100話 男性にその称号は…。
カルマートさんは何かを思って私を呼び出したのだと思っていたけど、「そうだったら、ちゃんと依頼を出すよ。今日はただ、僕が夜風さんと話がしたかったのと…噂の小春ちゃんに会ってみたかったんだ。白雪に取られたけどね。」と、カラカラと笑われた。わぁ、カルマートさんがこんな風に笑うと…凄く手の平の上で踊らされてる感が。私は基本踊らされる側だけど。
まぁ、それは良いや。にしても…私、そんなに小春の事可愛い可愛い言ってたかなぁ。それとも、周囲が小春の事を噂してるのかな。まぁ、小春の事は別に隠してないし…噂にもなるか。
「小春、白雪さんにまっしぐらでしたけど…とても心配になるのに、とても平和って言うのが笑えてきますね。」
さっきも思ったけど、キツネとウサギって…かなり危険な組合わせだよな。…でもまぁ、小春なら大丈夫でしょう。
そもそも小春は野生動物ではなく精霊だし、いつも日辻さんと一緒だし…今更白雪さんを見て小春が野生に目覚めるとかないよなぁ。…日辻さんは、別の野生…と言うか欲?に目覚めてるまたいだけど。
「その笑える姿、見たいねぇ…多分始と一緒に居ると思うから、そこに行ってみようか。」
「僕からしたら、別の意味で笑える状況になってるだろうねぇ。」と、ニヤニヤと笑うカルマートさんに…頭の中で今から会いに行く柚季さんに、静かに手を合わせた。何となく柚季さんには似通ったモノを感じるんだよなぁ…他人事に思えないと言うか。
「…えっと、柚季さん?」
何と言うか…こう言うお屋敷にありそうな感じの、小さいテーブルと椅子が置かれたダイニングキッチンみたいな感じの所に柚季さんは居たのだが…その柚季さんは、何か悲しい顔をして静かに何かを耐えていた。
「きゅいっ、琴姉〜。」
『おい、コイツ何なんだよ!!お前の契約精霊だろ何とかしろ!!』
柚季さんも気になったが、隣で笑いを堪えるカルマートさんも気になったが…足元に来たモフモフ二人…二匹?に一気に思考が埋め尽くされた。
…あ、白雪さんの言葉に小春がションボリした。
「白雪さん…何か小春がやかしましたか?」
『何もねぇけど…いきなり来られたら、ビックリするだろ!!』
ああ…パニック系ドッキリで良くある、いきなり追い掛けられると反射的に逃げてしまうってヤツか。
『そうそれ。』
「きゅう…ごめんなさい。キレイだったから、仲良くなりたくて…。」
ションボリと耳を垂れてる小春可愛い…でもそうだね、白雪さんは名前の通り新雪みたいにキレイで柔らかい毛並みで、お顔も可愛らしいもんね。人間でも、顔が可愛くて髪の毛がキレイな人はお近づきになりたいし。
『ちょ、テメッ…止めろ!!』
「あ、白雪さん照れてる…珍しい。」
照れた白雪さんを見て、柚季さんは少し持ち直したみたい。…って、アレ?柚季さんがコッチに近付くと、何だか小春が微妙に嫌な顔をするな…。
『…ご主人の家系は難儀なんだ。』
「難儀…とは。」
私が思わず口に出した言葉に、我慢の限界とばかりにカルマートさんが大きな声で笑い出した。
「ぷは、アハハハッ!!は、ハハッ!!」
「……夜風さん。この話しは少し長くなるので、良ければご飯を召し上がっていってください。」
色々言いたい事はあるけど今は取り敢えず仕事を優先させようって感じの、若干遠い目をしながら優しく微笑む姿が…何だか涙が出てきそうになる。
『ご主人の内心をそこまで汲むとは…やはりお前は、考え方がウチのご主人と似てるな。』
自分でも似てるとか思ったけど…でも、姿形が似ているのは兎も角、考え方が似てるのは結構居ると思うなぁ。
『まぁ、ウチのご主人はお前より考え方がシンプルでオカンだけどな。』
…私より考え方がシンプルなのは良いけど、オカンって表現は…どうなんだろう。