126話 人の気持ちに文句はないが。
ドヤ顔をする程ではないけど、それでも少し得意気な気分になっていたら、何とか報告書を書き上げれた。武闘部での仕事は毎回そうだけど、今日も今日とて中々大変だったなぁ。
書き上がった報告書を部長の机の上に置いてから、私は帰り支度と…ついでに軽く掃除してから、ギルドを後にした。…どうして床に落ちてる微妙な大きさのゴミって、あんなに気になるのだろう。そして、一度気にしてしまうとアレコレ気にしてしまうんだろう。
まぁ、掃除で一番頑張ったのは影の精霊なんだけどね。
「やぁ、夜風さん。夜風さんも今帰りなの?」
「え、あ…はい。」
ギルドから出た瞬間、背後から急に声を掛けられて内心ビクッとした。いや、誰か居るのは分かっていたんですよ?でも、まさか私に話し掛けてくるとは…だって、敵意とかそう言ったドロドロした感情が感じられなかったから…。
言い訳に頭が埋まってる中、影の精霊経由で小春には今日の帰りが遅くなる事は伝えている、ルナさんには、いざって時は小春のフォローをしてほしいってメールを送っている…って考えが、瞬時に頭を駆け抜けた。
小春にも影の精霊特製スマホを持たせているけど…小春、携帯を携帯しないから…っと、これは現実逃避だ。落ち着け、私。
「夜風さん、コスモクロアから俺の話聞いたんでしょ?良く普通だねぇ。」
「普通…ですかね。これでも警戒強めているのですが。」
現に、いつでもトロバドールさんの動きに対応出来るように気を張っていますし…って、これは傍目から見たら分からないか。気配とか読める人なら分かると思うけど、トロバドールさんの発言から見て、トロバドールさんは気配とか読めるタイプではない…もしくは、読めた上で敢えてこの発言なのかもしれないけど。
「そっか。……そんな所が気に入られてるのかな。」
「はぁ…。」
トロバドールさんの言葉に、気の抜けた言葉しか出ない。私が…誰に気に入られてるって?
そりゃそれなりに外面は良くしているから、仕事で関わる大抵の人の評判は…多分、良いと思うけど…それとトロバドールさんは、あまり関係ないよね?……いや、私がそう思っているだけで、トロバドールさんからしたら凄く大事な場合もあるし……うがぁぁっ!!面倒くせぇぇっ!!トロバドールさんも面倒くさいけど、私の人間関係が物凄く面倒くさいぃぃっ!!
「あっ、聞こえちゃったかな。ごめん、気を悪くさせた?」
「いえ、別に。ちょっと思う所はありますが。」
もうここまで来たら、もうどうでも良くなってきたわぁ。警戒はしているけど、あまりの面倒くささで体から力が抜けてくるよ。
「…はぁ、似てるなぁ。」
「似てる?」
「ううん、こっちの話。じゃあ、今日はこれで退かせてもらうよ。それじゃあ…また今度、ね。」
そう気になる発言を重ねたトロバドールさんは、人当たりの良い雰囲気で立ち去った。…何だろう、『また今度』になった時には、殴り合いになるのだろうか。
「私が誰に似ていて、『また今度』に何があると言うのか…。」
「あ〜、まぁ…元々似た性格やったし、お嬢さんも良く一緒に居るからなぁ。」
私の一人言に影の精霊が反応して…影の精霊さぁ、そのヤレヤレみたいな声を出すなや。
静かに影の精霊に対する怒りを蓄えつつ、影の精霊が言った言葉を噛み砕いていく。…私と似たような性格で、なおかつ私が良く一緒に居る人が、トロバドールさんが本来執着?している人って事なのか?
「え〜…私と似たような人なんて、私の知り合いには居ないと思うのですが。」
そりゃ、ある程度なら皆さんそれなりに似ているけどさ…だからって、あんな風に染々と『似ている』と言われる程似ている人なんて…居なくないか?
条件に揃っている人と言ったら、ルナさんと…ギリでアルベロ先生だけど…ハッ、もしかしてトロバドールさんって…ルナさんの事が!?




