無計画が祟って
遠い!!
街が遠いぞ!!
近づいてるのか、これ?
草原広過ぎなんだよ、このヤロー!!
そういや本当に魔物かよ?
もしかしたら冒険者とか商人とかじゃね。
ハッキリとは見てないからな。勘違いという事も無きにしも非ず。
俺、ビビリ過ぎたかな?
やっべーな。
それは恥ずかし過ぎる。
チラ。
「犬っぽいのがいたー!!」
やばい、緑色の犬(仮)が追いかけてる。
死ぬ。
喰われる。
涎を垂らしながら走って追って来てるよ!!
流石は魔物。
緑色の犬とか地球では聞いたことが無いな。保護色かよ。
よく気づいたな俺は。
なんで気付いたんだ?
でも犬にしては鼻が長いような。
大きさは中型犬ぐらいだが狼か?
でもそんな事はどうでもいい!!
走れ、走れ、走れ!!
でもなんて魔物かな?
グリーンドッグ、グリーンウルフ?
チラ。
「なんか増えてるーー!!」
なんで増えてんだよ!!
さっきまで一匹だったのに三匹も増えてんだよ!!
あれか、保護色で隠れて待ち伏せでもしてたのかよ!
しかも一匹だけ色違いで大型の奴がいる!!
草原で目立つ赤色だろ、気付けよ、俺!
気付いたとしてもやる事は変わらないけど。
それにしてもなんだ?
レアか?
赤い犬はレアなのか?
「ガゥガゥガァ!」
唸り声聞こえ始めたよ!!
チラ。
「近っ!!
速っ!!」
赤い犬はもうすぐ後ろにいるの!?
速過ぎだろ、赤い犬!?
しかも緑犬は五匹に増えてるし!!
どんだけ待ち伏せてたんだよ!
だがしかし、街はもう目の前にある。
槍を持った人達も見えてきた。
衛兵に違いない。
これで助かった!!
「助けて!!
助けてくれ!!」
槍の人達がこっちを見てる。
あそこまで行けば助かる!!
痛!!
「イッデーー!!」
噛まれた、右足を噛まれた!!
ふくらはぎの部分を噛まれてる!
赤い犬が俺に追いつきやがった。。
俺は足を噛まれてバランスを崩しちまった!!
倒れた俺の上に赤い犬が乗ってきやがった!
槍を持った人達が駆け寄って来てるが間に合いそうに無い。
死ぬ。
喰われる。
クソ垂れが!!
一か八かでスキルを使うしかねぇ。
って魔力切れだった!!
「【!!!!!】」
何か叫ぶ声が聞こえた後に赤い犬の頭に槍が刺さった。
槍の人達がスキルを使ったのだろう。
赤い犬は弾けて光になって消えた。
他の緑犬も槍が刺さった後に赤い犬と同じ様に消えていった。マジ怖かった。
でも魔物って死ぬと弾けるのか。
本当にゲームみたいだな。
「た、助かったー。」
「DIJBK?」
一人の髭が長い槍の人は俺に近づいて来ながら何かを言ったようだが、俺には言葉が分からなかった。
そうか、これは所謂、異世界語というものなのか!?
「すいません。言葉が通じません。」
髭の長い槍の人は怪訝な顔をした。
まぁ言葉が通じないからな。
それにしても筋肉が凄いな。
ボディビルダーにも負けないと思えるぐらいムキムキだ。
鎧は何かの鱗で出来ていていかにも硬そうである。
顔も強面で大小の無数の傷痕があるので結構怖いです。
でも俺を助けてくれたのだから良い人だと思う。
「痛!」
足に激痛を感じた。
見てみるとボロボロだった。
血だらけで白い物が見えている。
肉は抉れてグロい。
これはすぐには治りそうもない。
いや、回復スキルがある筈だから希望は捨てないでおこう。
「THOTMTR」
槍の人が腰に付けていた袋から小瓶を出して俺の足に掛けた。
ある程度の血が流れて綺麗になった。
そして抉れていた肉がみるみる治っていったのだ!
見えていた白い物が肉に隠れていった。
足を触ってみると噛まれた後すら分からない程治っていた。
槍の人が掛けた小瓶は、ポーション的な奴だったのか!?
「ありがとうございます。」
さっきよりも怪訝な顔をされた。
やはり言葉が通じないらしい。
一か八かで【スキルトレジャー】を使ってみるか。
異世界語、出ろ!
「【スキルトレジャー】!」
《【フェルタ語】を習得しました。》
やった。
「お、おい、どうした?
急に叫んで?」
槍の人には、習得した、って所は聞こえないのかな。
それなら俺は急に叫んだと見えるな。
でも、どうやら掛けには勝ったようだ。
運がいい。
俺、頭良い。
あの咄嗟の判断でこれからの生活がぐっと楽になるだろう。
なにせ言葉が分かるようになったのだからな、学生だったら勉強せずに英語が分かるようになったのと同じだ。
「助かりました。ありがとうございます。」
何故かもっと怪訝な顔をされた。
何故だ。
黒崎 清
【フェルタ語】レベル1