避けられた 2回目
「あ〜、ガキは起きたのか。
座って待ってろ。」
先に降りて行った女の子を見てタックさんはそう言って奥の部屋に入っていった。
多分、二人分の料理を取りに行ったんだろうな。
女の子は近くの椅子に座った。
俺も女の子の隣に座った。
・・・隣から視線を感じるな。
首を動かさずに目だけを動かして見た。
うん、女の子が俺を凝視してました。
おいおい、凝視ってどんな時にするんだっけな?
警戒、呆れ、吃驚。
絶対に警戒だろ、ちっくしょう!!
いやさ、起きたら赤の他人が頭を撫でてた。
その赤の他人が隣に座ってきた。
俺でも警戒するわ!
逆に警戒しない方が可笑しいな!
せめて言い訳はせねば!
「おい、俺は・・・。」
「あい、お待ちどー。
今日は川魚の丸焼きだ。」
俺が言い訳を言おうとした時にタックさんが今日の夕飯を持ってきた。
「後で話すからな。
先にご飯を食べようぜ。
いただきます。」
今日の夕飯は俺の顔よりも大きい魚の丸焼きの一品だそうだ。
川にこんなに大きな魚がいるのか。
匂いも香ばしく涎が出てくる。
そしてその魚を食べる道具はフォークか。
あぁ、箸で食べたい。
そんな考えても仕方無い事を考えながら、手を合わせてからフォークで魚を解して一口食べた。
おぉ、美味い!
味付けはさっぱりだが、魚が旨味成分が凝縮されているのだろう。
我儘を言えるなら米が欲しい。
この世界にも米が有ることを祈るばかりだ。
俺が一口食べて魚を味わっているのを見て女の子も魚をフォークで解して食べた。
その後の女の子の手は止まらなかった。
解しては食べ、解しては食べて。
流石はタックさん、女の子をも虜にするとは尊敬すら覚える。
俺達は一言も話さずに魚を食べた。
「ごちそうさまでした。」
「あ〜、どうも。」
あぁ、美味しかった。
皿の上の二匹の魚は骨しか残らなかった。
女の子は満腹になったからなのか舟を漕いでいた。
「ではタックさん、俺達は部屋に戻ります。
おい、立てるか?」
俺が女の子の肩に触れようとしたら弾かれるように女の子が立って階段を駆け上がっていった。
なんてこったい。
まさか、俺は女の子に嫌われているのだろうか?
・・・うん、まだ赤の他人と変わらない。
少しづつ仲良くなっていこう。
俺はトボトボと2階に上がっていった。
部屋に入ると女の子はベッドの上に倒れこんでいた。
さすがに一緒のベッドに寝るのは今は難しそうだ。
というより、犯罪だろう。
「【寝台】レベルMAX。」
俺は仕方なしにベッドを出して寝転んだ。
明日こそは、明日こそは女の子と話すそう。
俺はそう決心した。
「【スキルトレジャー】」
《【ディサイド】を習得しました。》
黒崎 清
【ディサイド】レベル1




