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半透明の触押板の向こう側で、祐樹の目の前でも同じ形のダイアログが現れたようだ。
「調印しろよ」と僕は言うが、唸り声のように出てきた。「クズがどっちか決めようってんだよ」と唸り声のような声で出てくる。
祐樹が鼻で笑った。
そしてクククククとも笑い出す。
「フフ……」と笑い声もした。
ハッ、と心臓が止まるかと思った。
聞き間違いではない。
近かったのだ。近かった。すごく。真後ろから女の子の声がしたしかし女の子なんていない。無意識に振り返っていたが、目の前に見当たらない。目の前にいないなんておかしい。真向でも藤谷でもないのだ。知らない。聞き覚えのない声だった。大人びた声。
あり得ない。
心臓がバクバクしている。
今度はあり得ない。
「いいこと言うじゃねぇか」とようやく祐樹の声が聞こえた。
「なのにどうしてやがるお調子乗りん坊主!」と立て続けに叫ばれてハ、と僕は祐樹へ顔を戻す。
ちょっと待てと思った。
「お調子者って言えばいいじゃん! ひ、ひねくれるクソガキなの?」
「はっ。なんとでも言えや。嬉しくってたまんねぇよ」
「出たよ、変態」
「出ねぇよ! その変態を出したこともねぇ! X素手のランクでもお前より下なんてふざけてんだ! だから今が嬉しいってことなんだよっ。女王の椅子から蹴り落としてやれるチャンスだぜありがとー!」
しかしまだ僕の心臓はバクバクしている。
誤魔化せない。
誤魔化せるものではないのかもしれない。




