逃げ切って
とにかく走る。
さっき見た奴はまだ、知らない魔物だった。
未知のものからは逃げるに限る。
四十六計逃げるに如かず。
後ろも振り返らずに前だけをみる。
すぐに門の近くまで来てバゲラさんを見つけた。
「【シャウト】バゲラさん!!!
魔物、魔物が来た!!!
助けて!!!」
そうバゲラさんに叫んだがバゲラさんは槍を構えていない。
何故だ。
もしかして俺はバゲラさんに見捨てられてしまったのか。
なんて事だ。
俺の安全がなくなってしまう。
「お前、何から逃げてるんだ?」
ついにバゲラさんの前まで逃げる事が出来た。
バゲラさんは呆れた様に言っているが後ろの魔物に気付いていないのか。
「あれですよ、あれ、魔物が採取中に出て追いかけられたんですよ。
・・・え、居ない!!!?」
振り返って追いかけて来た魔物を指差そうとしたが俺の後ろには何も居なかった。
何故だ。
もしかしたら逃げ切っていたのか?
「それにしてもお前、SPDでも高くなったのか?
前より速かったぞ。」
「【ダッシュ】と【エスケープ】を使いましたから。」
「お前、【ダッシュ】が使えるようになったのか!?
クラスも無かったのにもうスキルを手に入れてるとは凄いな!!
だがエスケープは聞いた事が無いな。
どんなクラスになったんだ?」
「クラスはまだですよ。」
「は?」
「クラスはまだありませんよ。」
「いやいやいや、クラスが無きゃスキルを覚えれないぞ。
・・・お前、まさかスキルオーブを使ったのか?」
「なんですかそれ?」
「スキルが入ってる玉だ。
魔物が稀に落とすが使えばその中に入っていたスキルが覚えられる。
だが採取に夢中になって魔物から逃げて来るお前が手に入れたとは思えないな。
スキルオーブはとても高価だ。
出稼ぎに来たお前じゃ買えねえし・・・そういえばスキルオーブが盗まれたと聞いたような。
まさか盗んだのか?」
「いえ、盗んでませんよ。」
「そうか。
・・・ふむ、念には念を入れるべきか。
おい、ちょっと来い。
お前のカードを調べるからな。
お前ら、俺はちょっと抜けるぞ!」
俺はバゲラさんに着いて行きながら質問をした。
「調べるって何をですか?」
「犯罪歴だ。
カードを作ったオーブで犯罪歴を調べれる。
というより本来はその為にあるんだがな。」
「そうなんですか。」
カードを作った所に着いた。
「おい、トマック!
オーブを持って来い!」
「あれ、キヨさん、カードを無くしたのですか、バゲラ様?」
「本来の目的の方だ。」
「・・・そうですか。
分かりました。」
トマックさんは俺を見てなんとも言えない表情で奥の方に行った。
「お前はそこに座ってろ。」
何故か空気が重い。
俺、もしかして疑われてるんじゃないか?
にしてもスキルオーブか。
それに【スキルトレジャー】を使えばどうなるのかな?
その中に入っているスキルを習得するのか?
それとも別のスキルを、スキルオーブに関係したスキルを習得するのか?
気になるな。
「【スキルトレジャー】」
《【ダウト】を習得しました。》
「持ってきました。」
「よし、じゃあ、触れ、離すなよ。
発動!」
黒崎 清
【ダウト】レベル1




