13話 大抵目の前の事で手一杯。
少しシャンプー類を見たり、そろそろ制汗剤と日焼け止めどうにかしないとなぁと思って、色々見て回ったり…小春、ルナさんとどこお出掛けしてるんだろうと気になったりしながら、どうにか買い物を終わらせた。いやホント、ルナさんとどこ行ってるんだろう小春。
「は〜…何でこう、使わないのにやたらアクセサリー見ちゃうんですかね。女の性ですかそうなんですか。」
「お嬢さん光り物好きやもんなぁ。とくに透明感がある類いはホンマ好きよなぁ。」
前世カラスだったのかな私。…いや、正確には『私』の前世がカラスだったのかな。でもカラスって賢いよな…私にその賢さがあまり反映されてないとなると、魚か?確か擬似餌は大体ピカピカ光るのが多いし…でもなぁ、私泳ぎが特別得意って訳でもないんだよなぁ。
「はぁ…見てるだけで幸せです。買えなくはないんですが、やっぱりアクセサリーは高いですからね。」
後、最近耳のアクセサリーと言えばピアスみたいな流れになって、イヤーアクセサリー売り場のピアス率高くて泣けるわ…ピアスホール開けてる人ばかりじゃないのよ?確かにピアスホール開けてる人多いけどさ…イヤリングの肩身の狭さったらないよな。
「最近ピアスを敢えてイヤリングみたいにするパーツが出てきたりしとるけどな。」
「そのパーツのせいで、余計にピアスが優勢になっていくのですよ…影の精霊に言ってもどうしようもありませんが。」
今朝の影の精霊の言葉のせいで、アクセサリー買う気も起きないわ…どうせ帰りにスリに遭うんでしょそうなんだろ?だったら、お金になるモノを買う意味がない。そもそも、今日は日用品を買いに出ただけだし。
そう自身に言い聞かせながら…私は流れる様に蕎麦屋に寄る。…だってお昼時なんだもの。基本うどん派だけど、人並みぐらい蕎麦だって好きだし。
「うーん…まだ肌寒いから温かい蕎麦?でも何か、久し振りにざる蕎麦食べたい気分だしな…うん。言えば蕎麦湯くれるみたいだし、ざる蕎麦一枚貰おう。」
店員さんにざる蕎麦を頼んで、暫くぼんやりと店内を見回す。…学園外でこの手の蕎麦屋に来た事ほぼないから、何か緊張するな。一人飯自体は平気なんだけど…場違いとか思われてないよね?大丈夫だよね?常連しか知らないマナーとかないよね?……まぁ、仮に固有マナーを守ってなかったら、店員さんかとなりのお客さんが直接注意するか。
レジを受ける人を見たり、黙々と蕎麦を食べている人を見たりしていたら、私が頼んだざる蕎麦が来た。まぁ、蕎麦を打って切って湯がいて冷水で締めて盛りつければ終わるからなぁ…そりゃ早いよな。
久し振りのざる蕎麦の、ツルツルとした舌触りと蕎麦の香りを楽しみ、蕎麦湯で割った深みのある蕎麦つゆの風味が口の中に残る中、私は帰路に着いた。
…はぁ、久し振りのざる蕎麦、堪能したわぁ。ギルドの近くに蕎麦屋あったら、今度お昼に食べに行こうかなぁってくらい蕎麦な気分になったわ。…ざる蕎麦食べてたら、何故か天ぷらも食べたくなったのが不思議だった。まぁ、どうせアッサリ、コッテリのコンビネーションを味わいたかっただけなんだろうが…今日はざる蕎麦ピンで食べたかったからね。うん、満足満足。
「…このまま、何事もなかった様に帰れたら良かったんですけど。」
次に食べたいモノが決まって、少しだけ職場に向かうのが楽しみになった気がした矢先に…ちょうど人気が少なくなってきた道に入って数歩歩いた後に、背後を付ける気配を感じた。うわぁ…。
「お嬢さん…狙って人気のない帰り道を徒歩で帰ってた訳やないの!?」
「完全に蕎麦で頭いっぱいで素でうっかりしたんだようるせーな。」
ただ、良いのか悪いのか、私が途中から気配に気付いたのは、相手には伝わってる感じはしなかった。…本当、良いのか悪いのかさっぱり分からんが。