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神隠しの行き着く先は異世界  作者: ヌッシー
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変化

風邪引きました。

 ストナはそれだけ言うと後は興味もないとばかりにさっさと部屋を出て行ってしまった。

しかしそれを聞いた千雨は言葉の意味を直ぐには飲み込めずにいた。

自分が魔物?何を言っているのか?

私自身には何か変わった感じは一切無い。

体の感覚も確かめるがおかしな所は一切無い、いつも通りだ。

混乱している場合じゃない、落ち着かなければ。

様々な考えが頭の中を駆け巡るがどうにか立て直し、ふと思い当たった事を紅丸に問いかける。


 「紅丸、さっきあなたが言い掛けていたのはもしかしてこの事だったの?」


 「・・・そうだ。出来ればこうなる前に伝えたかったんだが・・説明は後だ。ここに来る前も、来た後もわしらが何者かを知るのはわしらだけ。それでいいではないか。」


 紅丸の言葉に先程までの迷いが消えたのか、すっきりした顔で千雨が微笑む。


「ふふふ、それもそうね。あの時死んでたはずの私がそんな事気にするなんて馬鹿馬鹿しいわ。ごめんなさい、もう大丈夫よ。」


 その言葉に頷く紅丸。


 「ぱっど!待たせたの。というか待っててくれるとは律儀な奴よの?おぬしみたいなのは嫌いではないぞ。」


 「お褒めに預かり光栄だ。魔物とはいえ勝手に呼んでこちらの都合で殺すことを思えばこれくらいは・・・な!」


 言い終わると同時にパッドが剣を振りかぶって飛び込んでくる。

更にそれを合図に周りの騎士達も一斉に距離を詰めて迫ってくる。

しかし紅丸は一瞬早く目の前のテーブルを掴み上げパッドの一撃を防ぐと勢いを止める事無く重く頑丈そうなテーブルをぐるりと振り回し迫る騎士をなぎ払う。


 「私まで吹き飛ばす気!」


 と、咄嗟にしゃがんで回避していた千雨から抗議の声が上がるが、


 「この程度でどうにかなるおぬしではあるまい?それより・・・ほれ!」


 そう言うと先程の一撃で騎士の手から落ちた剣を千雨に向かって蹴り上げる。

千雨がそれを掴み取り、一振りして感触を確かめると剣を正眼に構える。


 「さて、武器は手に入ったが多勢に無勢だの。どうする?」


 『知れたこと!殺す気で来る相手ならこちらも殺すまで!』


 その声に紅丸も含めてその場にいたパッドたちも驚きに目を見張る。

急に変わった声は先程までとは比べ物にならない殺気に満ちている。

そしてパッド達が見た物はストナの言った言葉が真実であった事を証明していた。


 「パッド騎士団長!!あれは!!」


 「判っていた事だろ!慌てるんじゃない!来るぞ!!」


 パッドがそう叫ぶと同時に千雨が騎士団に襲い掛かる。

その姿は先程までの美しい女性の面影は無い。

長く伸びた黒髪の間からは二本の白い角が伸び、切れ長の美しかった瞳は黒く染まり眉間にも深い皺が刻まれる。

更に襲い掛かってくる千雨の口から声が漏れるたびに長く伸びた犬歯が見え隠れしている。


 『死ねーーーーーーー!!!』


 頭に直接響くような声を上げて次々と周りにいる騎士に襲い掛かる。


 「くそっ!見た目はオーガだが力も早さも段違いだ!!」


 千雨の猛攻により数名が切り伏せられ尚も残りの騎士を殺すべく睨み付けている。


 「お前らは女に全員でかかれ!私は男の方をやる。」


 パッドが紅丸を攻撃していた騎士達にも女オーガの相手に集中するよう声を掛ける。


 「さて、ベニマル殿失礼ながらここからは私一人でお相手させていただく。」


 「うむ、いい判断だの。お手柔らかに頼むぞ。・・・と言いたい所だが連れの変化が気になるのでな。そろそろお暇させて頂くぞ。」


 「そう言われて逃がすと思うか?」


 そう言ってパッドが猛然と紅丸に襲い掛かる。

紅丸は折り取ったテーブルの足と分厚い天板を軽々と扱いパッドの攻撃を凌ぎながら千雨に声を掛ける。


 「千雨!わしが判るな!?意識はあるのだろ?逃げるぞ!」


 『どうやって逃げるつもりだ?皆殺しで良いではないか。』


 「それでも良いがおぬしの変わりようが気になるでな。念のため人を殺させたくない。」


 『紅丸がそう言うならいいだろう。して?』


 紅丸と千雨は会話をしながら体を入れ替え互いの背を守るように合流する。

すると紅丸が大きく息を吸い直後に雄たけびを上げる。


 「ヴおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー。」


 広い空間とはいえ室内で有り得ないほどの音量の雄たけびにその場の全員が耳を塞ぐ。

全員が怯んだのを確認すると紅丸は千雨から剣を取り上げてから小脇に抱え、天井近くにある窓まで飛び上がる。

これに一早く反応したのは後方で待機していた魔法使い達だ。

二人に向けて複数の火の玉を飛ばす。


 「面白い術だがその程度では足止めにもならんぞ?」


 そういうと持っていた剣で全て打ち落としその場を後にする。


 後に残されたのは悔しがる騎士と、侮辱されたと怒る魔法使い、そして何処かホッとしたようなパッドだった。

 

 

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