風さんって、毎朝こんな早起きなんですか?」
「早…ああ、はい。たまに寝坊はしますけど、大体今から一時間くらい前には起きてます。」
いつもの様に走ったりして、そろそろ暑くなってきたなぁ…と、少し憂鬱な気分で帰宅したら、私の帰宅音で起きたらしいインドールさんから、そんな事を言われた。
改めて言われると、やっぱり早起きって言われるのか…確かに、起きた直後は朝のニュース番組はあんまりしてないかな。やってるニュース番組はあるけど、どれも何かショートバージョンと言うか簡易的と言うか。
「……そうですか。」
「あ、と言ってもダラダラ準備するので、実際はそれ程運動している訳ではないんですが。」
最近起きた直後はあんまり体動かないから…着替え含めで大体二十分くらい掛かるとして、運動できるのは三十分か。学生時代に比べたら少し短くなったけど…こっちに越してきて、アップダウンのある土地を走って影の精霊を結構どついたりしてるから、学生時代と比べても運動量は変化ないと思う。何より仕事で動くしね。
「…ううん、何事も継続が力になるんですね。」
「ですねぇ。…あ、そうだ。インドールさん、朝ご飯パンにします?ご飯にします?」
「へっ?あ、ああ、夜風さんの好みで構いませ……いや、いやいや、そんなに甘えられません!!私は今から帰らせて頂きます!!」
そう言って、魔法でも使ってるんじゃないかってくらい素早いながら丁寧な動きで支度を整えたインドールさんは、一度「ありがとうございました。」と頭を下げてから、スゴい勢いで帰っていった。…バス、この時間出てたかなぁ?




