39話 お茶出しとか、OLみたいだ。
ギルド長がスズメバチ一行を応接室に連れていった事により、エントランスのパニックは収まった。……まぁ、スズメバチの噂やら何やらが錯綜して、ざわざわと騒がしいけど。早く落ち着かないかなぁ。
給湯室でお茶を準備しながら、騒がしさにはぁ…と溜め息を吐いた。と言うのも、ギルド職員の中で唯一あのスズメバチと面識があって、あのスズメバチを見ても怯まなかったって理由で、事務部の部長さんから、ギルド長とスズメバチが居る応接室にお茶を持って行く様に言われたのだ。…あの騒ぎの中で、良く人を見てらっしゃる…流石、曲者多そうなギルドで役職に就いているだけはある。
「へぇ、あの蜂さんは自分で魔虫って言ってるけど、厳密には精霊と近い系統なんだ?」
「そやで~。基本的穏やかな種族やから、あんまり人と出会わないんよ。」
…何故ルナさんが給湯室に居るんだろうかと一瞬考えたけど、ギルド内にある冒険者が使える施設は大体職員も使えるし、制限はあるが逆もまたしかり…給湯室も、使おうと思えば冒険者であるルナさんも使えるのだ。あまり知られていないし、そんなに給湯室を利用する事もないから、来る人は少ない。冒険者なら、わざわざギルドでカップ麺食べたりお茶淹れて飲んだりするより、購買で買い物するか近くのお店でご飯食べるかすると思う。
最近のコンビニ、お湯やレンジをセルフで使える所や、イートインがある所もあるしなぁ…職員からしたら、この給湯室便利なんだけど。
「そうなんだ…ううん、あの羽や針とか、絶対面白い素材になると思うんだけどなぁ。…そう言えば、どうしてそんな珍しい存在がギルドに?」
「死骸は魔力になって四散するし、生身やと普通に嫌がるから難しいやろな。自分達のテリトリーに強い魔力を持った存在が現れたから、一応顔を出しに来たって感じやて。」
トポポと湯飲みにお茶を注いでいて、その言葉にピクッと反応した。……私のせいかぁ。私が、あの森に入ったからかぁ…。
「元々とある森をゆるーく管理しとる存在で、ちょくちょくギルド長さんが森に向かって話し合いとかしとったんやけど、切っ掛けもあった事やし、たまには自分らで向かおう!!としたら…今に至る訳や。」
「ビジュアルが完璧にスズメバチだもんね…あ、コトハ。早く応接室に行かないとお茶冷めちゃうよ?」
「…うっす。」
「え、どうしたの?」
影の精霊はわざとだろうけど、ルナさんは天然であの反応って言うのが、ルナさんの恐ろしい所だよね。別に私をどうこう言うつもりがないのに、端から聞いていたらそうにしか聞こえない…ルナさんの良い所でもあるけど、損と言えば損な所だな。
「いいえ…ふぅ、では行ってきます。」
「?、うん、行ってらっしゃい!!」
軽く気合いを入れてから、お茶が入った湯飲みを二つ置いたお盆を持って応接室へ向かう。…給湯室から出て数歩あるいた所で「……はっ!?」ってルナさんの声が聞こえたので、多分今日か明日辺りにコンビニスイーツでも奢ってもらえると思う。…ルナさん普段勘が良いから、こんな風に抜けてるの珍しいな。スズメバチパニックの影響?
「頭が回り過ぎるんも考えもんやね〜。」
「そんなモノだと思いますけどね。」
大体ルナさんは、先天性加護とは違った意味で、天に様々な恩恵を与えられてるんです。少しくらい抜けてないと…いや、結構性格面で問題多い人ですけど、それくらいないと、いくら幼馴染みとはいえ近付きがたい。
「お嬢さん、応接室通り過ぎるで?」
「おっと。」
そもそも、人付き合いなんて優越感と劣等感の折り合いをつけないとやってられねぇよな…とか、段々とネガティブな思考に囚われかけた時、ちょうど目的の応接室に到着…と言うには、少し行き過ぎてしまった。まだフォロー出来る範囲だけど。
改めて深呼吸して気合いを入れて、私は応接室のドアをノックした。




