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1話 広義的な意味では、また一緒。


学園から出た感傷に浸る間もなく、ギルドの入社?入所?…まぁ、何か入学式みたいな感じのヤツをして、次の日は休日だったので、あのアパートみたいな…私の感覚では寮みたいなヤツの内見や入居手伝いをしたりして…大分世話しなく動いていた。


今まではギルドの役員さんが、私に気を使って代理でアレコレしてくれていたらしく…引き継ぎの時メチャクチャ頭を下げた。そのせいで、顔は何となく覚えたけど名前を聞きそびれるミスをやらかして…それに気づいたのは、そのドタバタが落ち着いた後だった。


…代理で来てくれていた人には、時間掛かってもお礼の品を渡そう。お菓子かお茶の詰め合わせとか。あまり相手が気にしなさそうな感じの、ちょうど良さそうなグレードのヤツ。


「ふぅ…意外に部屋、埋まりましたね。」


心配事も粗方片付き、取り敢えずの目標も出来たので、新しいキッチンで淹れたお茶を飲みながら一息吐く。一匙オレンジマーマレードを溶かしたソレの甘さが、ずっと強張っていた気持ちが…ゆっくりと解けていく様だ。


部屋が埋まったと言っても、相部屋が大多数、相部屋の相手は半分くらい付き添いと言うか使用人さんだ。貴族出身で、一人暮らしがぶっつけの人もすくなくないし。後は…少し割高でもセキュリティーや設備優先で来た一般の人かな。一人暮らしの入居者は片手に足りる。


「あ、コトハ〜。僕にはコーヒーを淹れて〜。」


「…ルナさん、いや、招いたのは私ですけど?ですけど、貴女本当…ナチュラルに本当…淹れますけど。」


リビングのソファーに座る人の頭の、みょこんと揺れるアホ毛を確認して、何んか良く分からない疲れを感じた。


「僕、アホ毛って認識なの!?入居した人に対して、と言うかそれ以前に十二年来の友人に対してその反応は…あ、コーヒーありがとう。」


「いえいえ…いや、しんみりした別れをした次の日の朝に『新しく入居したルナ・レッヒェルン・ヘニミスです!!よろしくお願いします!!』って来たら…そりゃ驚きますから。」


「へへっ、サプライズ大成功!!」


本当だよ…私が思わず泣いてしまったあの日の次の日、私は入社式だか入所式だかに参加する為に家を出た時…そこに、大荷物を持ったルナさんが居て、私が状況を飲み込めないのを分かっていながらよろしくお願いしますとか言うんだもん…サプライズにも程がありすぎる。


「今回みたいにたまに招きはしますが、ちゃんと自分の部屋で寝泊まりしてくださいね?」


「モチロン!!防音しっかりしてるから、学生の時はコトハに自重して出来なかったアレやソレやコレを…うふふっ!!」


これは…たまに様子見に行った方が良いヤツかな。何か怖い。


「あんまり過剰なのは止めてくださいよ?」


「そこまではしないよ〜。実家だとつい脱線して、脱線した内容で親に怒られたり…何か知らぬ間に先を越されたりして集中できないからさ。」


怒られるのは怒られるんだな…入居者のプライベートには干渉しないつもりだけど、親からの評価がそれなら一応注意はしておこう。


「ちょ、そこまで警戒しなくても大丈夫だって。…そもそも、そんなにお金、余裕ないし。」


「ああ…研究資金云々以前に、ルナさんには食費と言う大きな壁があるんでしたっけ。」


ルナさんのエンゲル係数はかなり高い。最悪、高学年とは言え小学生に間違えられる見た目身長と幼い顔立ちながら、気が付くと一人で五人前とか食べてる時もあるし。…本人曰く、胸より身長に栄養向かって欲しかったらしいけど…胸ネタは私にも刺さるから黙る。


今まで食費は私が軽く管理していたけど、卒業を期にルナさん自身に任せた。ルナさんも良い年だし…ルナさんも欲をセーブ出来るようになってきているし。私が言うのも何だけど、大丈夫だろう。


「そうなんだよねぇ…まぁ、頑張るけど。コトハは明日初出勤?」


「はい…ふふふ、今から胃が何か、痛くないけど胃酸過多って感じが凄いです。」


前から仕事だけはしてきたけど、それはまだお手伝いみたいな感じが強くて…ギルド職員として、社会人として、私はちゃんとやっていけるだろうか…それを考えるだけで胃から沢山の胃酸が分泌されてる感覚がある。あくまで感覚だけど。


「大丈夫だよ〜、コトハだし。」とルナさんに言われ…いや、何ですかそれ。どう言う意味だ?




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