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Dreammaker Online(改)  作者: ZION
第一章 Dreammaker初級編
2/4

Mythology

 書き直し2話目。

 参考までに、作品に対するご意見、ご感想があれば気軽にコメントをお願いします。

「ここがDreammakerの中か……」



 初めてプレイするVRゲームの、初めてのログイン。

 そんな初めて尽くしで最初に抱いた感想は、人が多い、というごく普通な物だった。

 まぁDreammakerのプレイ人口は十数万人とも言われている。それをたった6つのサーバーに分けているのだから、どうしても人口密度は高くなるわけで……

 色とりどりの装備をした様々な種族のプレイヤー達が闊歩する町は、南ヨーロッパのリゾート地を思わせるかのような白い壁の建物が建ち並んでいる。

 そんな町にプレイヤーが多いのは、正式サービス開始から4年も経っているが、まだまだこのゲームは廃れてはいないという事を知らせてくれる。

 俺が目標としている職業ゲーマーなプレイヤーも多数いるだろう。


 町の散策もしてみたいところだが、俺は早速自分の状態(ステータス)を確認した。

 初期装備の木刀と、布のシャツにズボン。耐久値は減らないが装備としての能力値は最低値。

 そしてアイテム類は何一つ持っていないのだが、ログインしたばかりの初期装備なんだし、資金に余裕が出来たら追々揃えていこう。


 先ずは初期装備のままでどこまでいけるのか。それを知るために町の外に出てみる。町の外は草原が広がっており、遠くに森らしき木々の姿と、さらに遠くに山が見える。1度到達したフィールドは、次回から『テレポ』で飛べるらしいが、俺は今回が初めてのログインだ。草原で地道に野犬のようなモンスターと戦闘を続けた。ドロップするのは僅かなギルとアイテムのみ。それでも数を重ねればそれなりの物になるだろう。


 Dreammakerの中では時間が現実(リアル)の2倍のスピードで流れているらしい。これは『時間の無いプレイヤーでも、夜だけに現れるモンスターとも戦えるように』との配慮らしいが、ゲームの中に入ってしまえば1時間は1時間と感じる。

 つまり体感では丸1日ログインしたとしても、現実(リアル)ではその半分しか経っていないのだ。これは公式サイトに載っていた情報だから間違いないだろう。

 そして、ある程度の狩りを楽しんだ今、ゲームの中では夕方の4時を回ったところである。もう少しするとこの世界は夜になり、昼間とは違ったモンスターが現れるのだそうだ。

 夜のモンスターは昼間より強力で面倒だ、と攻略サイトに載っていた。初期装備に初期ステータスの俺では太刀打ち出来ない事は簡単に予想出来るので、夜になったらログアウトし、Dreammaker初日の活動を終えようと思う。


 そう思いながら狩りを続け、ドロップしたアイテムボックスに収納していく。アイテムボックスは99種をそれぞれ999個まで収納出来るので、初回の狩りなんかで埋まる心配は無いだろう。ガンガン狩りを続けた。



「……そろそろかな」



 辺りが暗くなり始め、他に狩りをしているプレイヤーの姿も少なくなってきた。草原で狩りをしていたというプレイヤーがいなくなったという事は、俺と同じように夜のモンスターを敬遠したプレイヤー達が町に戻ったんだろう。


 最後の1匹と決めたモンスターを討伐して町に戻る。感想としては、初めてにしてはそれなりに上手く戦えた方だと思う。木刀に慣れるまでが大変だったが、慣れてくればまだまだ戦える事が分かっただけでも収穫ありだ。


 それにしても、五感で遊ぶVRゲームって、本当にリアルな手応えがあるんだな。使った武器は木刀だったが、そのせいか生物の、肉を叩く感触がしっかりと手に残っているし、思っていた以上に現実(リアル)と同じように体が動いた。

 ゲームの世界って、スゲーな。

 ……でも、職業ゲーマーが問題視される一端も分かった気がする。こんな感覚に慣れてしまったら、日常生活でも暴力をふるう事への禁忌感は薄れてしまうだろう。


 ゲームはゲーム。現実(リアル)現実(リアル)。ちゃんと気を付けよう。


 ドロップしたアイテムを売りにNPCショップを訪れ、まだまだ使い物にならないアイテムを売りさばく。

 最初のプレイで6000ギルを稼いだのは良い方なのか?



ポーン

『5000ギルを獲得しました。ボーナスガチャが1回ひけます』



 ボーナスガチャ?

 あぁ、初心者向けによくあるサービスだな。大したアイテムは手に入らないが、初期装備よりは全然マシってレベルの装備が手に入るっていう、ゲームでは定番中のサービスシステムだ。


 ガチャを回すにはゲーム内の指定の場所へと移動しなければならない。幸いにアイテムを売ったショップから近かったので、ログアウト前に1回だけ回して終えるとしよう。


 ガチャを回せる通称『ガチャ屋』。そこにアイテムボックスに入っていたガチャ券を渡す。



「それでは、1回です」

「うぃっす」



 プレイスタイル的に、刀が手に入れば御の字。

 その程度の期待感でガチャを回す。


 ガラガラと回ったガチャから出て来た玉の色は……



―――


「良いのかなぁ……一気に運を使い果たしてないかな……」



 Dreammakerからログアウトし、現実(リアル)に戻った俺は、公式サイトに載っているボーナスガチャの確率を眺めていた。


 ☆……Normal 60%

 ☆☆……Rare 30%

 ☆☆☆……Legend 7%

 ☆☆☆☆……Mythology 2%

 ☆☆☆☆☆……????? 1%


 神話級、みそろじー。2%。

 そんな超低確率を俺はひいてしまった。

 手にした武器は『天狼(てんろう)』という名の刀剣である。



「いや、確かに武器を期待したけどさ……」



 交流・トレード掲示板を開いてみると、Mythologyクラスの装備は最低でも5億ギルだった。



「換金比率は1000:1。つまり5億ギルは……最低でも50万円以上になるのか」



 売り払いたい気持ちと、自身の装備の充実。どちらに天秤が傾くかだが……



「……今すぐ売りに出す必要性は無い……はず!」



 先ずは自身のキャラクターを強化する事を考えよう。まだまだ時間はあるんだし、そこまで目先の金に走る必要は無いはずだ。



「よし、『天狼(てんろう)』は保留!」



 悩みは解決した。

 元々深く考える(たち)じゃないし、こういう事は直感で選んだ方が正解な気がする……根拠の無い直感だけどね。



「晩飯作って食うか」



 コクーンを買うまで働かせてもらったコンビニエンスストア。そこの店長とも長い付き合いになるので、定期的に廃棄する弁当をいくつかもらえたりするのだ。賞味期限は過ぎても消費期限は過ぎていないから、温めるだけで食えるし、何よりタダだ。こんなにありがたい事は無い。


 お気に入りの生姜焼き弁当をチンして晩飯は終了した。



―――


「長期休暇が学生の1番の特権だよなぁ」



 そして、そんな休暇をゲーム三昧で過ごす俺。

 感覚的にはまだまだ時給も発生しないボランティアだが、いつかは職業ゲーマーを目指して、今はコツコツと積み上げていく時間だな。


 6時に起床した俺は朝飯をフルーツサンドで済ませ、早速Dreammakerへとログインする。



「ん?おぉ~綺麗な朝日だな」



 昨日は見られなかったDreammakerでの朝焼け。

 ゲームの中なんだけど、朝日を浴びるのって何だか力が注がれているような感覚がある。これもVRだからなのかな?

 朝焼けが町を照らし、闇が晴れていくと町はまるで生まれ変わったかのような輝きを感じさせる。これは眼福と言っても良いだろう。今日は気持ちの良いスタートが切れそうだ。



 朝イチにログインをしたと思っていたが、草原には多くのプレイヤーがいた。まだまだDreammakerのプレイ人口は増加しているのだろうか?年間でいくつもの作品が発売されているのに……

 やはり換金システムは魅力的なんだな。


 草原を奥へ奥へ、人気(ひとけ)の少ない場所を探していると、はぐれなのか、1匹だけモンスターがポツンと佇んでいた。

 『天狼(てんろう)』の試し斬りには丁度良いな。


 モンスターは『ウェアウルフ』という、体が硬い外殻で覆われた、初期装備の木刀では絶対に倒せないであろう相手だ。

 だが、『天狼(てんろう)』を振り下ろした瞬間、異様な手応えを感じた。まるで『天狼(てんろう)』の重みだけで斬っているかのように、何の抵抗も感じないのだ。


 これが『Mythology』クラス……


 初心者向けのガチャから排出されるには、かなりゲームバランスを崩しそうな装備だが、その分、防具はまだまだ初期装備。レベルも上げていないし、攻撃を食らえばHPは一気に消し飛ぶだろうな。



「おっ、と」



 『ウェアウルフ』の攻撃をかわし、交錯した瞬間に『天狼(てんろう)』で斬り裂く。

 どうやらここはモンスターの湧くポイントらしく、1匹を倒せばすぐに新しい『ウェアウルフ』が湧いて現れる。肉体的な疲労は感じないが、精神的に疲れるまで、延々と『ウェアウルフ』を狩り続けた。



ポーン

『モンスターを300匹討伐しました。ボーナスガチャが1回ひけます』

ポーン

『モンスターを500匹討伐しました。ボーナスガチャが1回ひけます』

ポーン……



 何かボーナスが貯まりに貯まっているようだが、こんな美味しいポイントは中々離れられないって。

 結局狩りを中断して町に『テレポ』する決め手になったのは、『ウェアウルフ』からドロップするアイテムが999個貯まったからだった。



「さ、て、と……」



 モンスターの討伐数の一定条件クリアにより、合計5回のボーナスガチャが回せるようだ。

 まぁ、初回が初回だっただけに、もうこれ以上を高望みするような事は無い。レアクラスでも十分ですよ。


 結果は防具である『真紅の着流し』とアクセサリーの『トライバルの首飾り』。ちなみに防具は上下一体で、アクセサリーには『物理攻撃力上昇(小)』のスキルがついている。

 そしてアイテムの『HP回復ポーション(大)』、『MP回復ポーション(大)』と10000ギル。


 全部レアクラスだが、『天狼(てんろう)』1個で十分お釣りが来るな。



「さて、もう1度あの場所に……」



 ……ん?ガチャは終わったのに、まだ視界にポップ画面がある?


 何だろうと操作してみると、新たなPS修得の通知だった。

 ショップでのスキル購入以外でも、条件を満たせばスキルを修得する事が可能だとは知っていたが、まさかこんな序盤でスキルを修得出来るとは……ツイてるな。

 ポップ画面で修得したスキルを確認してみると……



「『物理攻撃・見切り(小)』?」



 説明を読むと、自分より格下のモンスターの物理攻撃の軌道が見えるようになった、らしい。スキルを修得するには幾つかの条件があるらしいが、いや、俺、まだレベル1だから!俺より格下のモンスターなんていないって!

 ……まぁ、常時発動のPSが増えるのは良い事だけど。狩りも楽になるからね。



「……よしっ!」



 他に目新しい通知は無いようなので、再び『ウェアウルフ』狩りでギルを稼ぐ事にした。



―――


 現実の1日で、Dreammakerは2日が過ぎる。そんな2日間を『ウェアウルフ』狩りに没頭して過ごした俺は、所持金が32万4000ギルまで貯まった。


 でも、換金するのはまだまだ先だ。今はキャラクターのレベルを上げる事が優先事項である。

 20万ギルを費やして2000ポイント。レベルアップの比率は100:1か。


 まぁそれでレベルは6まで上がった。ステータスの基礎値も上がり、たった1日だったが、『ウェアウルフ』狩りには終止符を打ち、翌日からは次のステージへと進む事にした。


 攻撃力なら『天狼(てんろう)』があるから、まだまだ余裕だと思うんだ。



 っつー事で、草原の次のエリア、『森林地帯』。

 今朝になって分かったんだが、次のエリアに進みたいなら、そのエリアのマップを買わないといけないようだ。気付かなければ、果てしなく草原を歩くだけだったよ。

 『森林地帯』、5000ギル。現在の所持金的には少しだけ痛い出費だが、また次のエリアで稼げば良いだけの話だ。


 早速『森林地帯』の入り口にテレポすると、モンスターが近寄らない『安全地帯(セーフティーゾーン)』で休憩中のプレイヤーが何人かいたが、俺はまだ駄弁る仲間もいない。



 ……ま、まぁ始めたばかりだから仕方ないよね!

 現実(リアル)の友人知人と、お遊びで始めたんじゃなくて、目標が『職業ゲーマー』なんだから!



 ……何に対してだか分からない、自分への言い訳をして気を取り直すと、早速『森林地帯』を突き進んだ。



ザシュッ!



 『森林地帯』のモンスター、『レッドベア』ですら一撃、いや、オーバーキル。


 ……本当に運を使い果たしていないか不安になる、プレイ2日目が始まった。

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