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3話 何故だか理由を考えてしまう。


ギルドの仕事は、主にギルドで仕事をこなし、あっても危険の少ない所にしか行かない事務部門と、何故だか未開の地やら何やらに飛ばされる外回り専門みたいな武闘派部門がある。どちらも研修期間が明けたら正式に配属になるので、私はまだどちらでもない。


…私個人としては、能力は兎も角是非とも事務部門で働きたい。目立ちたくないし。


…そう思うけど、一方で諦めている私も居る。私は一ギルド職員である前にBランク冒険者であり、そして…ギルド内で生ける伝説と化しているSランク(バケモノ)のアルベロ先生と比較的親しくしている。魔力がアホみたいにあるのは、風の噂程度で浸透していないにしても…ギルドの職員の中で私が目立つ目立たないは、もうとうに過ぎた話なのだ。…それを分かっていながらまだ抗うのだから、私はなんて滑稽なんだろう。


内心で自虐していたら、やっとその時が来た。


「夜風・ヴェヒター・琴波と言います。若輩者ではありますが、皆様のご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。」


荒ぶる心拍を悟らせない様に定型文を口にしながら、現実逃避がてら状況を簡単に整理する。


今年新職員として入ったのは、私を含め三人。私以外の二人は、案の定私より年上の男女一人ずつだった。…疑心暗鬼か何なのか分からないが、二人や周囲の人々が私をバカにしている様に感じる。二人は兎も角、先輩職員さん達は私の実年齢しってるからなぁ…何人か顔見知りは居るけど、内心どう思ってるかなんて分からないから…。


そんな不安や恐怖に駆られながらも、それを一切顔に出さないよう努めて仕事をしていたら…気が付けば時計の針はお昼の時間を指していた。…作業は前からちょいちょいお手伝いしていたから大丈夫だったけど…気を抜いたら、何か胃や頭が地味に痛い。鎮痛剤の類い、持ってきてないのに…。


我慢できる痛みだったので、売店でゼリータイプの栄養補助食品を買い、休憩室の隅でゆっくり胃に流していった。一人ご飯になってしまったが、別に私一人ご飯平気な人だから大丈夫だった。


個人的安心したのは、ゼリータイプとは言え昼食が食べれた事だ。今朝が今朝だから、こう言うのでも匂いで一口も食べれないんじゃないかって怖かったのだ。


「お疲れ様、夜風さん。私はジャーダ・ヴェルデ・コスモクロア。貴女と隣の席なの、よろしくね。」


大方食べ終わってお茶ぐらいなら飲める気力が回復した所で、どことなく顔に覚えのある人が話し掛けてきた。…いやまぁコスモクロアさん?の申告通り、私の隣の席らしいから見覚えあるんだろうけど。


「コスモクロアさん…はい、よろしくお願いします。」


「堅いなぁ。まぁ、緩いよりは良いけどさ。にしてもお昼、それだけで足りるの?少食だねぇ。」


そう言うとコスモクロアさんは、少しだけ私と間を詰めて座った。…今その辺敏感だからそう感じるだけかもしれないが、私は何か距離が近いと感じた。不快ではないけど、そんなに親しい訳ではないから何か落ち着かない。


「ちょっと、体調が悪くて。」


「そうなんだ。まぁ、急に生活環境変わるもんねぇ。大変だと思うけど、しっかりね?」


話は終わっただろうに、何故かコスモクロアさんは私の隣から席を立とうとしない。え、何で?まだ何か私に用事あるの?まさか私個人に興味がある訳でもないだろうし…何なんだろう。


「あっ、コスモクロア〜。ちょっとこっち来てー。」


「はぁい。じぁあね、夜風さん。」


私が席を立てば良いのかな?どうなんだろう…と一人で悩んでいたらコスモクロアさんが誰かに呼ばれ、休憩室を後にした。


私の視界からコスモクロアさんが見えなくなると…私は溜まっていた息を静かに深く吐き出した。失礼だけど、申し訳ないけど、今はそっとしておいてほしかったなぁ。


コスモクロアさん、申し訳ないけど今の所少し苦手かも…と思いながら、気分転換がてら自販機で緑茶を買い、一気に半分くらい飲み干した。




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