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先に、藤谷の両目の寸前で二本指を止めてしまった。
「ひぇあっ!」と藤谷がギュッと目を閉めながら眉根を寄せ上げた。その時には両手も、両耳を押さえようとするように上げていたがすぅ、と体が後ろへバランスを崩していく。
「わっ、わっ、わっ、」と両腕を小さく動かしている。まるでペンギンが両手の翼を、小さく羽ばたいているかのようだ。
やっぱりだよと思いながら僕は、藤谷の左手を掴み、引っぱった。
「んっ、……あ……ありがと……」
「無理しない方がいいんだって。……悪いことじゃないんだけど」
むしろそのまま、変わらないでいてほしく思う。さっきも思った。やっぱり思った。そしてやっぱり言えない。恥ずかしすぎる。
「んがあああああ!!」の怒鳴り声にびっくりした。
右から人間サイズの弾丸が迫りくる気配、というかやっぱり、声。
分厚いガラスをハンマーでカチ割ったような大音量!
ビクッと急いで飛び退きながら右を見たのだが、勘違いだった。真向が迫りきているわけではなかったとはいえ、大音量はウソではない。今でも鳴り続けているのだから。真向がまるで車を壁に擦りつけながらガリガリ激走しているように、見えない壁から青白く輝く火花たちを爆散させて激走している。セーラー服専用の厚手コートも、肌の見えない黒タイツも暑苦しいんじゃないかと思うほどの走り方だ。腰まで長く暗い茶髪も風に靡いて激しく乱れているから、寝ぐせ並にぼさぼさになりそうである。
予感がきた。
まさかと。
まさか!? と。
ここのスペースは警察に捕まった者しか入れないように、物理的に仕切られたその内側だ。囚人との面会でよく見るガラス張りのように透明で、しかし絶対不可侵の強度。そのはずだ。
ちょーこえぇ!!
しかも案の定、至近距離で炸裂した花火の音並の大音量で、まるで防爆ガラスが破砕された。一瞬の目眩までして、あまりの痛さに鼓膜が破れたかと思った時には、青白く輝く破片たちが飛び散っているのを背景に、真向がもう迫ってきている。急接近。
眉根を寄せ上げて、泣きそうに目元に影を作りながら。
が、今まで祐樹に向けていた怒顏よりも、殺されそうだ。こんな般若面なんてかっこうべん先生は描かないだろと思わずにはいられない。顔のパーツが歪んでいるといったようなものは全くないが、ある意味作画崩壊した並の、般若面。
「ぎぃやあああああなんでぇえぇえぇえぇ!?」今度こそヤバいので逃げ出した。




