62話 最優先で確認したい案件。
私に向かって、「自覚が足りない。」「貴女は凄い。」「年下だけど憧れている。」「もっと、私に見た事ない景色を見せてくれ。」「片思いしてるんだけどどうしたら良い。」と、思い思いの事をぶちまけたインドールさんは、胸の内に溜めていた事をぶっちゃけれてスッキリしたのか、糸が切れたみたいにパタリと床に崩れ落ちて眠った。
内容が内容だっただけに、インドールさんが言った言葉の意味を噛み砕いていた私は、咄嗟に反応が遅れた。
「影の精霊…お前、相変わらず便利だね。」
「ドヤァァアッ!!」
当たり前みたいに、影の精霊は…何やら見た事あるクッションみたいな形になって、インドールさんを受け止めた。ただまぁ、影の精霊が何かこう、ダルマと言うか…顔と体が一体化して更にデフォルメをキツくした感じだから…可愛い筈だけど、何故か引いてしまう。
「ダルマやなんて…お嬢さん、中々マニアックなチョイスするな。まぁ、ウチはダルマでもええけどな!!」
「?、ダルマがなんでマニアックになるんですか?」
「あ、知らんヤツか。確かにこの手のジャンルは好みが分かれるし、更に言うならお嬢さんは確実に苦手そうやけど…まぁ、興味があったら調べてみ。」
影の精霊の言葉を聞いて、ああ何かオタク用語なのかなとアタリを付ける。…私が苦手なジャンルとなると、読んでいるこっちまで痛くなってしまう様な感じのヤツかなぁ。でも、何でダルマで痛くなるんだ?
少し考えたが、今は別にどうでも良いかと思考を切り上げる。今はインドールさん。
影の精霊が体が沈みきらない絶妙の弾力で受け止めているインドールさんは、当たり前ながらいつもの仏頂面と言うかしかめっ面ではなく、とても穏やかな顔で眠っている。ただ、顔に浮かんだ疲労の色やぐったりした手足から、かなり疲れていたのが窺える。
「……あの、影の精霊。インドールさんがさっき、片思いしてるんだけどどうしたら良い?みたいな事を言っていたと思うのですが…その、具体的に、誰にインドールさんが片思いしているか分かります?」
ルール違反?だと思うし、もしかして…と思う事自体、自意識過剰も甚だしいと思う。けど、だからこそ、疑惑は先に潰しておいた方が…私の立ち回り、変わってくるし。
「ああ、大丈夫やでお嬢さん。この姉ちゃんはノンケさんや。」
ノンケって事は…お相手は男性って事で、つまり私に恋バナをしてきたって事?
「夜風さぁ…お前はもう少し物事をシンプルに捉えろ。面倒くせぇ。」
「私も面倒だとは思いますが、性分にケチ付けないでください。治せるなら治したいですよ私だって。」
心配事が片付いたので、グ〜ッと背伸びをする。背中の筋肉って、どうしてこう定期的に伸ばしたくなるんだろうなぁ。
「お嬢さんお嬢さんお昼やでお嬢さん。」
「おう、影の精霊。高速反復横飛びしながら言うんじゃない。」
残像が発生するレベルの早さで動くもんだから、もう半透明の影の精霊が横一列に並んでいる様にしか見えない。
「ふふ、いつからウチが一体で反復横飛びしていると錯覚していた?」
「あ、ウチウチ、それ言いたかっただけやね?」
「なぁなぁ、いっその事かごめかごめにするか?あえてゆっくりグルグルするとか。」
わぁ、久し振りに影の精霊だけで会話が進んでいくなぁ。これが俗に言うツッコミ不在の恐怖ってヤツかぁ。
「あ、お嬢さんがツッコミを放棄したで。」
「放棄したくもなります。」
溜め息を吐いた時、そう言えばインドールさんまだ寝てるのかなって思った。
疲れているなら寝かしたままの方が良いと思うけど、ご飯食べた方が疲労取れるかな…いや、インドールさんは精神的疲労で寝てる訳だから…。
「面倒くせぇな、夜風。」
「ですね。」
…考え過ぎて面倒になってきたので、取り敢えず先にお昼食べてしまおうか。




