避けられた
俺と女の子はじっと見つめ合った。
なんだ、この緊迫感は。
少し女の子の方に体を動かすとその分女の子が後ろに下がる。
女の子は俺の顔から目を離さない。
凝視だ。
普通の子なら喜ぶかもしれないが、なんだろう、この子は無表情というより鋭い目付きで俺を見ている。
もしかして触ってた時に起きててそれを怒っているのか?
とりあえず笑顔になってみる。
・・・効果無し。
「お、おはよう。」
「・・・。」
だ、だんまりですか?
いや、おはようってなんだよ!?
今、朝じゃねぇし!!
それより聞くことがあるだろ?
「怪我してたから治したぞ。
どこか痛くないか?」
「・・・。」
ちょっと、この子話してくれない。
なんでだ?
考えろ、俺!
なんでこの子は俺の問いに答えないんだ!?
あ。
俺よ、想像してみろ。
起きたら知らない人に触られてて、知らない部屋に居て、触ってた人が男で、しかもニヤニヤ笑ってるように見えたら?
はい、誘拐犯です!
ちっくしょう!!
まずは自己紹介して警戒を解こうぜ!
「俺は怪しく無いぞ?
俺は黒崎 清って名前だ。
君が倒れていたからここまで運んで寝かせてた。
お前の名前はなんだ?」
「・・・。」
なん・・・だと?
これも駄目か。
くそ、【ベビーシッター】仕事しろよ。
子供に好かれやすくなるんだろ!?
あ、スキルで庇いきれないぐらい嫌われたって事か。
ちっくしょう!!
「お〜い、飯が出来たぞ!
降りてこーい!」
タックさんご飯出来たんですね。
でもこっちはそれどころじゃないんです。
グゥー。
え?
「は、腹が減ったなー。
ご飯が用意出来たみたいだから食べに行こうかなー。
二人分頼んでるぞー。」
お、動いた。
今、喉が動いたね、君!
・・・よし、これだ、この作戦で行こう!
「とりあえずご飯を食べようぜ、な?
食べてから色々話そうぜ、な?」
コク。
よっしゃーーーっ!
うなづいたぞ!
初めての反応、いただきました!
タックさんありがとう!
ナイスタックさん!
「よし、行くか!
さぁ、行こうすぐに行こう!
あ、立てるか?
手を貸してやろうか?」
タッタッタ。
女の子は手を伸ばした俺をするりと避けて部屋を出て行った。
・・・結構速く動けるね。
痩せてたから心配してたよ、あははぁー。
「【スキルトレジャー】」
《【グリーフ】を習得しました。》
黒崎 清
【グリーフ】




