125話 咄嗟に口から出た割りに。
ルナさんのトロバドールさんに対する見解を聞いて、私なりに考えても考えても良く分からなかった。そうなったら、もう気にしない方が楽な気がしてきた。
思えば、学生時代に嫉妬やら単純に相性?の問題で地味な嫌がらせをされてきた身として、トロバドールさんの場合は一人だし…嫌がらせの内容がエグくなったとしたら、影の精霊を使って言い逃れ出来ない証拠を集めて、ギルドの上層部に提出してやる。
「と言う訳で、私に関してはご心配なく。親身にお話を聞いてくださったのに、すみませんでした。」
「や、夜風さんって、大人しい見た目の割りにフッ切り方が凄いよね。」
朝ギルドに着いてから、コスモクロアさんにその事を伝えた。いやぁ、コスモクロアさん…と言うか、ギルドの人には影の精霊の事が伝わっているから、説明が楽でいいわぁ。
「そんなものですよ。しかも今日振られた仕事は事務部じゃなくて武闘部ですから。気にしても仕方がないと言いますか。」
「へっ、そうなんだ。最近は事務部でばかりお仕事だったから、今日もてっきりそうかと…。」
「そう言う事ですから…もしトロバドールさんに何かされたら言ってください。全力でやり返しますから。」
そう言って決め顔…らしきモノを作ると、コスモクロアさんは顔を思いっきり引き攣らせた。…ふむ、やはり私にはこう言う役は向いていないって事か。
「いや…なまじいつも真面目だから、夜風さんが『やる』と言ったら本当にやるって、分かってしまったと言うか。」
「…言っておきますが、やり返すといっても、私個人がやるのは少しお灸を据える程度ですからね?」
具体的には、お茶出しの時にちょっと怖い笑みを浮かべるとか…かな。トロバドールさんの身から出た錆は兎も角、私個人としては別にトロバドールさんに何かされた訳ではないから、俗に言う校舎裏や屋上に呼び出す的な事は無理があるし。……我ながら、ショボいやり返しだなぁ。
コスモクロアさんにその話をした後、直ぐに武闘部の仕事に向かい…いつものように泊まりになる筈の仕事を日帰りで終わらせた。…まぁ、今回は少し手間取ってしまったから、少し帰りが遅くなってしまったけど。くっ、これは残業コースだな…。
残業は、何か非常にやるせない気持ちになるけど…仕事とは言えしっかり体を動かせて、ちょっと気分が良かった。最近はずっとデスクワークとかだったから、体を動かし足りなかったと言うか…少し物足りなかったんだよね。
「にしても…コスモクロアさんは大丈夫でしょうか。」
「大丈夫やろ。あの兄ちゃんも今日は外回りやからな。」
あ、そうだったんだ。…自分の事で手一杯過ぎて、そこまで頭が回らなかった。ギルドにトロバドールさんが居ないなら、問題を起こし様が…ない訳ではないけど、影の精霊がつまんなそうに『大丈夫』と言うのなら、大丈夫なのだろう。
「はぁ…っし、さっさと報告書をまとめていきますか。」
少し安心したので、溜め息で気合いを入れて、私は報告書を書き始めた。
「気合い入れて残業タイム突入した所悪いんやけどな、お嬢さん。ちょっとご報告やで〜。」
「…影の精霊、それって良い報告?それとも悪い報告?」
影の精霊の声に僅かに嫌な予感を感じて、報告書を書いていた手を止めてしまった。…まぁ、気合いを入れたからか、影の精霊が話し掛けた段階で四分の一を書き終えていたんだけど。…学生時代の課題も、これくらい集中力が出ればサックサック終わっただろうに…っと、現実逃避をしている場合じゃないな。
「ううん、どないやろ?そもそも良いも悪いも、聞いた人の主観によるやろ?広義的にには良い話でも、一部には悪い話や、その逆も結果あるで。」
「なぁ、影の精霊。私は正論を聞きたいんじゃない。私は結論を聞きたいんだ。」
「お、上手いなお嬢さん。」
…うん、私も正直上手い事言ったと思った。かなりしょうもないかもしれないけど。




