18話 私一人の時で良かったぁ…。
魔法が自由に使える様になって思う。…私が普段良く使う身体強化を取っても、無意識に色々な魔法を並列展開していたんだなぁ…と。急所のみを守るパッシブバリアとか、突撃時の衝撃軽減とか、傷付いただろう筋繊維や筋肉に溜まった疲労を治すだろう回復魔法とか。
さっきまでがさっきまでだったからか、普段だったら気付かない小さな魔法をハッキリ感じ取る事が出来る。
「お嬢さん、気付いとらんかったんやね〜。まぁ、こないな本気な戦いにならんかったら、あんまり並列展開もせんから当たり前か〜。」
「本気って…まぁ、本気か。今まで遭遇してきた人より、割りとガチに危ない人達みたいですからね。」
影の精霊がこんなに丁寧に私の傷を治療しているって事は…確かとは言い切れないが、その遅緩性の毒とやらは相当質が悪いのだろう。…ただのノリとかそう言う可能性も否定できないけど。
そんな話をしていたら、前方に現れた黒ずくめ数人と遭遇した。
数人の黒ずくめの内、何となく目に入った一人に向かって、身体強化を掛けたかなりのスピードで突っ込み、直前に急停止。急停止時に殺しきれなかった勢いそのまま拳に乗せて腹に一発喰らわせて落とし、落とした黒ずくめの直ぐ近くに居た一人を別の一人に力一杯ぶん投げて同時処理。…何かボウリングみたいに連鎖でもう一人倒れてくれた。ラッキー。
「っ!?っぶねぇな、このっ!!」
ラスト一人は流石に反応してきて、私に向かって拳銃を発砲。パッシブバリアに阻まれたが的確に私の目を狙っていた事に軽く戦慄しつつ、それより謎の怒りが込み上げて飛び回し蹴りを喰らわせて落とした。
「…はぁ、つっかれた。」
影の精霊に黒ずくめ達の捕縛を任せて、私は後続が来ないか警戒して…どうやら、直ぐに援軍が来るとかはないみたいだ。…はぁ、気を張り続けるのしんどいわ…精神的に。
「影の精霊、戦況は?」
「向こうさんも魔法使いだしたから、ちょい劣勢かなぁ。警察署の中にも多少魔法が使える人おるんやけど、数が向こうさんの方が多いから。」
あ〜…確かに冒険者や騎士と違って、警察はあんまり魔法を使う人のイメージはないかも。もしくは、ちゃんと魔法が扱える人は警察にも居るんだけど大抵が本部勤めで、ここみたいな地方支部には居ないとかかな…ま、私が知っちゃ事じゃないか。
「一応言っとくと、ギルドの応援が到着するタイミングで最前線のバリケードがダメになりそうやで。またまぁ、なんとも面白…やなかった、とんでもない先天性加護を持った人が居るもんやな。」
…面白いとかそんな事言い掛けた事は、一先ず置いておくとして。
「その面倒な先天性加護って何ですか?」
「対象を人工構造物に限定にした、歩く時限式爆弾みたいな感じやな。解除方法は一度爆発させるか、本人が先天性加護を解くか、先天性加護が掛かった対象に触れて魔力同調した上で細かな魔力操作で解除するしかなくて、一度仕掛けたらさっきみたいな体外魔法構築無効空間でも使える、現代社会やったら超強い能力やで。」
説明ありがとうと言いたいが……こっっわいなその先天性加護。ルナさんやアルベロ先生なら解除出来そうだけど、私だと絶対力業ゴリ押しじゃないとダメなヤツじゃないか。
「まぁ、対象の魔力抵抗が高いと発動まで時間掛かるんやけどな。」
「それでも、ギルドの応援が来るタイミングで壊れるんですよね。」
…私がそのバリケードを囲う様に結界を被えば、例えバリケードが爆発したとしても被害が少ないのだろうか。
「被害云々以前に、普通にええんやないかな?もっとええんは、ウチでその爆発するバリケードを囲う事やけどな!!むしろそうしてくれへんかお嬢さん!?」
「知らんわ!!」
私にすがらなくても、どうせ影の精霊は勝手に動くでしょうに…何でわざわざ聞くかな。…ああうん、私の反応を楽しんでるんだったな。知ってたよ…。