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ラプンツェルの魔女

作者: あにゃん

ゆったりまったり自分の中では家族の在り方がテーマです。

それは遠い昔の話。


子宝に恵まれなかった夫婦がいた。

毎日祈り続け遂に妻は懐妊した。

順調に臨月を迎えた妻がふと漏らす。


「私、隣の魔女が育てているあの美味しそうな緑のサラダたちを食べてみたいわ」


それを聞いた夫はその日の夜中にさっそく隣の畑に忍び込む。

目当ての食物は魔女の畑の隅に大切に護られるようにひっそりと実っていた。

辺りに人気がない事を確認しそれを持ってきていた空袋にこっそりとしまう。


持ち帰ったそれに妻は歓喜した。




「それはお前たち夫婦に譲ろう。熟れずして捥がれた実は何の役にも立たない」


手を使わずに何故か開かれたドアから美しい魔女が黒く長い髪を靡かせ妖艶に佇んでいた。

夫婦は驚き手にある実を隠すように持った。


「これはゴーテルさん、こんな夜中にいくらお隣同士とはいえ不謹慎ではありませんか」


「ふん、古狸と女狐が良くも揃ったもんだね」



その態度と言葉を不愉快に思いつつも多少なりとも後ろめたさはあるのか反論をする気はないらしい夫婦に彼女らしい意地悪な笑みを作り告げる。


「さて、取引だ。その実はお前たちに譲ろう。しっかり噛み締めて己の罪を悔いるがいい」


「何を言って・・・?」


「一週間後に生まれるであろう腹の子は私が貰う」



夫婦は絶句する。

顔を蒼白にして必死に手の中のラプンツェルを返すから漸く恵まれた子宝なのだと懇願する。

それを一蹴しゴーテルは一週間後迎えに来ると告げどこからともなく吹いた突風と共に姿を消した。





xxxxx一週間後xxxxx



嵐の夜、遂に妻は産気づく。

そこから数時間後、夫婦には美しい黄金の髪を持った可愛らしい女の子が生まれた。






・・・あまり知られてはいないがその日。双子の黒髪の男の子も生まれたという。







どこからともなく聞こえるゴーテルの高笑い。

嵐の強さなのかバタンと扉が1人でに開きゴーテルが現れた。

「約束だよ、子供を貰いに来たよ」





こうしてゴーテルは言葉通り黄金に輝く髪を持つ赤子を攫い森の奥深く魔法をかけ隠したのである。






十数年が経ち美しく育った少女は年頃になるとゴーテルがひっそりと人目を避け隠し真綿で包むように大切に大切に育てたにも関わらず妊娠した。



程なくして男と逢瀬を繰り返す彼女にゴーテルは驚愕した。




「・・・妊娠??」


「お母様」

「どうして?」

「私、気付いてしまいましたの。貴女が本当のお母様でない事。そして外の世界の事。この身に宿した子と、彼と暮らしたい」

「・・・っ!許さないわ」

「お世話になりました」


話も聞かず男と出て行こうとする彼女の名前を叫ぶ。





「ラプンツェル!!!!」






頑なに出ていくのだと長い髪を切り落とし出ていこうとするラプンツェルを止める事が出来ず遂には足を滑らせ高い高い塔の窓から体が投げ出され、ゴーテルの体は地面に着地する間に茨へと変わり塔を囲むように生い茂った。



その茨でラプンツェルの恋人となった隣国の王子は脱出の際、目を失明した。


それは最後の魔女の足掻きの様だったと後の世の人々は口にした。








「あー、お母様?怖いわそのお話」

「・・・おや、白熱してしまって妄想が入ってしまったわ」

「妄想にしては酷いわ、私が妊娠してしまったりお母様が塔から身を出され植物になったり・・・物語に出来そうなお話だわ」

「確かにねぇ、そんな大かがりな事するにも大変だし今ベターな魔女の去り際は砂ね」

「砂ねって、それに私、大切に真綿で包まれる様な育ち方してないわ」

「あら、そーね。何故かしら?確か数年前にお前に惚れたと忍び込んだ王子様も気が付いたらいなかったわ」

「あー、あのバカ王子?よりによってお母様に一目惚・・・いや、一目見て深窓の令嬢だと勘違いして理想と違うからって来なくなったわね」

「あの時は修羅場をウキウキしたのに・・・残念だわ」

「この話くらいお母様にガッツがあったら良いけどお母様って私が妊娠しても笑って見送るわよね」








この話、途中までは本当に真実だ。


彼女はこの時代間違いなくNo.1の力を誇る魔女ゴーテル。

魔女の寿命は長く見た目はこの数十年変わらない美しく妖艶な女性だが間違いなく100年は生きている。


そしてその女性を母と呼ぶ少女は血の繋がった親子ではない。

産まれて十数年間ゴーテルと一緒に寝食を共にしている。


この2人、確かに誘拐犯と被害者だ。


なぜ2人がこんな関係になっているのか、







それは・・・




子育てをした事がなかったゴーテル。

とある魔女の鉄の掟・・・で子供を1人あるドギツイ夫婦から取り上げたは良いが育て方がわからない。


「なぁにこの小さくて可愛いだけで生きていけるとでも言いたげなフォルム」


はぁ、っとため息を吐き両手を頬に当てる。


「・・・本っ当に可愛いじゃない!

こんにちわ赤ちゃん、これからは私が貴女を育てるわ」


満面の笑みのゴーテルは1人の人間の赤ちゃんに完全に虜になってしまった。

それは毎日、甲斐甲斐しくも愛情満タン常にトツプギアの全力疾走で育児をした。



結果、ラプンツェルはでろでろに甘やかされ育っていた。





数年後、彼女が10歳の誕生日を迎えた年に事件は起きた。

塔の近くで花を摘んでいたゴーテルとラプンツェルは森に迷い込んだ男に襲われた。


ゴーテルは咄嗟にラプンツェルを庇い怪我をした。


幸い怪我はたいした事もなく男はぶち切れたゴーテルによって遠くまで飛ばされた。




曰く、

「あぁ、ラプンツェル。貴女が可愛いばかりにあんな野蛮な男に襲われてしまったのね。これからは塔から出る事も考えものね」


「いや、明らかにお母様を見て欲情していたわよ」


この時ラプンツェルは自分にだけ盲目になるお母様に対し逞しくならなくてはと決心を固めたと言う。








やがて美しく育ったラプンツェルは同時に強く逞しい1人の女性へと育った。

デロデロに愛される傍ら日々精進と隠れて鍛錬に勤しみ今では男勝りな性格をした中身と、物語に出てくるお姫様の見た目とのギャップが凄まじい事になってしまっている。


「あら?貴女また髪が伸びて?」


「えぇ。伸ばしているんですもの」


「何のために?」


「うふふ。(性懲りも無くお母様に近付くゴミ共への拷問の一種ですわ)」



彼女は日々確実に囚われの姫を守る騎士度を高めていた。





そんなやり取りがあった数日後、

今日も静かな森の奥の塔が俄かに騒がしくなってきた。


先日ゴーテルは3日ほど家を離れとある貧乏な娘にガラスの靴を与え夜更けに塔へと戻って仮眠をとっていた。


バタンっと扉の開く音と共に慌てた様子でラプンツェルが部屋へ入る。

「お母様!!!」


「・・・あと、15時間ほど眠らせておくれ」


「いくら妖艶な美女と言えど年には勝てませんのねお母様」


「あら、おはようラプンツェル。今日はやけに慌てん坊ね」


「お母様ほどではないわ・・・・・ではなくて!!!塔が襲われていますわ」


なんですって?と鬼もビックリの怒気をはらんだ様相で窓を見やれば数十人はいるであろう城の騎士に取り囲まれていた。



それを見やれば少し嬉嬉としたゴーテルの口からは、ついにやったわ。とか、これは最大の見せ場ね。などと呟いていた。

しまいにはお母様頑張るわっと言わんばかりに自分の口を右手で押さえ左手でラプンツェルの肩をバシバシ叩きだしたのだ。




『お母様が盛大な勘違いをしている』

と心の声が漏れたのは言わずもがなラプンツェルだ。


そうこうしているとゴーテルが言葉を発するより先にあちらから声をかけてきた。



「失礼、こちらに若い娘さんはおりますかな?」



立派な騎士服に身を包みしっかりハッキリと大声を出してくれたのは厳つめの書状を手に持つ騎士様だった。



「それはそちらさんの王子様がご存知でしょう?」



ゴーテルが顔をフードで隠し魔女服で窓に立った。

なんだか見せ場だと騒いでいた前振りなのだろうか?


「は?・・・では、こちらのお嬢様は王子の探しているお嬢様に間違いないですかな?」


下からは盛大に男たちの安堵ある、おぉ!と言う騒めきが聞こえて来た。




そして・・・ラプンツェルは確かに見たと言う。

悪役よろしく!なゴーテルの口元が見事に弧を描き目を薄く細めそれはもぅ期待に満ち満ちていたと。



次の瞬間、満を持したと言わんばかりについ先ほどまで青く澄み渡っていた空が暗雲立ち込める暗闇へと変化した。


「この子が欲しくば私を倒しなさいな」



恐るべしこの世界最強の魔女。







それからは一瞬の出来事。

わざと倒されようと企んでいたゴーテルが人違いであったと気付きお城の使いをあっという間に城へと帰し人違いなんて失礼しちゃうわ!などとプンスカした。








今日もラプンツェルと魔女の平和な日常は続く。

途中で出てきた黒髪の男の子。


この物語より数年後、立派な青年となりゴーテルに一途な愛を囁き続ける事となります。笑

鈍感魔女と一途な青年の恋物語はいずれまたの機会に!!





ここまで読んでくださり本当ちありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラプンツェルの世界観をうまく利用されていますね。 [気になる点] 私の読解力では人物相関図が浮かびにくかったです。 [一言] 元がある作品はいじりにくい印象ですが、世界観を変えずに、表現で…
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