124話 何がどうして、そうさせる?
コスモクロアさんを送った後、パパッとご飯を作って食べて、小春を撫でつつ麦茶を飲みながらボンヤリしていると…何となくルナさんが帰ってきた気がした。
いやいや、私にはルナさん達みたいな鋭い勘とかそう言うのはないでしょうよ。どうせ私の願望でそう感じるだけでしょ?何やってるんだか…と、思わず手を額に当てて溜め息を吐いた。
「むきゅ?どうかしたの?」
「ん?いや…ちょっと向こうの共有スペース、覗いてくるよ。」
撫でる手が止まった事を不思議に思ったのか、小春に少し心配そうな顔をさせてしまった…申し訳ない。
「そっか。んんっ…私はもう少し、ソファーでゴロゴロしときゅ…の〜。」
私の言葉に納得したのか、小春はソファーの上で一度大きく伸びをした後、そのまま流れる様にソファーに身を任せて微睡み始めた。…何この一連の動作、可愛すぎかよ。
カメラを用意していなかったのを激しく後悔しながら、向こうの共有スペースを確認して、ルナさんが居たらそこからトロバドールさんの話を聞く、居なかったらコッチに戻って風呂入って歯を磨いて寝ようと静かに決めた。何か今日は疲れたし、早めにお布団に入ったら良く寝れる気がする。
決意を決めたは良いが、やはりまだルナさん以外の入居者の皆さんと交流が薄いので、恐る恐る共有スペースへ続くドアを開いて、その中をそっと覗くと…そこには、ソファーに溶けるように身を任せているルナさんの姿があった。
「あ〜、トロバドールさんねぇ…。」
「そんなにヤバイんですか。」
溶けてるルナさんをペチペチと優しく叩きながら、話があるから私のプライベートスペースへ移動してほしいと伝えると、まぁ状況からみたら当たり前かもしれないが、ルナさんは唸りながら渋った。…どんだけ疲れたのだろうか、この人。
仕方ないので、ぐでんぐでんに脱力しているルナさんを抱き上げて移動した。脱力した人を運ぶのって大変だから、あまりやりたくなかったけど…致し方ない。
「ヤバイと言うか、何て言うか…あの人、誰も本気じゃないんだよ。飽きっぽいと言うか。手に入れるまではしつこく絡んでくるのに、興味が尽きたら直ぐ手放して見向きもしない…そんな感じがしたの。」
「だから、誰か一人に過剰に執着したら、とても怖い事になりそうだなぁって。」と言いながら、ルナさんは、私が出した麦茶をゴクゴクと飲み干した。無言で見詰められたので、私は呆れながらお代わりを注いだ。
その麦茶を飲みながら…この事については思う所があるのか、ルナさんはうーんと難しい顔をした。おお、アホ毛も何だか複雑そうな感じになってる。
私はルナさんに、今日ギルドであった事を掻い摘まんで話した。…仕事の内容だったらちょっと抵抗あるけど、人間関係の話だったら話せる辺りに何とも…私の中にある下世話な部分を感じる。
「お、おう…コトハ、また面倒な事に巻き込まれてるねぇ。」
「言わんでください。」
それは今更と言うか、重々承知の上ですから。つか、私だって出来る事なら平々凡々な平和な日々を過ごしたいよ!!
「でもなぁ…何だろう。コトハにそんな黒い『念』みたいなモノは感じないんだよね。どちらかと言うと…牽制かな?」
八つ当たりみたいに、自分用に入れていた麦茶をグイッと煽った時、ルナさんから思いもよらない言葉を聞いた。
「牽制…ですか。」
「僕も今日、トロバドールさんをチラッと見ただけだから何とも言えないんだけど…正直コトハの事、なぁんも興味ない感じだったよ。」
それを聞いて、ホッとした。人によったら複雑な思いになると思うが、私は最初からトロバドールさんに対して警戒しかしていなかったから。…これで、私が過剰におっかなびっくりしなくて良くなった。
それと同時に疑問も生じた。…全く、これっぽっちも興味がない私を牽制するって…トロバドールさんは何がしたかったのだろうか。…考えても、情報が足りなくて良く分からなかった。




