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目つぶしを、……藤谷が仕掛けてくるなんて全く、考えられなかったから。
だから目に刺さるところだった。仰け反り過ぎて後ろに滑った。スケート靴のせいで何度も足が前に滑るからバランスが崩れるのを阻止できずゴン、と尻の骨が鳴って、しかしそれからがよく覚えていない。
ただ、藤谷はきっと、くずおれて両膝をつくほど慌てたんだと思う。
背中が冷たいから僕は上体を起こし始める。すると藤谷も下がってくれたから起こすことができた。
頭がぼんやりしている。
俯いてしまう。その間に膝立ちをする藤谷のダークグレーのニーソックスと太ももが見えた。
びっくりしたなぁ……とため息のように胸中で呟く。
そう。びびっくりした。心臓のところが苦しく痛かったほど。
その一方で尻餅をついた尻が、骨までぶつかったはずなのに痛くないのは幸いだ。
はたと、後頭部も思いっきりぶつけたのを思い出した。その後頭部にも痛みの余韻がない。現実だったら時間が経った今でもズンズンと鈍い痛みがするはずだ。氷の上なのだから。痛みがなくなっても手で押さえたりしたら痛みが走るに決まっている。
しかし今、手で触っても痛くない。
助かったぁとまた、ため息のように胸中で呟いた。
現実だったら遊びどころではなくなっていたかもしれない。ここが四人の魔法使いの空間で良かったと思う。
RPGとかのゲームの中にいるように、設定したおかげもある。無駄な怪我をしないために設定したのだ。だからもう、RPGゲームの中にいるようにもなった。プレイヤーのキャラが壁に向かって走っても、ダメージを受けることなく走り続けていたり、その状態でもカーソルの傾け次第で左右に進めたり、そんなことが実際にできるようになっている。
そういう設定ができたのは、四人で一緒に同じ願いを願えば、実現できるからだ。
そういえば未だに「くたばれええええッ!!」の真向の怒声と「ひゃぃあぁあぁあッ!!」の祐樹の悲鳴が、後ろから右へ、そして右から前へと僕らを囲むように回って聞こえてくるのに気づいた。真向はかっこうべん先生なイラストであるのを忘れてしまうほど相変わらずである。女子だというのに男顔負けの迫力。随分と苛立っているのが分かる。
一方の祐樹も相変わらずだ。大昔の少女漫画のように白目を剥きながら、しかも大口を開け、さらには忙しなく走る両足がグルグル巻きである。なんで秋村アズコ先生なイラストなのかは分からない。めちゃくちゃビビっている祐樹の気持ちは分からなくはないが。
こっちにまで飛び火してくることはないから安心だ。今藤谷と一緒にいるここは、今も真向と祐樹が弧を描いて爆走している競争路に囲まれたスペースで、条件を満たさないと入れないように設定したのだから。




