64話 初めてのサシ飲み。
「では…乾杯。」
「えっと…か、乾杯、です。」
ウーロン茶が入ったグラスとグレープフルーツジュースの入ったグラスをカチンと軽くぶつける音が、喧騒の中に微かに響く。
えっと…夜風・ヴェヒター・琴波、十代も終わりに向かう初夏の頃…初めて同僚――しかもインドールさんと、飲みに来ています。
いや、切っ掛け作ったの私だけどね?インドールさんが起きて、ギルドに戻るまでの間の気まずさを紛れさせようと「そ、そうだ!!今日飲みに行きませんか?」と言って、「いやまぁ、行くと言っても居酒屋みたいな所に私が入って良いのかとか、結局私が飲むのはソフトドリンクなんであまり盛り上がらないと思いますが…。」とゴニョゴニョと言っていたら、まさかのインドールさんが乗ってきたのだ。
そして、あれよあれよと私とインドールさんはとある居酒屋のカウンター席に並んで座ってるって言う。…相変わらず自爆と言うか墓穴を掘るのが上手いな、私な。
あ、居酒屋には普通に入れました。居酒屋に入った事があんまり経験ないから、少しドキドキするけど…要するに、ファミレスとか食事処と似たモノって事だよね?だったら、飲酒に気を付ければ大丈夫…だよね?
「えっと、今日はお疲れ様でした。」
乾杯して、グラスに入った飲み物を一口飲んでから、私はインドールさんにぎこちなく話し掛けた。いや、根本的にまだ嫌われてるんじゃねぇかな?と言う疑惑がこうね。まだ完全に拭いきれないから。
…この疑り深い性格が、インドールさんをイライラさせるんだろうなぁ。直せたら直したいけど直せた試しがないから…大変申し訳ない。
「お疲れ様でした。…まぁ、私は殆んど寝ていたので、そんなに疲れていませんが。」
ツッコミ入れづらい事を言ってくださるなよ、インドールさん…コッチだって気まずいんだから。私は、親しくない人にはその辺ズカズカ言えないんだから。
「この居酒屋、インドールさんは良く来るんですか?」
「いえ、初めてです。良さそうな雰囲気だったので。」
「そ、そうなんですか。」
わ、話題が続かない。まぁ、元々私が無理に誘ったみたいな所あるから仕方ないと思う。
こ、これは私が話題を提供しないといけないんだろうか!?でも私、話題が少ないからな…インドールさんが好きそうな話って…インドールさんの事が分からないから、どのカードを切れば良いか分からないよ!!
「…単刀直入に言います。」
何をどう言えば良いんだンギィィッ!!となっていたら、インドールさんがゴクゴクとウーロン茶を半分近く飲み干してから、ポツリと口を開いた。
「は、はい?」
「や、夜風さんは、私がこう…ワァーッと言った時の内容、覚えてますか?」
「あ〜……はい、一応。もし嫌だったら、直ぐ忘れますからぁっ!?」
私の言葉が終わりきらないタイミングで、インドールさんは私の手をガシッ!!と掴んだ。これは…これはどっちの反応だ!?嫌なのか、忘れてほしくないのか…どっち、だ?
「夜風さんに相談するのは、虫の良い話だとは思うんですが…お、おね…お願いしますぅぅ。」
「え…えちょ、えっ?インドールさん泣いてます?」
「泣いて、泣いてませ…んんっ!!」
い、インドールさんどうしたんだ?…このウーロン茶、ちゃんとお茶だよな?ウーロンハイとかじゃないよね?
「姉ちゃん、ただただ場酔いしたみたいやで〜。」
「場酔いて…こんな泣き上戸みたいな事になるんですか?」
場酔いって、人酔いとかそんな感じの酔いだよね?いや、その場のノリや勢いで何か変なテンションになる時あるけど…え、そんな感じなの?
色々思う所はあるが、取り敢えず今はインドールさんを泣き止ます事に集中した。だってメッチャ見られてるもん。




