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────予兆、関係────

 彩姫は蛉を背に携え、フォメフ山付近にいた。

 木々は不気味なざわめきを醸し出し、鳥たちは不穏な歌声を奏でていた。

 茶色い大地は凹凸があって歩くのに悪い。空は今にも泣き出しそうで、一雨来そうな雰囲気だった。そんな景色を眺めながらポツリと一言彩姫は漏らした。


「ここに来るのも久しぶりね」


 昔訓練をした場所であり、良い思い出もあったかもしれないが、今は悪い思い出で覆われてしまった所。二度と来ることはないと思っていた。

 シロと軍を抜けたとき、ここを振り返ること無く夢中に走った。追っ手は来なかったが、魔物が何度も襲ってきた。それを撃退しながら、もう力が尽き果てようとしているとき、シロは彩姫を力強く支えた。


 ──【私が守る────なんとしてもな。だから、もう少し頑張れ】──


 改めてシロの優しさに触れ、あぁこの人と一緒にいれて良かったと思えた瞬間だった。

 絶対に裏切らない。優しくて力強い人。自分の夢を一緒に叶えてくれる、かけがえの無い人だった。


「ふふ、だったか。そうね過去なんて今はどうでもいいか」


 今はただ望むままに未来を作らなければならない。

 料理人になる夢は叶えることが出来た。共に作った白朱(ハクス)の村でグ・ラチェという店までも持つことが出来るようになった。

 ただ、最近シロとあまり一緒にいれなかったのが悔しかった。自分で言ったことなのに、こうして離れると、ばかばかしいとすら思ってしまった。

 風音のためを思って、精霊の力を使わせないようにしたのに、結局使わせてしまったのだ。それは黄泉から事情を聞いて分かったことだった。


(こんなことじゃ母親なんて名乗れないわね……。娘のことより、夫の方が大切なんて。最低────)


 思考を巡らせた瞬間、何か巨大な気配がそこにある気がした。しかも、懐かしいようなそんな気持ちにさせた。

 気配のほうに視線を向けると先ほどまで何もなかった空間に人間が立っていた。


「……久しぶりだな、隊長」


 その姿は男だった。狼のような面構えで身長百八十近くあり、身体は絞られ筋肉に無駄が無い。得物は持たず徒手空拳。その両手両足には紫電が纏われている。


「ふぅ、拳正(ケンセイ)か……久しぶりね? アンタが出てきたってことは、あの二人は後ろにいるのね?」


 鋭く拳正を睨みながら問いただした。

 加藤拳正、彩姫が軍にいたころ格闘のセンスがずば抜けて高く、体術、霊術の扱いも高位ランクに当てはまっていた。

 共に何度も戦場を駆け抜けた経験もある。その実力は彩姫と同等、あるいは凌いでしまうだろう。手加減などできない相手だった。

 しかも、それは昔の話。今ならさらに手強くなっているはずだ。彩姫のように平穏に暮らしていたのではなく、戦場に立っているのだから。


「さて、どうかな。俺の任務は“純水”の確保だった、それも済ませ今はアジトに戻る最中だが、こんなところに裏切り者の陽炎の彩姫がいるわけだ。これは首を頂いて、クレイモア様に献上しようかと思ってな。そうすれば明日香(アスカ)の治療に力を入れてくれるだろう」


 言いながら拳正は右手を上段、左手を下段で構えた。すると今までと比較にならない霊気が彩姫を圧倒した。


「妹さんを思うのは相変わらずなのね。そういう真っ直ぐなところは嫌いじゃないわ。でもあたしも引く訳にはいかないの、アンタと同じでさ」


 一瞬目を伏せ蛉に手を掛けた。すぐさま弐界と小さく口にし、大剣に変形させた。

 もう加減をするつもりは無かった。だが、人を殺すのをよしとは思えなかった。それでも拳正を倒すなら一瞬で気絶にまで追い込まなければならないだろう。難しいがなんとかしなくてはならない。


(あたしも、あの人に似ちゃったかな……)


「一度隊長とは戦ってみたかった、本気でだ。……行くぞ!」


 お互いの身体から闘気が溢れぶつかりあう。


「ふん、いいわ蹴散らしてあげる!」


 弾ける身体。互いに大地を駆け抜ける。

 ここに戦いは始まった。




         §




 橋を超えた先、コンシラーの森に入ると、そこはいつもの狩りをするような優しい獣が生息する場所とは思えなかった。

 本来魔物などこの地域には存在しないはずなのに、今は数十を越える魔物が一人の青年の周りを囲んでいた。

 中には紫闇にも分かるクマンタも見て取れた。だが雰囲気が圧倒的に違った。

 黒く暗く大きい。筋肉は猛々しく、目はぎらつき、ただ襲い捕食することしか頭にないように見える。他の魔物も同様に大きく血走った目で青年に襲い掛かっていた。

 だが青年は何も持たずにその圧倒的な暴力に対抗していた。蹴りにより一匹ずつ相手にしているが、魔物は群れを呼んでいるのか際限なく現れ続けていた。


「……っく、数が多い、ジュリア……無事でいてくれ」


 青年は敵を見据えながら苦悶の表情を見せ、焦りが見え隠れしている。そこにつけ入れて来るのが魔物の本能だった。

 防御に専念して魔物の生命を刈り取る爪を何とか凌いだ。それで水霊術の防御膜が緩んでしまい、魔物は見逃さず同じ場所へ体当たりをした。

 腹部への強打だが、ダメージとしてはそうたいしたことは無かった。しかし勢いを殺しきれずに後退してしまった。背後には、待ち構えていたかのように、クマンタが涎の滴る大きな口を開けて頭に食らいつこうと鎌首を持ち上げていた。

 そこに、


「──【風月閃】!」


 気合と共に、風音からクマンタに向かい真空の刃が放たれていた。

 一呼吸遅れて、クマンタの首から上が斜めにスライドしながら青年の後ろに転がった。

 戦いに気を取られていた青年は、漸く紫闇たちに気づいた。


「いいよね? シアン君」


 今は彩姫を追うことが優先されるのは当たり前だったが、ピンチの人間を見捨てていくなど出来るわけが無かった。


「ああ、あの人を助けよう」


 お互いに目配せし魔物たちに向かって走り出した。三人は背を向けあうような形で向き合った。


「すみません、力を借ります」


 青年は魔物から目を離すことなく、そう口にした。


「いえ、困ったときはお互い様ですよ。と言っても、俺弱いんですけど」


 走った所為なのか腹部が気になったが、痛みを感じる訳ではないので今は無視できるのがありがたかった。

 そして、魅入られると言われた力を解放しようとした。そうしなければこの窮地を脱することは出来ないと思ったから。

 恐怖はあるが、塗り替える。今ここに風音がいるのだ、この力があったから助けることができたのだ。なら二度目も出来るはずだ。自分に言い聞かせるように心を縛り付けた。

 闇の精霊、アンリをイメージする。

 

 ──宵闇、常夜、夜闇、漆黒、暗黒──


 その全てを司るであろう絶対的な黒を今ここに顕現させる。

 すると、心の中で邪悪な笑みを浮かべている気がしてならなかった。

 手に持っているのはシロと共に戦場を駆けぬけた黒月。闇の力を内包した重力の剣だ。カリヴァーンに頼ることはない。この剣に賭けて相手を蹂躙する。

 周囲に淀んだ気配が近づいてきている。それは黒月に収束していき、刃を暗く蠢き力となる。

 正眼に構えた黒月を振りかぶりイメージと共に叫んだ。


「喰らえ──黒月!」


 刀の名を刻んだ。瞬間、世界は、変質した。

 紫闇の視界に収まった魔物は、大地と共に押し潰され、徐々に圧迫され、空間を支配するようにびちびちと音を奏でながら生きたまま死んでいく。

 大気に満ちる音は魔物の足掻き。動こうとしている愚かな生への執着。だが、それもすぐに終わりを迎える。

 名を解放された黒月は真の力を発揮している。重力で相手を縛り圧死させるというものだ。故に逃れる術などなく、ただ断末魔を残し肉塊になるのみなのだ。

 そして人間も出せるかもしれない形容しがたい雑音が空間を満たし、生き物がそのまま潰れるとこんな音がするのだと、目を背けながら紫闇は経験した。

 残ったのは、圧縮された肉、骨、眼球、内臓。────血だけだった。

 その光景を見ていた風音は一瞬顔をしかめたが、納得がいった。

 これが、自分を助けてくれた力の正体だったのだと。あの時、自分は敵に負けていたのに、敵はいなくなっていた。誰かがあの二人を倒さないかぎりそんなことは無いと思っていた。

 気づいてみれば一番の重傷は紫闇で、運んでくれたナグや黄泉に聞いた限りでは、紫闇が守ってくれたのだと言うことが分かった。

 一度確かに戦ったことはある。自分よりひょっとしたら強いのかとも思った。けれど、あの二人に届く力を有しているのかと言えば、疑問符が浮かんでしまった。だが漸く理解できた。

 手にした黒月の力を存分に振るうことが出来るということは、紫闇には闇の精霊の加護があるということだから。


「ふふ、私も負けられないなぁ──」


 風音は残りの群れに視線を移し、睨みつけながら風の調べを耳にする。刹那を下段に構え風の精霊フウヤに力を借り受ける。瞬時に刀身にカマイタチが纏わり付いた。


「──【空臥(クウガ)


 下段に構えた刀を上段に向け切り上げ、目に見えない真空の牙を目の前に停滞させる。さらに横に薙ぎ、十字架を作り上げた。


点衝(テンショウ)】──!」 


 言葉の完成と共にその十字架の中心を穿つと、大気を屠りながら魔物の群れの中心に風穴を開けた。その行動を一息でやったにもかかわらず目視の三分の一程度は回避に成功していた。それは予測できた範囲だ。追撃も当然用意していた。


「フウヤさん……力を、私に……」


 今一度刹那に真空が纏まり付いた。


「──【天爪龍波斬(テンソウリュウハザン)】──」


 上段下段を神速で幾重も繰り返し龍の五本爪を模したものが現れた。それに横薙ぎを加え標的を喰らうように解き放った。

 ある獣は頭から縦に分断され、首を跳ね飛ばされた。またある獣は五つの肉塊にされた。手足をもがれ、脳を分断され、眼球を両断され、喉を切断され、胸を引き裂かれた。

 魔物の群れは紫闇、風音の両名により六割を無力化した。

 青年は迫り来る狼らしきものポチカミを蹴り飛ばしながら、驚きを隠せなかった。


「すごい……僕も負けられませんね──はぁああ」


 次に迫ってくるのは、猪らしきブタイノ。それに照準を合わせ、右脚を後ろに左足を前にスイッチする。

 集中し一瞬を逃さぬように、大地、大気、植物から僅かずつ水を貰い、右脚に纏わせ、近づくブタイノに向けて旋回脚を放った。


「【水穿(スイセン)】!」


 それは水の槍と例えられるだろうか。半径一センチほどの鋭く尖った一本の線が大気を最速で駆け抜けた。

 速度についていけず標的のブタイノは、鼻から尻を貫通させられた。

 一瞬のことで自らが死んだと言うことを理解できなかったことだろう。理解しようとした頃には既に血を撒き散らすポンプに成り果てているのだから。

 そうして青年は目を閉じ、吹き出る血に意識を向けた。


「────【散華・血刃(サンゲ・ケツジン)】!」


 言葉を成した瞬間、溢れ出る血は赤い剣の刃となり残りの魔物に飛来し、肉を傷つけ、臓器を破壊し連鎖を生む。

 無限に繰り返される事象。

 新たな血が、新たな魔物へ、また新たな血が、また新たな魔物へとループする。

 周囲は鮮血の海に満たされた。




      §




 同時に戦いは始まっていた。

 彩姫の身体が熱で歪みだす。さながら陽炎。

 拳正も同様に紫電を纏い大気を震わせる。さながら雷神。

 リーチの差で先制したのは蛉を手にする彩姫。刀身に炎を纏う蛉を一閃。その威力は触れるものを一瞬で溶解させるほどだ。

 当然当たる訳にはいかない拳正。冷静に対処しカウンターを仕掛けようと空中に跳躍し横薙ぎをやり過ごし、脚の紫電を噴射して相手の技硬直を狙い仰角からの強襲を試みた。

 拳正の手には雷が宿り、触れれば痺れと共に行動不能へ陥り感電死する可能性もある。

 彩姫に向け放った拳だが手ごたえがない。明らかにカウンターを狙ったのは自分のほうにもかかわらず。この情況はなんなのか、相手は既に視界の外。冷や汗が頬を伝った。


「──────!」


 殺気、死の気配が全身を支配した。このまま動かなければ死ぬ、直感は間違いない。体裁など構うものかと、拳正は服が汚れることをいとわず横に回転した。それは、今までの戦闘経験がなしえた動きなのかもしれない。死を感じ取り、紙一重で生存するために出来た自己防衛。

 気づけば大地は黒く焦げ、煙を上げた亀裂があった。そこは数瞬前に自分がいた場所ではないか。直撃していたら跡形も残らない、そう思った。

 煙の向こうの影から舌打ちが聞こえた。さも悔しそうに。


「しつこいわね。折角苦しまないようにしてあげようと思ったのに」


 悪態を吐くがそれはこの情況が長引くことを意味していた。

 しかも攻撃に当たったところで死なないように加減はしていたのだ。おひとよしのシロの影響なのだろう。

 昔の拳正ならば、加減をしていようがこれを越えることは出来なかっただろう。しかし今回、紙一重で回避された。つまりもう互角、いやそれ以上なのかもしれない。

 戦闘を退いていた彩姫には、もはや勝ち目が無いのかもしれなかった。


「はは、俺の自慢の服が汚れてしまったよ。だが、流石隊長と言っておこうか。ここまで実力の差を見せられるとは、御見それしたよ」


 正直彩姫はそんなものは無いと思った。立ち上がった拳正には先ほど以上の霊気が纏われている。紫電は解放を待ちわびるかのようにバチバチと周囲に音を漏らしていた。


「いいわ。今度は、外さない……」


 否、もう外せない。

 長期戦になればなるだけ、体力の落ちた彩姫の方が不利になるのが目に見えて明らかだった。

 炎の猛りがこの世界を満たした。逆巻く炎は上昇気流のごとく舞い上がり近づくことを許さない。

 拳正は即座に間合いを開けた。触れることすら出来ない炎の壁が彩姫の周囲を纏っているのだから。そして間違いなく必殺を撃ってくると感じ取った。

 目を疑うことが起きた。彩姫の姿が二つ、いやそれ以上、視認できる限り九つまで重なって見えた。


「陽炎か、その名捨てた訳ではなかったということか……」


 そう視界に映るものは全て惑わすもの、本体すら曖昧にする。それが彩姫の本当の力。

 歪み、捉えることを許さない。


「ええ────加減はしない。行くわ」


 言葉に拳正は口の端を上げ、にやりと笑った。


「来い!」

「【刹陣煉獄(サツジンレンゴク)】!」


 刹那、重なった影は解き放たれた。全ては必殺。放ったからには必ず相手を殲滅する。

 この技を防がれたことは未だに無い。だが、もし、これを防がれたら────そんな嫌な思考が彩姫を襲った。

 灼熱の分身は全て彩姫と同等の力があり、手に持つ蛉ですら模倣している。唯一違うとすれば肌に触れただけで相手は融解することだろうか。

 拳正は身体が脈打っているのを感じた。高揚感にも似てアドレナリンが身体中を巡っているようなそんな。久しぶりの強敵、楽しい。そう素直に思う。

 殺人狂に近いのかと言えば否であり、ただ楽しい。そうすることで自らを苛む他人の死を振り払えたから。だから戦いを楽しむと決めたのだ。

 拳正に迫り来る分身は八つ、本体を合わせれば九つ。絶望的ではあった。それでも初見ではないのが幸いした。この技には一つ欠点があることを昔から知っていた。

 同時に全方位を囲まれる。ちりちりと熱で身体が焦げている様な気さえする。だが集中を更に研ぎ澄まし、一つの点を穿つが如く、全身に纏った紫電を集中させた。

 心臓の猛りが今となっては邪魔で仕方ない。この死と生の極限が楽しいと言うのに。終わるのがもったいない、そう思う。

 分身は周りから迫っている。しかし本体はご丁寧に真正面から迫っている。狙うはその一点のみ。


「紫電一閃────【雷牙(ライガ)】!」


 右手を彩姫の本体であろう者に向け放った。


「うそ。……きゃぁあああ!」


 その悲鳴で十分だった。手ごたえは間違いない。気づくと回りの分身は姿を消していた。理由は簡単だ。術者の意識が途切れれば、術はその瞬間構成を保っていることが出来ず、瓦解するのが必定だからだ。


「ま、だ……よ」


 言葉を発したのは彩姫だった。背中を大樹に預けている。

 手ごたえに間違いはなかったが、何故生きているのか疑問だった。


「こんなことで、やられない……」


 破られると予感したのは間違いではなかった。この男ならそれすら可能とするだろうと、内心の恐怖に似た予知は確かに当たった。そのお陰で、一瞬炎の障壁を出すことに成功した。負ける訳にはいかない、こんなところで止まる訳にはいかない。

 だが、直撃に変わりはない、雷撃の分を相殺したにすぎないのだ。立っているのがやっとだった。


「まだ、あたしは倒れない」


 瞳には確かに力が宿っていた。本当の窮地に立てば人間は本能で相手を蹂躙するだろう。手負いの獅子ほど厄介なものは無いとはよく言ったものだと、拳正は内心思う。未だ油断は出来ないだろうと。


「ん? ────はは……。ははは……」


 何処か身体が肌寒いと思い、視線を己の服に目を向けるとそこには消し炭になりかけた自慢の服があった。いや殆ど無いに等しかった。


「はは、ははははははは!」


 心からの嗤いなど何時以来だろうか、憎い。己の妹の次に大切な服を消し炭にされた。殺してやる。首を謙譲するなどもう考えなかった。頭を吹き飛ばしてやる。

 瞬間、勝敗は決していた。

 スカラマと称された黒鳥が、大地の震撼を感じ取り鳴き声を響かせながら飛び立った。

 拳正の暗く淀んだ殺意が世界を包んだ。例えるならその色は油を沸騰して焦げたものを塗りたくったような色だった。


「────死ねよ。俺の服を消したんだから……」


 拳正の身体に落雷が落ちたように見えた。窓ガラスを割ったような音が耳を劈き、大地が軋みをあげる。一瞬世界が色を失った。


「【轟雷・絶掌(ゴウライ・ゼッショウ)】!」


 右腕を眼前に構え大気に轟く雷が鳴り響いた。そして完成した言霊と共に、彩姫の顔面に向かい掲げた右腕を奔らせる。その速度は目に捉えられる物ではない。瞬きをする暇さえなかっただろう。気づくことは無い。

 ただ一瞬にして間合いをつめられ、目に映ったのは紫電を纏った掌だけだった。


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