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「許さぁぁぁんッ!!」と怒鳴った真向のそれは、心臓が今にも止まりそうなほどよく響いてきたので、死ぬかと思う。
なによりそんな気持ちだけで覆せたのかよ! 恐い!!
不安が強烈だ。全速力でも絶対に追いつかれる。
それでもやるしかない。全速力!
気になって仕方なくて思わず振り返ってみたが、本当に急速に距離が縮んでいるかのような、錯覚。
「許さないッ。たとえ櫻でもそれは!!」
「だからなんでえ!?」
「なんか腹立つのっ! なんかっ。なんかっ!!」と真向が今度は、焦茶の長髪を振り乱す。なんでだよ、と僕はもう一度思った。
「ウチは嫌でも油賀追いかけなきゃならんって時にっ、二人だけでいい感じしちゃってさあ!」
こっちは泥棒だろうが。油賀も。
つか真向も、藤谷も警察でしょ?
一番楽しんでるだろ、真向が。
「ふんっ、ロミジュリ的に泥棒警察かあ!? いちゃいちゃいちゃいちゃッ、お花畑でやってろそんなこと!」
「いろいろ間違ってんだけどその追いかけっこ!」
そして藤谷もなんとか言ってくれと、首を振って藤谷を探すと見つけた。まさに藤谷を囲むように走っているので、藤谷が中心にいるように見える。
その藤谷が眉根を寄せ上げてハラハラしている。胸の高さまで上げた両手とも、震えるほど拳を握る中、前のめりな体で視線を送ってくる。
熱い。
テレビ越しで満身創痍のスポーツ選手へ、見えないエールを送っているようにしか見えない。
がんばれっ、がんばれっ! と。
そしてそのエールを送られているのが、僕。
ハ、とまるで我に返った。
力が湧いてきたような気持ちになった。体がふわりと軽くなったような気持ちになった。
こんなところで終わる僕じゃない。




