裸一貫でした
さらにもう一丁行けました。
唐突に意識を取り戻してまず感じたことは、眩しいだった。
そして光が徐々に収まってくると周りを囲む人の気配に気づく。
紅丸は今だ見えぬ視界の中自らの体が動くことを確認する。
「おお!今度はちゃんと体もあるようじゃ。」
「紅丸・・・周りを囲まれているようだぞ。」
「わかっておる、おぬしも無事なようで何よりじゃ。」
「ラミネルは私たちを呼んだ者がいると言ってたな。」
「そうだの、呼んだからには用があるはずじゃ。ならばいきなり襲われるという事はあるまい。」
「・・・・見えてきた。見慣れない顔立ちだ。見たこともない格好をしている。少なくとも異国である事には間違いないようだね。だが武装もしているようだから油断するなよ、紅ま・・・・。」
そう言って隣にいる紅丸を見た瞬間千子が固まる。
急に言葉が途切れた事に異変を感じ周囲を警戒していた紅丸も千子を見て驚きに目を見張る。
お互いが目を見合わせて固まってしまったがそれも一瞬の事。
周囲を覆っていた光が完全に消えると千子が先に我に帰る。
「紅丸、着物はどうした!?なんて格好をしているんだ!」
「待て待て、おぬしは千子か!?おぬしも何も着とらんではないか!いや、そんな事よりも」
紅丸が何事か言い終える前にに千子がその言葉に反応する。
「へっ?・・あ・・え?・・・わ、わ、わ、わ、あわぁあわわぁ見るなーーーーーーーーー!!!!」
自分が何も身に着けていないことに気づくと胸と恥部を手で隠してへたり込む。
「なんとっ!!千子よ、おぬし女子であったか!?」
さらしでも巻いていたのか戦っていたときにはわからなかったふくらみが腕からはみ出している。
体付きも筋肉質ではあるが女性特有の丸みを帯びている事が見て取れる。
突然の事態に紅丸も驚いてはいたが千子がこのような状態で自分まで警戒を解くわけには行かず千子をかばえる位置に移動する。
だが、紅丸も動揺していたのか自分も素っ裸であった事を失念していた。
「変な物をみせるなーーー!!!!」
そう、紅丸が移動した事によりへたり込んだ千子の眼前では股間からぶら下がった物が揺れていた。
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紅丸達が現れる数瞬前の事。
20名ほどの騎士と5人の術師が魔方陣を囲んでいる。
これだけの人数がいても問題なく剣が振れるくらいの広い空間。
その際奥に石の床に刻まれた魔方陣が薄青く光っている。
そこでは儀式服を着た術師が魔力を絶え間なく送り込んでいた。
その中の一人が、壮年の騎士と目配せを交わす。
「間も無く術が完了する!総員油断するな!」
騎士団長を勤める壮年の騎士が号令を懸けると同時に魔法陣に光の柱が立つ。
そこに見えるは二つの影。
それを見て取った周囲の騎士からざわめきの声が上がる。
今回は二人か?今度は大丈夫だろうな?などといった声が聞こえてくる。
「集中しろ!今回は強さに特化した条件で絞っている。少なくとも悪意ある者が呼び出されないよう万全を期しているが、万が一に備えて気を緩めるな!」
その時魔法陣が一際光り輝いた後徐々に光が消えて中の二人が見えてくる。
一人は小柄で腰まで伸びた黒髪の美しい女性。
髪に隠れて細部は見えないが身長に比して豊満な胸、引き締まった肢体に思わず目を奪われる。
だが光が完全に消え二人の姿が見えた時、もう一人の男に気付いて叫んだ騎士の声で全員に緊張が走る。
「オーガだ!」
見目麗しい女性と低級の魔物であるオーガが召還された事で場が騒然となる。
すぐにでも討ちかかりそうな騎士たちを騎士団長が静める。
「まてあの二人は会話を交わしているようだ。もしかしたら従魔の類かもしれない。少し様子を見よう。」
騎士団がそんなやり取りをしている中、当の二人が突然騒ぎ出した。
女性のほうが服を着てないことに気付いたらしく座り込んでしまった。
オーガの方は女性をなだめながら守ろうとしているようではある。
だが服を着ていないため股間の物が事態の収拾を妨げているようだ。
「とりあえずこちらに対して警戒はしているようだが敵意はないようだ。私が話をするからお前達はいつでも動ける状態で待機していてくれ。」
そう判断した騎士団長は他の者に待機を指示すると一人前へと進み出た。
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「落ち着け!今は恥ずかしがっている場合ではなかろう。」
「うるさい!いいからこっちを向くな!」
「今はそっちを見てないだろう。」
「顔だけじゃなくて体の向きも変えろ!それを隠せといってるんだ!」
そんなやり取りをしていると男が近づいて来る事に気付く。
そちらに体ごと向きを変えると何かを投げてきた。
「何じゃこれは?風呂敷か?」
紅丸が片手で掴み取った物を広げてみるとどうやら布のようだ。
「言葉は解るようだな。私は騎士団長のパッド=エイドだ。それはマントというんだが今のままでは話が進みそうにない。取り合えず彼女にそれを渡して体に巻いてもらえ。お前の分もあるから股間の物をしまうがいい。」
紅丸は不信そうにマントとパッドを交互に見やる。
だが紅丸が行動に移すよりも早く横合いから伸びた手がマントを奪う。
「あんたも早くそれを仕舞いなさい!!」
そう叫びながら奪ったマントを体に巻きつける。
紅丸はため息を一つつくとパッドに声をかける。
「すまんがぱっど殿わしにも一枚くれんかの?」
パッドがもう一枚マントを投げ渡すと紅丸は手早く腰に巻く。
「さて・・、わしは紅丸と申す者だ。ずいぶん物々しい出迎えだが、そなた達は何者だ?」
パッド騎士団長は質問には答えず二人を交互に見やると口を開く。
「確認したいのだがお前は人間ではないな?その女性の従魔か何かか?」
何故人間でないとばれたのかと考えて、はっと気付いて額に手をやると二本の角が伸びていた。
あちらこちらと飛ばされて気付かなかったが隠していた角が出てきてしまったようだ。
それにしても従魔扱いとは見くびられた物だの。
だが、千子を守るといった以上似たような物かと思い直す。
「わしの事ならそう思ってもらってかまわん。それでいつまでこうしているつもりだ?千子を、いや、我が主を晒し者にする気ならばわしも黙ってはおらんぞ。」
「オーガごときが生意気な口を聞くんじゃない!!」
後ろの騎士団から声が飛んでくるが、パッドがそれを制する。
「いや、失礼した。我々に敵対の意思はない。先ほどの質問も含めてお答えするので付いてきて貰えまいか?きちんとした服と席を用意します。」
紅丸が千子に目配せをすると千子も頷く。
「わしらはそれで問題ない。聞きたいことは山ほどあるゆえよろしく頼む。」
「ではこちらへ。お前達道を空けろ!」
パッドが騎士団員に命令すると両脇に避けた先に扉が見える。
パッドの先導を受けると紅丸は千子を隠すようにして後ろを付いていく。
扉を開けて部屋を出ると後ろでは騎士団のざわめく声が聞こえた。
これから忙しくなりますが暇を見て書いていきたいと思います。
誰か見てくれるだろうか?