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ハ、となった時、目が覚めた。
目が覚めたかのように視界が元に戻った。
目の前が見える。
見渡してみる。手を少し上げれば雲に届きそうなほどの高さの青空が、ドーム型天井の防爆ガラスが下りたことで壁となっているその向こう側に、広がっているのが先に目に入った。そして防爆ガラスの壁からとつぜん出現したように透明な仕切りが始まる。そして、仕切りのところどころにいくつもある小さな出入口。仕切りの辺りに入り込む雨避けのような二階席。その最上段上にあるオーロラヴィジョンもスピーカーも見えた。分かる。覚えがある。なのにどうして。
どうして白い氷の床がない。
どうしてこの巨大な暗闇に続く広大な穴が足裏にできている。さっきまでスケートリンクがあったはずのところに立っているのは何故だ。
何故落下してゆく感覚が加速して、感じるんだ。おかしいじゃないか。
おかしいじゃないかよ!
自分の内側だけが落下している感覚だ。
止められない!
叫び声を止められない。膝からくずおれる。床のない床に両手がついた。さらなる不安が冷たい海から迫る波のごとく、押し寄せてくる。床のない床の向こう側の暗黒のせいだ。目隠しをされて上空から突き落とされて、落下が加速しているかのようなのだ。両手と両膝で全身を支える感覚の方こそが現実逃避でもして幻触を感じているから、それを感じられているとしか思えなくなってきている。
しかし突然失速して、今度は急激に上へ引っ張られ始めた。




