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唸り声のような風の音が祐樹の方から鳴り始めた。また反射的に、祐樹へ顔を戻すと祐樹が忍者の走り方のように両腕を上げ、がに股の両足でまさにスピードスケートのスタートの構え。
それは一瞬しか見えなかった。白い氷の床をバキバキに砕かんばかりに重低の噴射音が爆発したとともに、祐樹が一瞬で視界から消えたからだ。
ハア? と真向へ振り向く。また自身を間欠泉にして、祐樹が低空飛行のライナーとなっている。そして「よっしゃああああ!!」と喜ぶ真向が、跳んだ。
タイミングを計ったように。
また祐樹を踏み台にして再び後ろへ大きく跳躍。二階席の最前席の背もたれの天辺に乗った。やったあ! と跳ね上がりそうなほど真向が小さくガッツポーズしながら。
バンッ!! ドバンッ!! と祐樹の方は仕切りどころか、さらに奥の出入口の頑丈な扉までぶち破って場外へ消えた。
まるで退場である。
その間でも真向がさらに後ろへ跳躍すると、後部席の背もたれの天辺へ乗っては跳んでを、繰り返してさがってゆく。祐樹が帰ってくる気配もない。
もう、なにがなんだかだ。
それなのになんだか馴染みがある。だから根拠のない自信があった。何が起きても二人とも無事なんじゃないかという安心を感じるから。




